1.月餅に付いて
中秋節になると、中国では月餅贈答の嵐となります。
筆者も、以前は、よく月餅をもらいましたし、会社・部課に贈られた月餅の一部をおすそ分けされることもありました。ただ、月餅を美味しいと思ったことがなく、カロリー過多で、身体にも悪そうなので、「要らない」と言い続けた結果、自分が目にすることは、殆どなくなりました。
とは言え、これは、自分の身の回りだけの話で、世の中では、中秋節の中華圏は、月餅で溢れます。ただ、月餅は季節もの。中秋節が終われば、需要は瞬時に消えます。その意味では、クリスマスケーキに似ていますが、月餅の場合は、ケーキ以上に用途が限定されるのと、派手に贈答が行われるので、それ以上に季節に敏感な商品と言えます。
では、中秋節をすぎた月餅はどこに行くのでしょうか?
それに付いて、2024年9月20日付の北京週報は、以下の様に報道しています。
2.季節をすぎた月餅
商店にあふれる月餅は、中秋節の終わりと共に姿を消す。売れ残った月餅は、製造者が回収する。若しくは、回収されない月餅は、中秋節の午後から、8~9割引きで販売される。記事では、1割の価格で販売すれば当然赤字だが、余剰在庫を処分しないと、更に問題は悪化するという担当者のコメントが紹介されています。
ただ、昨今は、食品ロス防止・環境保全の意識が強まり、以下のような対応が増えているようです。
①生産量の制御
月餅製造者は、生産量を厳格に管理するようになり、中秋節前に一部の月餅が売り切れた場合、たとえ購入希望者がいても、それ以上、月餅を製造しないケースが増えている。
②飼料としての活用
期限切れの月餅は、飼料会社に販売され、飼料に再加工するケースが多く、この様にして、廃棄物の削減と、食品の再利用が進められている。
ただ、一部の悪徳メーカーが、古い月餅の中身を取り出し、翌年に再度販売するという現象も起きており、業界では「経年餡」問題として知られていると報道されています。
3.月餅をめぐる法律と食品ロスの意識
いまでも、盛んに繰り広げられる月餅贈答合戦ですが、2022年には、国家発展改革委員会・市場監督総局等から、「高額月餅の抑制と産業の健全な発展推進に関する公告」が公布されています。ここでは、500元以上の月餅は監督対象となり、取引記録を2年間保管することが義務付けられている他、貴金属やマホガニーなどの包装を使用してはいけない事、フカひれの様な保護動物を使用した食材・ツバメの巣のような高級食材を入れてはいけないことなど、事細かな指示が出されています。
これは、贈賄規制目的も有りますが、多分に道徳的で、政府が、この様な道徳面の法律を出すというのは、いかにも中国らしいです。
因みに、過去10年超、公務員の規律管理が厳格化されているため、現在では、公務員は、企業から月餅や贈答品を受け取ることを避けています。筆者が、中国で仕事を始めたのは1989年ですが、当時は、行政機関の人間から食事の誘い(基本的には、こちらが招待)もありました。この様な状況は、ほぼ完全に姿を消し、今では、たとえ企業側が熱心に誘ったとしても、確実に、受けてはもらえません。
これが、中国の変化と言えるでしょう。
4.なぜ月餅を贈るのか
上述した通り、筆者は月餅が好きではありませんが、中国人は、どう思っているのでしょう。過去に、何人かの中国人に聞いたことがあるのですが、殆どの人間が、「美味しくはない」と答えています。例外的に、大好きで毎回ホールで食べ、翌日には皮膚が荒れると回答する強者もいましたが。
勿論、製造業者も、味の研究をしているため、一般向けに味を調整した、美味しい商品も出てきています。また、ハーゲンダッツやスターバックス等も月餅を出しており、これなら筆者も食べられます。ただ、伝統的な月餅は、くどいほど味が濃いので、中国人も美味しいと思っていない場合が多く、伝統だから、習慣だからというのが、贈答の理由です。それなら、辞めればよいのでは?と思うのは、外国人であるがゆえでしょうか。
食品ロスの典型のような月餅ですが、世界の食品ロスランキングは、中国は1位で、日本は14位。ただ、人口が違うため、一人当たりの年間ロスは、双方、64Kgと同量です。
接待を徹底的に行う中国の食品ロスが1位なのは印象通りですが、日本も反省すべき点がたくさんあります。世界では一般的な、食べ切れない料理の持ち帰りを、徹底的に拒否する店が大部分である事。無謀な食べ放題設定が少なくない事などは、何時も問題だと思っています。
環境保全意識が向上してきている昨今、どの国も、この様な無駄をなくす努力をしていくべきではないでしょうか。
水野コンサルタンシーグループ代表 水野真澄
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とは言え、これは、自分の身の回りだけの話で、世の中では、中秋節の中華圏は、月餅で溢れます。ただ、月餅は季節もの。中秋節が終われば、需要は瞬時に消えます。その意味では、クリスマスケーキに似ていますが、月餅の場合は、ケーキ以上に用途が限定されるのと、派手に贈答が行われるので、それ以上に季節に敏感な商品と言えます。
では、中秋節をすぎた月餅はどこに行くのでしょうか?
それに付いて、2024年9月20日付の北京週報は、以下の様に報道しています。
2.季節をすぎた月餅
商店にあふれる月餅は、中秋節の終わりと共に姿を消す。売れ残った月餅は、製造者が回収する。若しくは、回収されない月餅は、中秋節の午後から、8~9割引きで販売される。記事では、1割の価格で販売すれば当然赤字だが、余剰在庫を処分しないと、更に問題は悪化するという担当者のコメントが紹介されています。
ただ、昨今は、食品ロス防止・環境保全の意識が強まり、以下のような対応が増えているようです。
①生産量の制御
月餅製造者は、生産量を厳格に管理するようになり、中秋節前に一部の月餅が売り切れた場合、たとえ購入希望者がいても、それ以上、月餅を製造しないケースが増えている。
②飼料としての活用
期限切れの月餅は、飼料会社に販売され、飼料に再加工するケースが多く、この様にして、廃棄物の削減と、食品の再利用が進められている。
ただ、一部の悪徳メーカーが、古い月餅の中身を取り出し、翌年に再度販売するという現象も起きており、業界では「経年餡」問題として知られていると報道されています。
3.月餅をめぐる法律と食品ロスの意識
いまでも、盛んに繰り広げられる月餅贈答合戦ですが、2022年には、国家発展改革委員会・市場監督総局等から、「高額月餅の抑制と産業の健全な発展推進に関する公告」が公布されています。ここでは、500元以上の月餅は監督対象となり、取引記録を2年間保管することが義務付けられている他、貴金属やマホガニーなどの包装を使用してはいけない事、フカひれの様な保護動物を使用した食材・ツバメの巣のような高級食材を入れてはいけないことなど、事細かな指示が出されています。
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因みに、過去10年超、公務員の規律管理が厳格化されているため、現在では、公務員は、企業から月餅や贈答品を受け取ることを避けています。筆者が、中国で仕事を始めたのは1989年ですが、当時は、行政機関の人間から食事の誘い(基本的には、こちらが招待)もありました。この様な状況は、ほぼ完全に姿を消し、今では、たとえ企業側が熱心に誘ったとしても、確実に、受けてはもらえません。
これが、中国の変化と言えるでしょう。
4.なぜ月餅を贈るのか
上述した通り、筆者は月餅が好きではありませんが、中国人は、どう思っているのでしょう。過去に、何人かの中国人に聞いたことがあるのですが、殆どの人間が、「美味しくはない」と答えています。例外的に、大好きで毎回ホールで食べ、翌日には皮膚が荒れると回答する強者もいましたが。
勿論、製造業者も、味の研究をしているため、一般向けに味を調整した、美味しい商品も出てきています。また、ハーゲンダッツやスターバックス等も月餅を出しており、これなら筆者も食べられます。ただ、伝統的な月餅は、くどいほど味が濃いので、中国人も美味しいと思っていない場合が多く、伝統だから、習慣だからというのが、贈答の理由です。それなら、辞めればよいのでは?と思うのは、外国人であるがゆえでしょうか。
食品ロスの典型のような月餅ですが、世界の食品ロスランキングは、中国は1位で、日本は14位。ただ、人口が違うため、一人当たりの年間ロスは、双方、64Kgと同量です。
接待を徹底的に行う中国の食品ロスが1位なのは印象通りですが、日本も反省すべき点がたくさんあります。世界では一般的な、食べ切れない料理の持ち帰りを、徹底的に拒否する店が大部分である事。無謀な食べ放題設定が少なくない事などは、何時も問題だと思っています。
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