インドと米国は13日、米ホワイトハウスでの首脳会談後、共同声明を発表した。2国間の互恵的な貿易協定の締結を目指し、今秋にも関税障壁の対立解消を含め協議を始めることで合意した。トランプ米大統領は「インドと同じ関税率を課す」と述べ、米国が相手国に対等の関税負担を求める「相互関税」を改めて強調した。インドでは、米国が10日に発表した全ての国からの鉄鋼とアルミニウム輸入への25%追加関税に動揺が広がっており、標的回避と友好維持の均衡で手腕が試されることになりそうだ。
米ホワイトハウスでトランプ米大統領(右)と会談するインドのモディ首相=13日、米ワシントン(PTI通信)
インドのモディ首相とトランプ米大統領は13日、米ワシントンで会談した後、共同声明を発表した。両首脳は2国間貿易額を2030年までに5,000億米ドル(約76兆円)に倍増する目標「ミッション500」を打ち出した。互恵的な2国間貿易協定(BTA)の締結を目指し、今秋までに初期段階の協議を開始することで合意。両首脳は協議に当たって、「公正な貿易条件」の必要性を認識し、「関税・非関税障壁の削減」に向けて取り組むことも確認した。
インド首相府は14日、首脳会談でのモディ首相の声明を公表。トランプ大統領が掲げるスローガン「アメリカを再び偉大に(MAGA)」に言及し、インドにとっては発展に向かっての「インドを再び偉大に(MIGA)」だと強調。「MAGAとMIGAによって繁栄のための巨大(MEGA)パートナーシップが形成される」と、友好な2国間関係の深化を称賛した。
■「同じ関税率を課す」トランプ氏
首脳会談では、トランプ関税を巡ってのインドへの姿勢に注目が集まっていた。
ロイター通信によると、トランプ氏は13日に記者会見で「米国には平等な競争条件を得る権利がある。米国はインドと同じ関税率を課すだけだ」と表明。また、米国の対インド貿易赤字は今回、インドが約束した米国産石油・ガスの購入拡大で補うことができると付け加えた。

世界銀行のWITSデータによると、インドが米国に課す関税率(加重平均、22年)は9.5%で、米国がインドに課す関税率の3.0%を上回る。双方の分野別関税率の差を見ると、インドは米国より「輸送設備」で14.4%、「鉱物」で8.6%、「化学」で9.4%、「金属」で7.8%高い。インドの政府高官は、貿易を巡る懸念解消のための合意は向こう7カ月以内に実現する可能性があると明かした。
■世界で鉄鋼の対米輸出85%縮小か
インドのシンクタンク、グローバル・トレード・リサーチ・イニシアチブ(GTRI)は14日、「米国は相互関税を特定の製品に適用するのか、部門全体に適用するのかを明確にする必要がある」との見方を示した。米国はほとんどの貿易相手国に対して関税を抑える役割の「正常貿易関係(NTR)」(かつての最恵国待遇)を適用しており、各国に対し相互関税を的確に課さなければ、工業製品の世界最大の供給国である中国が最終的に利益を受けることになるとみているためだ。

米国がこうした措置を原則「例外なく」排除し、全ての国からの輸入に25%追加関税を課すと発表したのが、鉄鋼とアルミニウムだ。トランプ氏が10日に大統領布告に署名したことを受け、インド鉄鋼協会(ISA)は同日に「深い懸念」を表明した。
PTI通信によると、ISAのナビーン・ジンダル会長は「世界貿易のさらなる混乱と鉄鋼業界が抱える課題の深刻化を危惧する」と述べた。また、世界全体の米国への鉄鋼輸出が85%減る可能性が高いとし、余剰分がインドに流入し国内産業を脅かすと指摘した。
■インド、鉄鋼需要で「まぶしい市場」
三井住友銀行アジア・大洋州トレジャリー部(シンガポール)のエコノミスト、阿部良太氏はNNAに対し、「世界の鉄鋼需要が全体的に低迷する中で、インドの伸びは高く、まぶしい市場に映るかもしれない」と話す。ただ、「内需が弱い現状、流入するかは疑問だ」とみている。世界鉄鋼協会(WSA)によると、25年のインドの鉄鋼需要は1億5,560万トンと前年比で8.5%増が見込まれる。一方、世界全体の鉄鋼需要は17億7,150万トンで、前年から1.2%増にとどまる見通しだ。
鉄鋼とアルミの追加関税は3月に発動する見通し。また、広範な相互関税の発効については、米国のハワード・ルトニック商務長官が「影響を受ける相手国の調査に着手し、4月1日までに完了する」としている。

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インド首相府は14日、首脳会談でのモディ首相の声明を公表。トランプ大統領が掲げるスローガン「アメリカを再び偉大に(MAGA)」に言及し、インドにとっては発展に向かっての「インドを再び偉大に(MIGA)」だと強調。「MAGAとMIGAによって繁栄のための巨大(MEGA)パートナーシップが形成される」と、友好な2国間関係の深化を称賛した。
■「同じ関税率を課す」トランプ氏
首脳会談では、トランプ関税を巡ってのインドへの姿勢に注目が集まっていた。
ロイター通信によると、トランプ氏は13日に記者会見で「米国には平等な競争条件を得る権利がある。米国はインドと同じ関税率を課すだけだ」と表明。また、米国の対インド貿易赤字は今回、インドが約束した米国産石油・ガスの購入拡大で補うことができると付け加えた。

世界銀行のWITSデータによると、インドが米国に課す関税率(加重平均、22年)は9.5%で、米国がインドに課す関税率の3.0%を上回る。双方の分野別関税率の差を見ると、インドは米国より「輸送設備」で14.4%、「鉱物」で8.6%、「化学」で9.4%、「金属」で7.8%高い。インドの政府高官は、貿易を巡る懸念解消のための合意は向こう7カ月以内に実現する可能性があると明かした。
■世界で鉄鋼の対米輸出85%縮小か
インドのシンクタンク、グローバル・トレード・リサーチ・イニシアチブ(GTRI)は14日、「米国は相互関税を特定の製品に適用するのか、部門全体に適用するのかを明確にする必要がある」との見方を示した。米国はほとんどの貿易相手国に対して関税を抑える役割の「正常貿易関係(NTR)」(かつての最恵国待遇)を適用しており、各国に対し相互関税を的確に課さなければ、工業製品の世界最大の供給国である中国が最終的に利益を受けることになるとみているためだ。

米国がこうした措置を原則「例外なく」排除し、全ての国からの輸入に25%追加関税を課すと発表したのが、鉄鋼とアルミニウムだ。トランプ氏が10日に大統領布告に署名したことを受け、インド鉄鋼協会(ISA)は同日に「深い懸念」を表明した。
PTI通信によると、ISAのナビーン・ジンダル会長は「世界貿易のさらなる混乱と鉄鋼業界が抱える課題の深刻化を危惧する」と述べた。また、世界全体の米国への鉄鋼輸出が85%減る可能性が高いとし、余剰分がインドに流入し国内産業を脅かすと指摘した。
■インド、鉄鋼需要で「まぶしい市場」
三井住友銀行アジア・大洋州トレジャリー部(シンガポール)のエコノミスト、阿部良太氏はNNAに対し、「世界の鉄鋼需要が全体的に低迷する中で、インドの伸びは高く、まぶしい市場に映るかもしれない」と話す。ただ、「内需が弱い現状、流入するかは疑問だ」とみている。世界鉄鋼協会(WSA)によると、25年のインドの鉄鋼需要は1億5,560万トンと前年比で8.5%増が見込まれる。一方、世界全体の鉄鋼需要は17億7,150万トンで、前年から1.2%増にとどまる見通しだ。
鉄鋼とアルミの追加関税は3月に発動する見通し。また、広範な相互関税の発効については、米国のハワード・ルトニック商務長官が「影響を受ける相手国の調査に着手し、4月1日までに完了する」としている。
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