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【日本の税務】海外勤務が延長された場合の居住者・非居住者の判定

第322回

村松さん:みらい先生、お久しぶりです。

みらい:村松さん、お久しぶりですね。そう言えば、村松さんは昨年の8月からベトナム赴任されていますよね。ベトナムの生活はいかがですか?

村松さん:生活にはだいぶ慣れましたが、日本食が懐かしくて早く戻りたいです。実は3月に現地のプロジェクトの延長が決まりまして、10カ月の予定だった私の赴任も更に1年間延びることになりました。当初は海外での勤務期間が1年未満の予定だったので、所得税については「居住者」として国内勤務者と同様に課税されてました。今回のように、海外での勤務期間が1年間延長される場合、「非居住者」になりますよね?

みらい:そのとおりです。1年未満の海外勤務予定で出国した場合には、「居住者」として取り扱われますが、その後事情の変更があり海外勤務が1年以上となることが明らかになった場合には、その明らかになった日以後は「非居住者」となります。

村松さん:そうなりますと、これまでの海外勤務期間(昨年の8月から1年延長が決まった日まで)に係る給与の課税関係をさかのぼって訂正することになるのでしょうか?

みらい:当初の予定では海外での勤務期間が10カ月(1年未満)だったため、たとえ勤務期間が延長され1年以上となったとしても、過去にさかのぼって修正する必要はありません。

村松さん:そうなんですね。安心しました。

みらい:あくまで延長が確定した日以後から「非居住者」として取り扱うとこになります。つまり、昨年の8月から延長が決まるまでは「居住者」ですので、給与は日本で課税されます。延長が決まった日以後からは「非居住者」となるため、日本国内で勤務しない限り、日本で課税されないということになります。

村松さん:なるほど、実際に海外で居住していた期間ではなく、1年以上となることが明らかになった時点で日本での課税関係を判断するのですね。よくかりました。ところで、今年の年末調整をどのように行うのでしょうか?

みらい:村松さんは延長が決まるまでは「居住者」となっているため、年末調整を行って税額の精算をする必要があります。「非居住者」となった後の給与については非課税となり、年末調整を行う必要がありません。

村松さん:なるほど、配偶者控除と扶養控除の計算はどうなりますでしょうか?

みらい:年の途中で「居住者」から「非居住者」となった場合の配偶者控除と扶養控除については、出国時の現況によって判定を行います。また、配偶者控除等を受ける場合には、控除金額は月割り計算はせずに控除することとなります。

村松さん:わかりました。安心しました。ところで、年末調整の対象とならない所得控除(医療費控除、雑損控除、寄付金控除)を受けることはできますか。

みらい:年末調整の対象とならない所得控除(医療費控除、雑損控除、寄付金控除)の適用を受ける場合は、確定申告を行う必要があります。確定申告には日本国内で「納税管理人」を定める必要がありますが、『納税管理人』についてはNNAに過去に掲載された別のQ&A(第313回「海外赴任の際に必要となる「納税管理人の届出書」とは?」 https://www.nna.jp/news/2688724 など)を参照してみてください。

村松さん:ありがとうございます。ご相談できて大変助かりました。早めに準備したいと思います。

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みらい:村松さん、お久しぶりですね。そう言えば、村松さんは昨年の8月からベトナム赴任されていますよね。ベトナムの生活はいかがですか?

村松さん:生活にはだいぶ慣れましたが、日本食が懐かしくて早く戻りたいです。実は3月に現地のプロジェクトの延長が決まりまして、10カ月の予定だった私の赴任も更に1年間延びることになりました。当初は海外での勤務期間が1年未満の予定だったので、所得税については「居住者」として国内勤務者と同様に課税されてました。今回のように、海外での勤務期間が1年間延長される場合、「非居住者」になりますよね?

みらい:そのとおりです。1年未満の海外勤務予定で出国した場合には、「居住者」として取り扱われますが、その後事情の変更があり海外勤務が1年以上となることが明らかになった場合には、その明らかになった日以後は「非居住者」となります。

村松さん:そうなりますと、これまでの海外勤務期間(昨年の8月から1年延長が決まった日まで)に係る給与の課税関係をさかのぼって訂正することになるのでしょうか?

みらい:当初の予定では海外での勤務期間が10カ月(1年未満)だったため、たとえ勤務期間が延長され1年以上となったとしても、過去にさかのぼって修正する必要はありません。

村松さん:そうなんですね。安心しました。

みらい:あくまで延長が確定した日以後から「非居住者」として取り扱うとこになります。つまり、昨年の8月から延長が決まるまでは「居住者」ですので、給与は日本で課税されます。延長が決まった日以後からは「非居住者」となるため、日本国内で勤務しない限り、日本で課税されないということになります。

村松さん:なるほど、実際に海外で居住していた期間ではなく、1年以上となることが明らかになった時点で日本での課税関係を判断するのですね。よくかりました。ところで、今年の年末調整をどのように行うのでしょうか?

みらい:村松さんは延長が決まるまでは「居住者」となっているため、年末調整を行って税額の精算をする必要があります。「非居住者」となった後の給与については非課税となり、年末調整を行う必要がありません。

村松さん:なるほど、配偶者控除と扶養控除の計算はどうなりますでしょうか?

みらい:年の途中で「居住者」から「非居住者」となった場合の配偶者控除と扶養控除については、出国時の現況によって判定を行います。また、配偶者控除等を受ける場合には、控除金額は月割り計算はせずに控除することとなります。

村松さん:わかりました。安心しました。ところで、年末調整の対象とならない所得控除(医療費控除、雑損控除、寄付金控除)を受けることはできますか。

みらい:年末調整の対象とならない所得控除(医療費控除、雑損控除、寄付金控除)の適用を受ける場合は、確定申告を行う必要があります。確定申告には日本国内で「納税管理人」を定める必要がありますが、『納税管理人』についてはNNAに過去に掲載された別のQ&A(第313回「海外赴任の際に必要となる「納税管理人の届出書」とは?」 https://www.nna.jp/news/2688724 など)を参照してみてください。

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 みらいコンサルティンググループ
ミライ コンサルティング グループ みらいコンサルティンググループ
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みらいコンサルティング(旧中央青山PwCコンサルティング)は、グループに監査法人、税理士法人、社会保険労務士法人、各種事業会社を持つ総勢約300名の総合コンサルティングファーム。国内には東京本社のほか10都市に支社を展開。海外には中国(北京・上海・深セン)、シンガポール、タイ(バンコク)、ベトナム(ホーチミン・ハノイ)、マレーシア(クアラルンプール)に子会社を設立、現地にて日系企業の海外展開におけるビジネスコンサルティングを提供している。

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