三菱自動車の完成車を輸入販売しているバングラデシュ地場ランコン・ホールディングスは、今年6月にも部品を輸入して組み立てるノックダウン方式で三菱車の受託生産を開始する。首都ダッカで開催されたダッカ・モーターショーで1日、NNAに対してランコンの幹部が詳細を明らかにした。バングラデシュでは日本・中国・インドブランド車のノックダウン生産が加速しそうだ。【遠藤堂太】
ランコンの三菱自とスズキ二輪車の担当トップであるファヒム・フセイン・マネジャー(左)と三菱車販売子会社ラングスのハムドゥル・ラハマンCEO=1日、ダッカ・モーターショー会場(NNA撮影)
バングラデシュではトヨタ車を中心とする日本製中古車が広く流通しており、昨年の日本からの中古車輸出は2万台強だった。自動車の本格的な生産は裾野産業が未成熟なため行われていない。一方、新車の輸入は高関税が課されるため、各社ともノックダウンでコスト低減を狙う。モーターショーはバングラデシュの輸入や組み立て企業が主導して出展している点が他国とは大きく異なる。
三菱自はガソリン車の多目的車(MPV)「エクスパンダー」の先行予約を会場で開始。スポーツタイプのカテゴリーは350万タカ(約416万円)だ。
まずは年産2,000台規模からスタートする。ランコンで日本車メーカーを担当するファヒム・フセイン・マネジャーによると、ダッカ近郊で35億タカを投じて自動車工場を整備。ランコンはマレーシアのプロトン、上海汽車集団(SAIC)傘下の英系MGの輸入販売も手がけているが、プロトンのスポーツタイプ多目的車(SUV)「X70」も同時に受託生産開始する。メルセデス・ベンツの商用車などを含む生産ラインは分けるが、今年末にも稼働を見込む電着塗装のラインは共通化するという。三菱車の部品はインドネシア・タイ・日本から輸入する。販売は長年の実績がある三菱車の方が多くなる見込みで、購入を検討する来場者が多かった。
三菱自は2021年9月、国営企業のバングラデシュ・スチール・アンド・エンジニアリング(BSEC)と合弁会社を設立する計画の検討を明らかにしていた。ただ、三菱自広報担当者によると、発表の1~2年後には計画を白紙にしており、今回の委託生産に至ったようだ。BSECは20年頃まで年間数百台規模で三菱車の受託生産を行っていた。なお、BSECはホンダと二輪車の合弁法人を持つ。
■地場ランコン、スズキ二輪の組み立て好調
ランコンはこのほか、スズキの二輪車の受託生産も行っている。部品はインドから調達。ファヒム氏によると、直近では首位でインドのバジャジ・オートを超える月もあり、昨年は9万台を売り上げ、現地調達率は30%に達しているという。好調の理由としてファヒム氏はディーラー網を128店まで拡大したことや、スペアパーツを入手しやすくしたことなどを挙げた。二輪車の全体の新車市場は年40万台程度とされる。
昨年10月に組み立て生産で進出したインドのロイヤル・エンフィールドも攻勢をかける。事業を担当するガルフ・オイル・バングラデシュのインド人担当者によると、350ccクラスのバングラデシュ市場参入はロイヤルブランドが初めてで、既に5,000台を売り上げたとコメント。受注残が1万7,000台にも及んでいるという。部品はインドから調達する。
ウッタラグループはスズキ四輪の輸入のほか、いすゞやインド二輪バジャジの組み立てを手がける=1日、ダッカ・モーターショー会場(NNA撮影)
バジャジを組み立て生産しているウッタラグループは、いすゞ車を日本、タイ、インドから輸入しているほか一部は受託組み立ても行っている。マティウル・ラーマン会長はNNAに対し、「中国車との差別化を図るため、日本やインドブランド組立車の現地調達率向上や品質に磨きをかけたい。日本の部品メーカーはバングラデシュに進出してほしい」とエールを送る。
■福田汽車も現地組み立てへ
中国の広州汽車集団(GAC)はプラグインハイブリッド車(PHV)「E9」などの輸入販売を発表。広州汽車の周登月アジア地域カントリーマネジャーはNNAに対し、「われわれは中国でトヨタ、ホンダ合弁を組んでおり、高品質の車を提供できる。現地組み立ても検討したい」と意欲を見せた。「日中のメーカーが競争で切磋琢磨(せっさたくま)すれば、バングラデシュを含む世界の人々に、より良い車を提供できる」とも付言した。
中国商用車の北汽福田汽車(フォトン)は広いスペースで展示。現地受託企業のACIモーターズの担当者によると、バングラデシュ最大港のあるチョットグラム(チッタゴン)で専用受託工場を建設中で、来年にも生産が本格化する見込みだ。ACIモーターズには三井物産が出資しているほか、ヤマハの二輪車組み立てを受託している。
モーターショーにはこのほか、輸入販売するホンダの四輪や中国の重慶長安汽車、MG、韓国の起亜が出展していたが、中国の比亜迪(BYD)や韓国の現代自動車、日系二輪車メーカーは出展していなかった。
モーターショーは米国に本社があるセムス・グローバルが主催し、今年は18回目。1~3日の同国の連休中に開催され家族や友人と連れだっての来場が多かった。入場料は50タカ。外国人は部品貿易やメーカーの中国人を除くとほとんどいなかった。
福田汽車(フォトン)は地場財閥ACIの子会社と協業してトラックを組み立てる計画=1日、ダッカ・モーターショー会場(NNA撮影)
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三菱自はガソリン車の多目的車(MPV)「エクスパンダー」の先行予約を会場で開始。スポーツタイプのカテゴリーは350万タカ(約416万円)だ。
まずは年産2,000台規模からスタートする。ランコンで日本車メーカーを担当するファヒム・フセイン・マネジャーによると、ダッカ近郊で35億タカを投じて自動車工場を整備。ランコンはマレーシアのプロトン、上海汽車集団(SAIC)傘下の英系MGの輸入販売も手がけているが、プロトンのスポーツタイプ多目的車(SUV)「X70」も同時に受託生産開始する。メルセデス・ベンツの商用車などを含む生産ラインは分けるが、今年末にも稼働を見込む電着塗装のラインは共通化するという。三菱車の部品はインドネシア・タイ・日本から輸入する。販売は長年の実績がある三菱車の方が多くなる見込みで、購入を検討する来場者が多かった。
三菱自は2021年9月、国営企業のバングラデシュ・スチール・アンド・エンジニアリング(BSEC)と合弁会社を設立する計画の検討を明らかにしていた。ただ、三菱自広報担当者によると、発表の1~2年後には計画を白紙にしており、今回の委託生産に至ったようだ。BSECは20年頃まで年間数百台規模で三菱車の受託生産を行っていた。なお、BSECはホンダと二輪車の合弁法人を持つ。
■地場ランコン、スズキ二輪の組み立て好調
ランコンはこのほか、スズキの二輪車の受託生産も行っている。部品はインドから調達。ファヒム氏によると、直近では首位でインドのバジャジ・オートを超える月もあり、昨年は9万台を売り上げ、現地調達率は30%に達しているという。好調の理由としてファヒム氏はディーラー網を128店まで拡大したことや、スペアパーツを入手しやすくしたことなどを挙げた。二輪車の全体の新車市場は年40万台程度とされる。
昨年10月に組み立て生産で進出したインドのロイヤル・エンフィールドも攻勢をかける。事業を担当するガルフ・オイル・バングラデシュのインド人担当者によると、350ccクラスのバングラデシュ市場参入はロイヤルブランドが初めてで、既に5,000台を売り上げたとコメント。受注残が1万7,000台にも及んでいるという。部品はインドから調達する。
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ウッタラグループはスズキ四輪の輸入のほか、いすゞやインド二輪バジャジの組み立てを手がける=1日、ダッカ・モーターショー会場(NNA撮影)[/caption]
バジャジを組み立て生産しているウッタラグループは、いすゞ車を日本、タイ、インドから輸入しているほか一部は受託組み立ても行っている。マティウル・ラーマン会長はNNAに対し、「中国車との差別化を図るため、日本やインドブランド組立車の現地調達率向上や品質に磨きをかけたい。日本の部品メーカーはバングラデシュに進出してほしい」とエールを送る。
■福田汽車も現地組み立てへ
中国の広州汽車集団(GAC)はプラグインハイブリッド車(PHV)「E9」などの輸入販売を発表。広州汽車の周登月アジア地域カントリーマネジャーはNNAに対し、「われわれは中国でトヨタ、ホンダ合弁を組んでおり、高品質の車を提供できる。現地組み立ても検討したい」と意欲を見せた。「日中のメーカーが競争で切磋琢磨(せっさたくま)すれば、バングラデシュを含む世界の人々に、より良い車を提供できる」とも付言した。
中国商用車の北汽福田汽車(フォトン)は広いスペースで展示。現地受託企業のACIモーターズの担当者によると、バングラデシュ最大港のあるチョットグラム(チッタゴン)で専用受託工場を建設中で、来年にも生産が本格化する見込みだ。ACIモーターズには三井物産が出資しているほか、ヤマハの二輪車組み立てを受託している。
モーターショーにはこのほか、輸入販売するホンダの四輪や中国の重慶長安汽車、MG、韓国の起亜が出展していたが、中国の比亜迪(BYD)や韓国の現代自動車、日系二輪車メーカーは出展していなかった。
モーターショーは米国に本社があるセムス・グローバルが主催し、今年は18回目。1~3日の同国の連休中に開催され家族や友人と連れだっての来場が多かった。入場料は50タカ。外国人は部品貿易やメーカーの中国人を除くとほとんどいなかった。
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