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海外子会社の管理(ベトナム編)第2編

今回は関連者間取引の不正行為についてです。
「関連者」とは前回述べた通りで、自らの親族や会社の関係者、その親族などの個人、その個人や自らが一定の役割で関係している法人と言えます。

不正行為で使われる(関連者となる)法人は、単なる発注先となるケースと競合会社となるケースの大きく2種類に分かれます。
単なる発注先のケースとは「高額な販売契約・業務委託契約・業務請負契約など」ですので、相見積もりルールだけで多くは予防できるかもしれません。
一方で、競合会社となるケースは、しっかりと信用調査をしないと防ぐことは難しく、横領・背任などの不正の手口も多岐にわたります。

ベトナム企業法(2020年)の第67条、86条、167条などでは、関連者間取引は原則として有限責任会社における社員総会、株式会社の株主総会及び取締役会によって承認されなければなりませんが、悪意ある関連者は、新たな取引・契約がこれら承認の対象ではないかのように欺罔し、自らの権限内に収めます。

****

一名有限責任会社(JICA翻訳文引用)

第67 条 社員総会の承認が必要な契約,取引

1.会社と以下の各対象との間の契約,取引は,社員総会により承認されなければならない。
a) 社員,社員の委任代表者,社長又は総社長,会社の法定代表者。
b) この項 a 号が規定する者の関係者。
c) 親会社の管理者,親会社の管理者を任命する権限を有する者。
d) この項 c 号が規定する者の関係者。

2.会社の名で契約,取引を締結する者は,当該契約,取引の相手方及び当該契約,取引に関連する対象,利益について社員総会の各構成員,監査役に通知し,契約書の案又は予定している取引の主要な内容を添付しなければならない。会社の定款に異なる規定がない場合,社員総会は,通知を受けた日から 15 日以内に,契約,取引を承認又は不承認を決定し,この法律第59 条3項a 号の規定に従って実施しなければならない。契約,取引の当事者と関係を有する社員総会の構成員は,議決の計算に算入することができない。

3.この条第 1 項及び第 2 項の規定に従わずに締結された契約,取引は裁判所の決定に従って無効となり,法令の規定に従って処理される。契約,取引を締結した者,関係する社員及び当該社員の関係者で契約,取引に参加した者は,発生した損害を賠償し,その契約,取引により得た各利益を会社に償還しなければならない。

二名以上有限責任会社(JICA翻訳文引用)

第86 条 会社と関係者との契約,取引

1.会社の定款に異なる規定がない場合,組織が所有する一人社員有限責任会社と以下の者との間の契約,取引は,社員総会又は会社の会長,社長又は総社長及び監査役により承認されなければならない。

a) 会社所有者及び会社所有者の関係者。
b) 社員総会の構成員,会社の会長,社長又は総社長及び監査役。
c) この項b 号が規定する者の関係者。
d) 会社所有者の管理者,その管理者を任命する権限を有する者。

2.会社の名義で契約を締結し,取引をする者は,当該契約,取引に関係する相手方及び利益について社員総会又は会社の会長,社長又は総社長及び監査役に対して,契約書の草案又は取引の主要な内容を添付して通知しなければならない。

3.会社の定款に異なる規定がない場合,社員総会の構成員又は会社の会長,社長,総社長及び監査役は, 契約,取引の承認について通知を受けた日から10 日以内に多数原則,一人一票の原則に従って決定しなければならない。各当事者の関係者は,議決権を有しない。

4.この条第 1 項に規定する契約,取引は,以下の各条件を完全に満たす場合に限り承認される。

a) 契約を締結する又は取引を実施する各当事者が,独立した法主体であり,個別の権利,義務,財産及び利益を有する。
b) 契約又は取引中で使用される価格が,契約の締結又は取引の実施時点の市場価格である。
c) 会社所有者がこの法律第77 条4 項に規定する義務を遵守する。

5.契約,取引がこの条第 1 項,第 2 項,第 3 項及び第4 項の規定を満たさずに締結されたときは裁判所の決定に従って無効となり,法令の規定に従って処理される。契約,取引の当事者である契約,取引の締結者及び関係者は,当該契約,取引の実施により発生した損害について連帯して責任を負い,取得した各利益を会社に償還しなければならない。

6.個人により所有される一人社員有限責任会社と会社所有者又は会社所有者の関係者との間の契約,取引は,会社の個別の書類に記載され,保管されなければならない。

株式会社(JICA翻訳文引用)

第167 条 会社と関係者の間の契約,取引の承認

1.株主総会又は取締役会は,以下の関係者と会社との間の契約,取引を承認する。

a) 会社の普通株式総数の 10 パーセントを超えて保有する株主,組織である株主の委任代表者及びその関係者。
b) 取締役,社長又は総社長及びその関係者。
c) 取締役,監査役,社長又は総社長及び会社のその他の管理者が,この法律第164 条 2 項の規定に従って申告しなければならない企業。
2.取締役会は,この条第1 項の規定に従った各契約,取引,及び直近の財政報告書における企業財産の総額の 35 パーセント又は会社の定款の規定に従ったそれよりも小さな割合又は価額を有する各契約及び取引を承認する。この場合において,契約,取引を締結した会社の代表者は,各取締役,監査役に対し,その契約,取引と関係を有する各対象者について通知しなければならず,その通知には契約書の案又は取引の主要な内容を添付する。取締役会は,会社の定款が異なった期限を定める場合を除き, 通知を受けた日から15 日以内に契約又は取引の承認をする決定をする。当該契約,取引と関連する利益を有する取締役は議決権がない。

3.株主総会は,以下の契約及び取引を承認する。

a) この条第2 項が規定する以外の契約,取引。
b) 会社と議決権付株式総数の51 パーセント以上を所有する株主又はその株主の関係者との間の,直近の財政報告書における企業財産の総額の10 パーセントより大きい価額の消費貸借,財産の売却の契約,取引。

4.この条第3 項に従った契約,取引承認がある場合,契約,取引を締結した会社の代表者は取締役会及び監査役に対し,その契約,取引に関係を有する対象者について通知しなければならず,その通知には,契約書の案又は取引の主要な内容の通知を添付する。取締役会は,株主総会の会合において,契約,取引の案を提出し,若しくは契約,取引の主要な内容について説明し,又は書面により株主の意見を集める。この場合,当該契約,取引の当事者に関連する利益を有する株主は議決権がない。会社の定款が異なる規定を有する場合を除き,この法律第148 条1 項及び4 項の規定に従ってその契約,取引は承認される。

5.この条の規定と異なって締結された契約,取引は裁判所の決定に従って無効であり,法令の規定に従って処理される。契約,取引締結者,関係する株主,取締役又は社長若しくは総社長は,発生した損害を連帯して賠償しなければならず,契約の履行,取引の実施から得た利益を会社に対して償還しなければならない。

6.会社は関連を有する法令の規定に従って関係ある契約,取引を公開しなければならない。

****

これらは一般的な企業の定款には必ず定められていますし、駐在の日本人代表者もいるのだから大丈夫だろう・・・
しかしそれでも、知らぬうちの関連者間取引は十分に起こり得ます。

例えば、新たな顧客に対して自ら登記情報を調べたり、簡単な信用調査を行う業務プロセスはあるかもしれませんが、サプライヤーや業務委託先は従業員に全て任せているのではないでしょうか。部下が英語ベースで上げてきた概要をわざわざ疑うこともないでしょう。
しかし、部下の報告が十分とも限りません。特に、出資者・役員が誰であるかまで見る担当者は多くないでしょう。そもそも、その部下が「関連者」である場合は、意図的にそのような情報は報告しないでしょう。

それに、ベトナム人の親族関係は氏名だけではわかりませんし、いろいろ調べても確定するのは難しく、一定の人物が関連している法人を探し出すとなるともっと難しい作業ですので、悪意ある関連者には容易に与信を獲得できてしまいます。

こうやって、契約が締結できてしまうと・・・特に基本契約ができてしまうと、その後の発注や先方の見積書は担当者ベース・メールベースになり、総会に通されませんので、単価・数量・付帯費用など様々な調整ができてしまいます。場合によっては架空取引も計上できるかもしれません。

そもそも、関連者間取引とならない企業との取引でもバックマージン・インセンティブなどの問題が多々あります。

****

下記は、関連者間取引が、単なる発注先のケースではなく競合会社となった事例です。

・社員総会を有する有限責任会社A社の法定代表者兼社長B氏(日本人)、副社長C氏(ベトナム人)が、会長D氏(日本人)と社員総会に報告せず同業の会社(株式会社)を設立。B氏は同社の5%を保有し法定代表者兼社長に。副社長は同社の44%を保有し副社長に、副社長の夫E氏(ベトナム人)は同社の51%を保有。つまり、A社同様にB氏・C氏が社長・副社長でありオーナーが違う競合会社ができあがりました。

・B氏、C氏は、A社が受注した業務(製造加工)を競合会社に委託し、時間と共に委託範囲・委託額を大きくしていきました(ほぼ再委託)。その際、基本契約では取引単価を決めず、POとインボイス上で取引価格を指定するというものでした。A社の会計長に対しては社長・副社長として指示を出し指定価格のまま精算させました。

・さらに、A社が購入した原材料を競合会社に無償支給しているにかかわらず、競合会社が仕掛品・完成品・役務費用としてインボイス上に記載する価格には、明らかに原材料費も含まれていました。役務費も毎月変動していました。

・これらインボイスのやり取りは決まって毎月末に行われ、物流のタイミングやPOのタイミングに連動していないことから、B氏、C氏が、A社の毎月末のキャッシュ状況を見てできるだけ競合会社に流すために調整していたことがわかりました。

・そもそも、この製造加工はA社で完結できる業務で、委託する必要性はありませんでした。さらに、競合会社には当該製造加工に必要とされる機械設備はなく、技術的な人員もいなかったのです。彼らは、この関連者間取引を通じて、機械設備、技術的な人員も奪い取っていきました(次回以降で触れさせていただきます)。

・そして、あたかも競合会社がA社の「正当な」関連者であるかのように顧客に表現し顧客との製造加工契約の受託者の地位変更に成功したのです。

この事件例は、社員総会の会長が社長を信じ切っていて細かく見ることができていなかったこと、オーナー企業(日本)も皆を信じ、社員総会の会長の報告以上に調べなかったことなども重なって、悪意ある者たちに利用されてしまったケースでした。監査報告書を作成したのは日本でも有名な大手監査法人でしたが、監査報告書の「各関連者」欄には競合会社は載りませんでした((次回以降で触れさせていただきます)。

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次回は上記A社を舞台に展開された数々の不正行為を紹介し、分析します。

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ベトナム企業法(2020年)の第67条、86条、167条などでは、関連者間取引は原則として有限責任会社における社員総会、株式会社の株主総会及び取締役会によって承認されなければなりませんが、悪意ある関連者は、新たな取引・契約がこれら承認の対象ではないかのように欺罔し、自らの権限内に収めます。

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一名有限責任会社(JICA翻訳文引用)

第67 条 社員総会の承認が必要な契約,取引

1.会社と以下の各対象との間の契約,取引は,社員総会により承認されなければならない。
a) 社員,社員の委任代表者,社長又は総社長,会社の法定代表者。
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二名以上有限責任会社(JICA翻訳文引用)

第86 条 会社と関係者との契約,取引

1.会社の定款に異なる規定がない場合,組織が所有する一人社員有限責任会社と以下の者との間の契約,取引は,社員総会又は会社の会長,社長又は総社長及び監査役により承認されなければならない。

a) 会社所有者及び会社所有者の関係者。
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4.この条第 1 項に規定する契約,取引は,以下の各条件を完全に満たす場合に限り承認される。

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第167 条 会社と関係者の間の契約,取引の承認

1.株主総会又は取締役会は,以下の関係者と会社との間の契約,取引を承認する。

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3.株主総会は,以下の契約及び取引を承認する。

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これらは一般的な企業の定款には必ず定められていますし、駐在の日本人代表者もいるのだから大丈夫だろう・・・
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例えば、新たな顧客に対して自ら登記情報を調べたり、簡単な信用調査を行う業務プロセスはあるかもしれませんが、サプライヤーや業務委託先は従業員に全て任せているのではないでしょうか。部下が英語ベースで上げてきた概要をわざわざ疑うこともないでしょう。
しかし、部下の報告が十分とも限りません。特に、出資者・役員が誰であるかまで見る担当者は多くないでしょう。そもそも、その部下が「関連者」である場合は、意図的にそのような情報は報告しないでしょう。

それに、ベトナム人の親族関係は氏名だけではわかりませんし、いろいろ調べても確定するのは難しく、一定の人物が関連している法人を探し出すとなるともっと難しい作業ですので、悪意ある関連者には容易に与信を獲得できてしまいます。

こうやって、契約が締結できてしまうと・・・特に基本契約ができてしまうと、その後の発注や先方の見積書は担当者ベース・メールベースになり、総会に通されませんので、単価・数量・付帯費用など様々な調整ができてしまいます。場合によっては架空取引も計上できるかもしれません。

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下記は、関連者間取引が、単なる発注先のケースではなく競合会社となった事例です。

・社員総会を有する有限責任会社A社の法定代表者兼社長B氏(日本人)、副社長C氏(ベトナム人)が、会長D氏(日本人)と社員総会に報告せず同業の会社(株式会社)を設立。B氏は同社の5%を保有し法定代表者兼社長に。副社長は同社の44%を保有し副社長に、副社長の夫E氏(ベトナム人)は同社の51%を保有。つまり、A社同様にB氏・C氏が社長・副社長でありオーナーが違う競合会社ができあがりました。

・B氏、C氏は、A社が受注した業務(製造加工)を競合会社に委託し、時間と共に委託範囲・委託額を大きくしていきました(ほぼ再委託)。その際、基本契約では取引単価を決めず、POとインボイス上で取引価格を指定するというものでした。A社の会計長に対しては社長・副社長として指示を出し指定価格のまま精算させました。

・さらに、A社が購入した原材料を競合会社に無償支給しているにかかわらず、競合会社が仕掛品・完成品・役務費用としてインボイス上に記載する価格には、明らかに原材料費も含まれていました。役務費も毎月変動していました。

・これらインボイスのやり取りは決まって毎月末に行われ、物流のタイミングやPOのタイミングに連動していないことから、B氏、C氏が、A社の毎月末のキャッシュ状況を見てできるだけ競合会社に流すために調整していたことがわかりました。

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 株式会社イーグルワンエンタープライズ
カブシキガイシャイーグルワンエンタープライズ 株式会社イーグルワンエンタープライズ
ベトナム総合コンサルティング・各種手続き代行・不正対策

ベトナム事業のあらゆる場面を深くサポートするコンサルティング会社で日本法人とベトナム法人があります。
戦略、業務改善、ファイナンシャルアドバイザリー、組織・人事など、官民にて長年の実績があります。
問題提起するだけではなく、法令解釈を述べるだけでもなく、18年間のベトナム「現場経験」に基づいた対処法を提案し、要所での当局対応や書面各種の起案など、日本人がベトナム語で行う会社です。
主なサービス:(1)ベトナムでの企業経営・事業運営の顧問契約(総合コンサルティング)、(2)進出支援・拡張支援、(3)遠隔経営・無人管理、(4)会計税務の内製化、(5)不正対策(リスクマネジメント)、(6)閉鎖撤退支援

●住所地
ハノイ:ハノイ市ドンダー区タイソン通り324番地オリエンタルタワー7階
ホーチミン:ホーチミン市1区レタントン通り6番地 CJビル9階
東京:東京都港区海岸1-1-1-26階

●ホームページ https://eagle1.jp
●連絡先:info@eagle1.jp
●電話:日本 03-3433-5557, ベトナム +84-24-3974-8830
(電話でお問い合わせいただいた内容は全てメールか担当者からの折り返しとなりますので、基本的にはメールでご連絡をお願いします)

国・地域別
ベトナム情報
内容別
ビジネス全般進出設立

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