シンガポールのローレンス・ウォン首相兼財務相は18日、2025年度(25年4月~26年3月)予算案の発表で、法人税を50%還付する意向を表明した。コスト高で苦しむ企業を税制面で支援し、経済活動に支障が生じないようにするのが狙いだ。経済成長の要となる研究開発では、人工知能(AI)や半導体などの先端分野の研究開発施設を刷新する計画を示した。
シンガポールで18日、2025年度予算案が発表された=シンガポール中心部(NNA撮影)
ウォン氏は24年5月の首相就任以来、首相として初となる予算案発表に先立ち、17日に自身のフェイスブックを通じて「(今回の予算案は)全てのシンガポール人に向けたものになる」との声明を発表。「より良い明日に向け共に前進しよう(Onward Together for a Better Tomorrow)」と国民に呼びかけた。
ローレンス・ウォン首相はSNSを通じ、全国民に向けて「より良い明日に向け共に前進しよう」とメッセージを発信した(首相フェイスブックより)
18日の25年度予算案発表の冒頭では今年の経済の見通しに触れ、「世界経済の不確実性と経済成長の下振れリスクが増大する」と指摘。米中の競争激化が、シンガポールを含む他の国々に影響を及ぼすと懸念を示した上で、国内の経済成長は年率1~3%、物価上昇率は同1.5~2.5%にそれぞれ鈍化するという政府の見通しを改めて説明した。
物価上昇率は緩和する見込みだが、コストの高騰に悩まされている国内企業は多いため、25年賦課年度の法人税を50%還付すると表明。24年にシンガポール国民か永住権(PR)保持者を1人以上雇用している企業に対し、4万Sドル(約452万円)を上限に最低2,000Sドルの税優遇を受けられるようにすると明らかにした。
低所得労働者の段階的な賃金上昇を支援する累進給与補助金制度(PWCS)の政府負担割合も改定すると発表。政府負担は25年に30%、26年に15%となっていたが、それぞれ40%と20%に引き上げる計画を示した。
■研究施設刷新に10億ドル投資
ウォン首相は今後について、「24年は4%超の経済成長を達成したが、競争が激化する中でさらに大きな成長を目指すのは厳しくなる」と指摘。より良い雇用と事業機会を創出するためには向こう10年で平均2~3%の成長を目指す必要があるという従来の政府見解を改めて説明した。
この経済成長を実現するために「健全な金融・財政政策を維持する」「効率化とイノベーション推進に向けて市場の力を活用する」「能力を強化するため人々とアイデアに対してオープンな環境を維持する」「経済安定の礎として政労使3者間の提携を深める」という4つの基本方針を継続する必要性を強調した。
経済成長の継続に向けては、イノベーションを達成する高度な研究開発が求められるため、政府は中央部ブオナビスタの科学技術パーク「ワンノース」のバイオサイエンス・医療研究インフラを刷新すると表明。新たに開発する国立の半導体研究開発製造施設と合わせ、総額10億Sドルを投資する予定を示した。
ウォン首相はこのほか、経済開発庁(EDB)が25年後半に「グローバル創業者プログラム」を立ち上げると言明。多国籍企業や起業家が新たなベンチャー企業を国内に定着、成長させることを奨励することが目的だと付け加えた。
国内企業がAIをより効果的に活用できるように支援する新たな取り組み「エンタープライズ・コンピュート・イニシアチブ」に、最大1億5,000万Sドルを準備していることも明らかにした。
議会で2025年度予算案を発表するウォン首相(デジタル開発情報省提供)
■原子力発電の導入可能性を本格検討
ウォン首相はエネルギー政策についても言及。今後のシンガポールの経済成長を支えるAI、半導体、バイオ医薬品などはエネルギー集約型の産業のため、電力需要を満たしつつ二酸化炭素(CO2)排出量を削減するためにはより多くのクリーン電力が必要だと指摘。35年までには総電力需要の3分の1が輸入に頼ることになるという予測を示した上で、低炭素電力の輸入を促進することが重要と強調した。
ただ現時点で、水素などの低炭素エネルギーを生産、貯蔵、輸送することを商業的に成立させることは難しいため、原子力発電の可能性を研究する必要があると説明。国内での原子力発電の潜在的な可能性を研究し、同分野の能力構築を積極的に高める措置を講じていく方針を明らかにした。
政府は24年、電力輸入、水素、原子力などに関する新たなインフラに大規模な投資を行うことを目的とした「未来エネルギーファンド」を設立。ウォン首相は25年度の予算で、同ファンドに50億Sドルを追加出資する計画も示した。
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物価上昇率は緩和する見込みだが、コストの高騰に悩まされている国内企業は多いため、25年賦課年度の法人税を50%還付すると表明。24年にシンガポール国民か永住権(PR)保持者を1人以上雇用している企業に対し、4万Sドル(約452万円)を上限に最低2,000Sドルの税優遇を受けられるようにすると明らかにした。
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■研究施設刷新に10億ドル投資
ウォン首相は今後について、「24年は4%超の経済成長を達成したが、競争が激化する中でさらに大きな成長を目指すのは厳しくなる」と指摘。より良い雇用と事業機会を創出するためには向こう10年で平均2~3%の成長を目指す必要があるという従来の政府見解を改めて説明した。
この経済成長を実現するために「健全な金融・財政政策を維持する」「効率化とイノベーション推進に向けて市場の力を活用する」「能力を強化するため人々とアイデアに対してオープンな環境を維持する」「経済安定の礎として政労使3者間の提携を深める」という4つの基本方針を継続する必要性を強調した。
経済成長の継続に向けては、イノベーションを達成する高度な研究開発が求められるため、政府は中央部ブオナビスタの科学技術パーク「ワンノース」のバイオサイエンス・医療研究インフラを刷新すると表明。新たに開発する国立の半導体研究開発製造施設と合わせ、総額10億Sドルを投資する予定を示した。
ウォン首相はこのほか、経済開発庁(EDB)が25年後半に「グローバル創業者プログラム」を立ち上げると言明。多国籍企業や起業家が新たなベンチャー企業を国内に定着、成長させることを奨励することが目的だと付け加えた。
国内企業がAIをより効果的に活用できるように支援する新たな取り組み「エンタープライズ・コンピュート・イニシアチブ」に、最大1億5,000万Sドルを準備していることも明らかにした。
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■原子力発電の導入可能性を本格検討
ウォン首相はエネルギー政策についても言及。今後のシンガポールの経済成長を支えるAI、半導体、バイオ医薬品などはエネルギー集約型の産業のため、電力需要を満たしつつ二酸化炭素(CO2)排出量を削減するためにはより多くのクリーン電力が必要だと指摘。35年までには総電力需要の3分の1が輸入に頼ることになるという予測を示した上で、低炭素電力の輸入を促進することが重要と強調した。
ただ現時点で、水素などの低炭素エネルギーを生産、貯蔵、輸送することを商業的に成立させることは難しいため、原子力発電の可能性を研究する必要があると説明。国内での原子力発電の潜在的な可能性を研究し、同分野の能力構築を積極的に高める措置を講じていく方針を明らかにした。
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