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台湾EMS、米国生産加速かトランプ氏の関税政策が後押し

米国のトランプ次期大統領の就任を控え、台湾EMS(電子機器の受託製造サービス)などのサプライチェーン(供給網)への影響に注目が集まっている。トランプ氏が米国第一主義を掲げ、関税の引き上げを主張していることが背景にある。EMSなどの間では直近でサーバーを中心に米国生産を強化する動きが見られていたが、専門家は今後こうした動きが加速すると予測している。【山田愛実】
「(米国の)新たな政府の発足後の変化を観察し、投資の方向性や歩みを必要に応じて調整する」——。EMS世界最大手、鴻海精密工業の劉揚偉董事長は11月中旬の業績説明会で、トランプ氏の米大統領選勝利を受けた対応を問われ、こう答えた。
中央通信社によると、トランプ氏がメキシコからの全ての輸入品に25%の関税を課す方針を示した後の11月下旬には、劉氏は鴻海が米テキサス州で工場を拡張し、人工知能(AI)サーバーの生産能力を増強すると表明。顧客には米半導体大手エヌビディアが含まれるという。
EMS大手では緯創資通(ウィストロン)が8月、北米でアフターサービスを手がける子会社がテキサス州で土地と工場を取得すると発表。緯創傘下で、サーバーの製造を手がける緯穎科技服務(ウィウィン)の洪麗ネイ(ネイ=うかんむりの下に心と用)董事長は9月、生産の「脱中国」が今年完了し、中国での生産を終了すると表明。一方で米大統領選の結果を踏まえ米国工場の設置を検討する考えも示していた。
このほかにもEMS大手の広達電脳(クアンタ・コンピューター)は11月、米子会社の増資を引き受けることを決定。AIサーバーの生産能力増強を加速するのが目的とみられている。
米国での生産に動いているのはEMSにとどまらない。パソコンブランド世界大手の華碩電脳(ASUS)は米国のシリコンバレーにサーバー関連の生産ラインを設ける計画を進めており、中央通信社によると2025年に出荷を開始する予定。胡書賓共同執行長(最高経営責任者=CEO)は先ごろ、ASUSはトランプ氏の任期1期目の米中貿易摩擦の際に、サプライヤーとサプライチェーンの分散について協議していたことから、迅速な対応が可能だと強調していた。
コンピューティング製品を手がける神達控股(MiTACホールディングス)も10月中旬、米国子会社の増資を引き受けると発表。米国工場の生産能力の増強を進めるという。
■関税強化が需要に影響と指摘
台湾民間シンクタンク、台湾経済研究院(台経院)の陳テイ蛍(テイ=女へんに弟)産業アナリストは、追加関税で企業による北米での工場設置の検討が加速すると予測する。
陳氏によると、サーバーは米中貿易摩擦を背景に生産の台湾回帰が促された。さらに22年ごろからはアジアにデータセンターが相次ぎ建設されたことで、タイやマレーシアでの生産増強が進んだ。サーバー生産を手がける台湾の企業は現在、米国とメキシコから米州に、ドイツとチェコから欧州に、タイ、マレーシア、台湾からアジアにそれぞれ製品を供給。中国生産は中国向けとなっている。
陳氏は、米国がメキシコ、カナダ、中国の製品への関税を強化した場合、EMS各社はコストを消費者に転嫁する可能性が高く、米国の最終製品市場の需要に影響する恐れがあると指摘。こうした中で企業による北米での工場設置の検討が加速するとした。
また、サーバーの現地製造のため企業が各地で資本的支出(研究開発費や設備投資費用の総称)を増やすことによっても運営コストが増えると予想した。
ただサーバーは参入障壁が高い上、台湾企業は設計、生産、産業クラスターの面で優位性があり、競争力を備えていると強調した。
トランプ氏の関税政策を巡っては、台湾経済部(経済産業省)の郭智輝部長(経産相)がこれまでに台湾企業の米国での工場設置を支援する考えを表明している。
■中国プラスワンでは不足も、専門家
台湾民間シンクタンクの中華経済研究院(中経院)で東南アジア研究を手がける台湾東南亜国家協会研究中心(TASC)の徐遵慈主任は、トランプ氏の政策に対するサプライチェーンのリスク分散は「中国プラスワン」では十分ではない可能性もあるとの見方を示した。
このほど参加したフォーラムでの発言。徐氏は、トランプ氏が全ての輸入品に10~20%の関税を課すとしていることについて、交渉の有無など専門家の見方は分かれていると指摘。影響については今後の進展を見る必要があるとの見方を示した。
一方、中国製品に対する関税の引き上げはおおむね実施されるとみられていると説明。さらに米国が中国との恒久的正常貿易関係(PNTR)を取り消すようなことになれば、関連サプライチェーンの対米貿易に影響し、世界規模のインフレを引き起こす可能性があると警戒感を示した。
徐氏は、台湾企業の中国投資は減少が続き、中国プラスワンまたは台湾プラスワンの状況が増えると予想。その上で、リスク分散の上では中国プラスワンでは十分ではない可能性もあるとの見方を示した。

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このほかにもEMS大手の広達電脳(クアンタ・コンピューター)は11月、米子会社の増資を引き受けることを決定。AIサーバーの生産能力増強を加速するのが目的とみられている。
米国での生産に動いているのはEMSにとどまらない。パソコンブランド世界大手の華碩電脳(ASUS)は米国のシリコンバレーにサーバー関連の生産ラインを設ける計画を進めており、中央通信社によると2025年に出荷を開始する予定。胡書賓共同執行長(最高経営責任者=CEO)は先ごろ、ASUSはトランプ氏の任期1期目の米中貿易摩擦の際に、サプライヤーとサプライチェーンの分散について協議していたことから、迅速な対応が可能だと強調していた。
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■関税強化が需要に影響と指摘
台湾民間シンクタンク、台湾経済研究院(台経院)の陳テイ蛍(テイ=女へんに弟)産業アナリストは、追加関税で企業による北米での工場設置の検討が加速すると予測する。
陳氏によると、サーバーは米中貿易摩擦を背景に生産の台湾回帰が促された。さらに22年ごろからはアジアにデータセンターが相次ぎ建設されたことで、タイやマレーシアでの生産増強が進んだ。サーバー生産を手がける台湾の企業は現在、米国とメキシコから米州に、ドイツとチェコから欧州に、タイ、マレーシア、台湾からアジアにそれぞれ製品を供給。中国生産は中国向けとなっている。
陳氏は、米国がメキシコ、カナダ、中国の製品への関税を強化した場合、EMS各社はコストを消費者に転嫁する可能性が高く、米国の最終製品市場の需要に影響する恐れがあると指摘。こうした中で企業による北米での工場設置の検討が加速するとした。
また、サーバーの現地製造のため企業が各地で資本的支出(研究開発費や設備投資費用の総称)を増やすことによっても運営コストが増えると予想した。
ただサーバーは参入障壁が高い上、台湾企業は設計、生産、産業クラスターの面で優位性があり、競争力を備えていると強調した。
トランプ氏の関税政策を巡っては、台湾経済部(経済産業省)の郭智輝部長(経産相)がこれまでに台湾企業の米国での工場設置を支援する考えを表明している。
■中国プラスワンでは不足も、専門家
台湾民間シンクタンクの中華経済研究院(中経院)で東南アジア研究を手がける台湾東南亜国家協会研究中心(TASC)の徐遵慈主任は、トランプ氏の政策に対するサプライチェーンのリスク分散は「中国プラスワン」では十分ではない可能性もあるとの見方を示した。
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