中国で若者の「結婚離れ」が止まらない。市場調査会社によると、中国の2024年のブライダル市場規模は2年ぶりに縮小し、金額ベースでは少なくとも18年以降で最低を記録した。経済的負担への不安から結婚に踏み切れない若者が増え、24年の婚姻数は過去最低となった可能性もありそうだ。中国政府は若者の結婚支援に力を入れ、少子化に歯止めをかけようとしている。
上海市の人民公園に設けられたお見合いコーナーで、プロフィルに見入る若者ら=1月中旬
1月下旬の週末、上海市内の人民公園は高齢者でにぎわっていた。子どもの結婚相手を見つけようと、親たちが集まって「代理婚活」を繰り広げるのが週末のちょっとした名物になっている。
「1989年生まれ、女性。外資企業勤務で年収30万元(約640万円)以上」「1990年生まれの男性。身長175センチメートル。たばこも酒もやりません」。足元に置かれたカードには、プロフィルやお見合い相手への要求がびっしり書き込まれていた。
中国の婚姻数は13年の約1,347万組をピークに減少が続き、22年には過去最低の683万組に落ち込んだ。23年は新型コロナウイルス禍が去った反動もあり、10年ぶりに増加に転じたが、24年1~9月は前年同期比16.6%減の474万組。24年通年でもマイナスに落ち込む可能性が高い。
婚姻数の伸び悩みなどを反映して、ブライダル市場も低調だ。市場調査会社の艾媒諮詢(IIメディアリサーチ)によると、中国ブライダル市場の広義の市場規模(ブライダルエステ、父母の衣装など周辺業界を含む)は24年に前年比14.1%減の14兆3,200億元となり、2年ぶりにマイナスに落ち込んだ。婚姻数が過去最低だった22年の14兆8,300億元も下回った。
節約志向の高まりも影響しており、ウエディングドレスやアクセサリーなど結婚式に必要なモノを購入せずにレンタルする人が増え、平均消費額と予算が下がったという。
艾媒諮詢のアナリストは、「結婚適齢期に当たる1990年代生まれ以降の層の結婚願望が下がっていることが、ブライダル市場にとって最大の課題だ」と指摘。ブライダル市場の消費力は徐々に高まっているが、それとは対照的に婚姻数が年々減少しているとして、「適齢期の若者の結婚と恋愛に対する考えがますます“独立的”になれば、中国のブライダル市場の課題はより大きくなっていく」とも分析した。
■経済的負担大きく
若者は経済的な負担への不安から結婚に踏み切れなくなっている。
中国では、結婚する際に男性が新居を購入し、さらに「彩礼」と呼ばれる結納金を支払う習慣がある。結納金は高額で、市場調査会社によると、24年の全国平均額は12万元を超えた。
中国人民大学人口発展研究センターの楊凡副教授らは中国の学術誌「人口研究」に出した論文で、独身男女30~45歳の2,112人を対象に実施した聞き取り調査では全体の63.8%が「結婚に伴う経済的圧力が大きい」と考えていると指摘した。
結婚にかかる費用は23年時点で平均33万400元。全国の平均可処分所得の8倍以上に相当する規模だ。
新居の購入も負担になっている。調査では、結婚後の新居を準備している人は全体の17%にとどまり、このうち8割近くが新居購入費用の半分以上を両親に頼ると答えた。住宅価格が高い地域ほど婚期が遅くなる傾向にあるという。
安徽省出身の男性(33)は、「恋人から求められた結納金や新居の購入場所の条件がかなえられず、結婚をあきらめた」と話した。
子どもを望まない人が増えていることも一因だ。論文によると、調査対象の38%が「子どもはほしくないし、結婚もしたくない」と答えた。子どもの教育にかかる費用の高さから、出産をためらう若者が多いようだ。子どもを持つことで趣味に充てる時間が減ったり、職場での昇進や異動の機会が失われたりすることを心配する声も多かった。
■政府は関連休暇や補助金
若者の「未婚化」は出生数の減少にもつながる。中国では23年まで7年連続で出生数が減少した。24年は前年から52万人増えたが、中国で縁起が良いとされるたつ年だったことが出生数増加の要因の一つになったとみられ、今後も出産増が続くとは考えにくい状況にある。
中国政府は少子化に歯止めをかけようと、出産や子育て、教育にかかる費用を軽減する方針を示している。昨年10月に発表した「出産に優しい社会」を構築するための施策では、働く女性の出産保険や産休・育児休暇の取得を保障し、3歳以下の子どもの養育にかかる支出の個人所得税を控除するなどの内容を盛り込んだ。
結婚助成金を出す地方政府も出てきた。山西省呂梁市は昨年10月、35歳までに結婚した女性に1,500元を支給する新たな規定を発表した。
ただ目立った景気回復が見通せない今、こうした少子化対策が「特効薬」となるかどうか、行方は不透明だ。

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中国の婚姻数は13年の約1,347万組をピークに減少が続き、22年には過去最低の683万組に落ち込んだ。23年は新型コロナウイルス禍が去った反動もあり、10年ぶりに増加に転じたが、24年1~9月は前年同期比16.6%減の474万組。24年通年でもマイナスに落ち込む可能性が高い。
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艾媒諮詢のアナリストは、「結婚適齢期に当たる1990年代生まれ以降の層の結婚願望が下がっていることが、ブライダル市場にとって最大の課題だ」と指摘。ブライダル市場の消費力は徐々に高まっているが、それとは対照的に婚姻数が年々減少しているとして、「適齢期の若者の結婚と恋愛に対する考えがますます“独立的”になれば、中国のブライダル市場の課題はより大きくなっていく」とも分析した。
■経済的負担大きく
若者は経済的な負担への不安から結婚に踏み切れなくなっている。
中国では、結婚する際に男性が新居を購入し、さらに「彩礼」と呼ばれる結納金を支払う習慣がある。結納金は高額で、市場調査会社によると、24年の全国平均額は12万元を超えた。
中国人民大学人口発展研究センターの楊凡副教授らは中国の学術誌「人口研究」に出した論文で、独身男女30~45歳の2,112人を対象に実施した聞き取り調査では全体の63.8%が「結婚に伴う経済的圧力が大きい」と考えていると指摘した。
結婚にかかる費用は23年時点で平均33万400元。全国の平均可処分所得の8倍以上に相当する規模だ。
新居の購入も負担になっている。調査では、結婚後の新居を準備している人は全体の17%にとどまり、このうち8割近くが新居購入費用の半分以上を両親に頼ると答えた。住宅価格が高い地域ほど婚期が遅くなる傾向にあるという。
安徽省出身の男性(33)は、「恋人から求められた結納金や新居の購入場所の条件がかなえられず、結婚をあきらめた」と話した。
子どもを望まない人が増えていることも一因だ。論文によると、調査対象の38%が「子どもはほしくないし、結婚もしたくない」と答えた。子どもの教育にかかる費用の高さから、出産をためらう若者が多いようだ。子どもを持つことで趣味に充てる時間が減ったり、職場での昇進や異動の機会が失われたりすることを心配する声も多かった。
■政府は関連休暇や補助金
若者の「未婚化」は出生数の減少にもつながる。中国では23年まで7年連続で出生数が減少した。24年は前年から52万人増えたが、中国で縁起が良いとされるたつ年だったことが出生数増加の要因の一つになったとみられ、今後も出産増が続くとは考えにくい状況にある。
中国政府は少子化に歯止めをかけようと、出産や子育て、教育にかかる費用を軽減する方針を示している。昨年10月に発表した「出産に優しい社会」を構築するための施策では、働く女性の出産保険や産休・育児休暇の取得を保障し、3歳以下の子どもの養育にかかる支出の個人所得税を控除するなどの内容を盛り込んだ。
結婚助成金を出す地方政府も出てきた。山西省呂梁市は昨年10月、35歳までに結婚した女性に1,500元を支給する新たな規定を発表した。
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