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食品大手、コメ対日輸出拡大東京の地銀が協力、最大5倍に

ベトナムの食品流通大手タンロングループは、日本の地方銀行のきらぼし銀行(東京都港区)と協力して、ベトナム産ジャポニカ米の対日輸出を拡大する。2024年は日本政府のミニマムアクセス(最低輸入量)制度を活用して3,000トンを輸出したが、25年度は3~5倍に増やす。タンロンは南部メコンデルタ地域の契約農家に低農薬など日本の安全基準をクリアできる稲作法の指導に乗り出しており、日本産米よりも安くかつ「日本で味や品質が認められた米」としてブランドを確立し、欧米を念頭に中・高所得国への供給拡大につなげる方針だ。
■日本産米の高騰で割安感

タンロングループは日本初の越産ブランドでのジャポニカ米販売を開始した(きらぼし銀行提供)

タンロンは今年、日本政府が実施するミニマムアクセス(現在の輸入枠は年約77万トン)の入札に参加し、ベトナム南部産のジャポニカ米3,000トンを日本向けに輸出。東京や大阪など都市部のアジア人向け食品店などで初めて小売り販売を始めた。販売価格は5キログラムで2,399円などで、価格高騰が著しい日本産米の8割以下の水準だ。
外国産のジャポニカ米はノーブランドのブレンド米や業務用での販売が一般的だが、同社のコメは初めてベトナム産を前面に打ち出し販売した。
対日輸出の橋渡しを担ったのがきらぼし銀行だ。ベトナム産ジャポニカ米の日本からの評価を高めたいタンロン、在日ベトナム人の「母国産のコメを食べたい」という声に応えようとする日本の卸売会社らと協力し輸入を実現した。
予約販売を始めたのは今年2月で、10月にすべて完売した。輸入手続きを進める中で、日本のコメ不足が顕在化し、販売を後押しした。きらぼし銀の担当者は「ベトナム産ジャポニカ米の小売り販売が始まったという情報を聞いた学校給食センターからも問い合わせがあり、日本産からの切り替えを検討してくれているようだ」と話す。試食では味も問題ないという反応だったという。
タンロンときらぼし銀は、22年にベトナム産長粒米を初めて日本向けに輸出した。ジャポニカ米と比べても高価な品種を選んだことなどが障害となり、輸出した100トンは在庫がなくなるまでに半年以上かかった。今回は、日本の小売市場では安価なことから販売に自信はあったが、想定を超える売れ行きだという。現在は業務用のみ出荷を続けている。
■「日本で認められたコメ」認知目指す
日本政府は現在も米の輸入に1キログラム当たり341円の従量関税をかけて国内農家を保護している。タンロンによる対日輸出は、日本政府が世界貿易機関(WTO)のルールに基づき例外的に定めた「ミニマムアクセス枠」と呼ばれる国家貿易制度を活用した輸出だ。この枠組みのうち民間事業者が品種や用途を自由に決めて輸入できる量は年10万トンと上限が設定されている。
従量関税の代わりに1キロ当たり最大292円の納付金が輸入価格に上乗せされるが、日本ではコメの価格が昨年の最大2倍程度に高騰しており、生産コストが低いベトナム産のコメは日本産のコメより安い価格で販売が可能になる。
タンロンは25年度以降、入札で決まる輸出枠を増やし、輸出量を最大1万5,000トンに増やす計画だ。
日本の23年のコメ輸入量は、政府が購入する飼料用などを含めた全体で70万8,853トンだった。このうちベトナムからの輸入量は235トンで、首位のタイ(36万トン)や2位の米国(21万トン)に比べわずかにとどまっており、大幅に拡大する余地があるときらぼし銀らはみている。
きらぼし銀の担当者は、「ベトナム産ジャポニカ米の輸出の目的は、日本でシェアを拡大するより、まずは国際的な評価を向上させることだ」とタンロングループの方針を代弁する。タンロンは、22年に南部アンザン省にアジア最大規模の精米工場を完成させ、品質と安全性の高さを掲げジャポニカ米の輸出に力を入れている。「日本で品質を認められた米」として越産ジャポニカ米の付加価値を高め、これまで越産米の輸出が少なかった欧米など新たな市場への展開を強化するのがタンロンの最大の狙いだと説明した。

タンロングループが保有する南部アンザン省の精米工場(きらぼし銀行提供)

■国際ブランド化、政府も後押し
ベトナム農業・地方開発省の統計によると、ベトナムの23年のコメ輸出量は約830万トンで、タイやインド、インドネシアと並ぶ輸出大国だ。フィリピン、シンガポールなど東南アジア周辺国のほか、最近はより高い価格で販売できる欧州向けの輸出も拡大している。今年1~10月のコメ輸出量は前年同期比10.2%増の780万トン、輸出額は過去の年間最高記録を上回る49億米ドル(約7,500億円)だった。
農業を主要輸出産業とみなすベトナム政府は、米産業の付加価値向上に力を入れている。メコンデルタ地域では環境負荷の低い農法による高品質米の栽培面積を100万ヘクタールにすることを30年までの目標に掲げている。10月にはベトナム国家銀行(中央銀行)が農家向けの優遇金利プログラムの指針を金融機関に通達した。
現在の進捗(しんちょく)状況は20万ヘクタールほどにとどまっているが、政府もタンロンときらぼし銀行による取り組みなどに期待を寄せている。22年と24年は、タンロンが日本に輸出した米ブランド「AAn」に国家ブランド賞を授与した。

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■日本産米の高騰で割安感
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タンロンは今年、日本政府が実施するミニマムアクセス(現在の輸入枠は年約77万トン)の入札に参加し、ベトナム南部産のジャポニカ米3,000トンを日本向けに輸出。東京や大阪など都市部のアジア人向け食品店などで初めて小売り販売を始めた。販売価格は5キログラムで2,399円などで、価格高騰が著しい日本産米の8割以下の水準だ。
外国産のジャポニカ米はノーブランドのブレンド米や業務用での販売が一般的だが、同社のコメは初めてベトナム産を前面に打ち出し販売した。
対日輸出の橋渡しを担ったのがきらぼし銀行だ。ベトナム産ジャポニカ米の日本からの評価を高めたいタンロン、在日ベトナム人の「母国産のコメを食べたい」という声に応えようとする日本の卸売会社らと協力し輸入を実現した。
予約販売を始めたのは今年2月で、10月にすべて完売した。輸入手続きを進める中で、日本のコメ不足が顕在化し、販売を後押しした。きらぼし銀の担当者は「ベトナム産ジャポニカ米の小売り販売が始まったという情報を聞いた学校給食センターからも問い合わせがあり、日本産からの切り替えを検討してくれているようだ」と話す。試食では味も問題ないという反応だったという。
タンロンときらぼし銀は、22年にベトナム産長粒米を初めて日本向けに輸出した。ジャポニカ米と比べても高価な品種を選んだことなどが障害となり、輸出した100トンは在庫がなくなるまでに半年以上かかった。今回は、日本の小売市場では安価なことから販売に自信はあったが、想定を超える売れ行きだという。現在は業務用のみ出荷を続けている。
■「日本で認められたコメ」認知目指す
日本政府は現在も米の輸入に1キログラム当たり341円の従量関税をかけて国内農家を保護している。タンロンによる対日輸出は、日本政府が世界貿易機関(WTO)のルールに基づき例外的に定めた「ミニマムアクセス枠」と呼ばれる国家貿易制度を活用した輸出だ。この枠組みのうち民間事業者が品種や用途を自由に決めて輸入できる量は年10万トンと上限が設定されている。
従量関税の代わりに1キロ当たり最大292円の納付金が輸入価格に上乗せされるが、日本ではコメの価格が昨年の最大2倍程度に高騰しており、生産コストが低いベトナム産のコメは日本産のコメより安い価格で販売が可能になる。
タンロンは25年度以降、入札で決まる輸出枠を増やし、輸出量を最大1万5,000トンに増やす計画だ。
日本の23年のコメ輸入量は、政府が購入する飼料用などを含めた全体で70万8,853トンだった。このうちベトナムからの輸入量は235トンで、首位のタイ(36万トン)や2位の米国(21万トン)に比べわずかにとどまっており、大幅に拡大する余地があるときらぼし銀らはみている。
きらぼし銀の担当者は、「ベトナム産ジャポニカ米の輸出の目的は、日本でシェアを拡大するより、まずは国際的な評価を向上させることだ」とタンロングループの方針を代弁する。タンロンは、22年に南部アンザン省にアジア最大規模の精米工場を完成させ、品質と安全性の高さを掲げジャポニカ米の輸出に力を入れている。「日本で品質を認められた米」として越産ジャポニカ米の付加価値を高め、これまで越産米の輸出が少なかった欧米など新たな市場への展開を強化するのがタンロンの最大の狙いだと説明した。
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■国際ブランド化、政府も後押し
ベトナム農業・地方開発省の統計によると、ベトナムの23年のコメ輸出量は約830万トンで、タイやインド、インドネシアと並ぶ輸出大国だ。フィリピン、シンガポールなど東南アジア周辺国のほか、最近はより高い価格で販売できる欧州向けの輸出も拡大している。今年1~10月のコメ輸出量は前年同期比10.2%増の780万トン、輸出額は過去の年間最高記録を上回る49億米ドル(約7,500億円)だった。
農業を主要輸出産業とみなすベトナム政府は、米産業の付加価値向上に力を入れている。メコンデルタ地域では環境負荷の低い農法による高品質米の栽培面積を100万ヘクタールにすることを30年までの目標に掲げている。10月にはベトナム国家銀行(中央銀行)が農家向けの優遇金利プログラムの指針を金融機関に通達した。
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