インドネシアの化粧品市場が盛り上がっている。内需をけん引する上位中間層にとどまらない包括的成長が進んでいるとの見方も出る。首都ジャカルタで6日まで4日間開催された大規模展示会「Xビューティー」を訪れると、各年齢のイスラム教徒(ムスリム)需要などを取り込もうとする各ブランドの熾烈(しれつ)な争奪戦の縮図があった。若者の関心の高まりを受け、10代前半からの需要開拓を図るブランドもある。【小故島弘善、Anita Fildzah、Merliyani Pertiwi】
Xビューティーでワルダの口紅を試す若者=4日、インドネシア・ジャカルタ(NNA)
異彩を放ちつつ、現地で人気なのがハラル(イスラム教の戒律に従ったもの)対応で定評のある地場パラゴン・テクノロジー・アンド・イノベーション(PTI)が立ち上げた各ブランドだ。同社は1999年に同社初の国内ハラル認証を取得。イスラム教徒大衆向けのブランド「ワルダ(Wardah)」(95年~)、プロフェッショナルの「メークオーバー(Make Over)」(2010年~)、若者向けの「エミナ(Emina)」(15年~)などがある。
ワルダの販売員は「20歳以上の全女性がターゲット層だが、10代の人気も高い」と話す。ジャカルタのインドネシア人女性の多くはよく使っているブランドとしてワルダを挙げる。「国産の安心感」「手頃な値段」などが理由だという。
エミナは化粧品を食事に見立ててPR=4日、インドネシア・ジャカルタ(NNA)
エミナはXビューティーで、消費者が気軽に商品を試せる販促活動を展開。商品を食事に見立てた「立食」形式の展示ブースにおけるサンプルの提供や大幅値引きなどを行った。
同イベントを訪れた高校生のインタンさん(17)は「メークオーバーなど国内ブランドの商品が欲しい」と話した。彼女は高校に入学した後にメーキャップを覚え、友人のほぼ全員が何らかの化粧品を使っているという。
世界最大のイスラム教徒人口を抱えるインドネシア市場には、隣国の大手ブランドも注目する。「マレーシアのハラルブランド首位」をうたう「サフィ(Safi)」(インド系ウィプロ・ウンザ・ホールディングスが所有)の販売員は「10代前半から大人まで、購入者層のバランスが取れている」と語った。アンチエイジング商品の需要が特に大きいとの見方を示した。
Xビューティーで商品を売り込む販売員ら=4日、インドネシア・ジャカルタ(NNA)
■市場開拓進む1兆円市場
インドネシア経済の拡大に伴い日用消費財(FMCG)も成長してきた。ただ、英市場調査会社カンターによると、同国の美容商品市場は昨年までの5年間、FMCG市場全体を超える高成長を続けてきた。美容に興味を持ち出す年齢の若年化やオンラインを含む多様な販路開拓などが成長エンジンという。
同社は、インドネシアで美容商品に対する「社会階層を超えた願望の包容」が起こっているとも指摘した。美容商品市場をけん引する上位中間層の割合は5割程度にとどまり、各所得層で需要が高まっている状況だという。
ドイツの調査会社スタティスタによると、インドネシアの美容・パーソナルケア商品市場は今年、97億4,000万米ドル(約1兆4,000億円)となる見通し。向こう5年の年平均成長率は4.33%と見込んでいる。分野別では、パーソナルケア商品が41億米ドルで最大。
国連の2025年世界人口推計(中位推計)によると、5歳階級別でみたインドネシアの今年の女性人口で最も多いのは10代前半。今後10年ごとの見通しでも、同世代が最大の割合を維持していく。

各商品の販路拡大に向けては、美容商品に力を入れるドラッグストアチェーン「ガーディアン」「ワトソンズ」などが店舗数の拡充を続けている。両チェーン店の店舗数は昨年時点で計500店超。インターネット販売と合わせた「オムニチャンネル」活用も進んでいる。
ワトソンズを運営するドゥタ・インティダヤの24年決算は、売上高が前年比33%増の2兆610億ルピア(約180億円)。4年連続の増収で、増収率は実店舗の増加ペースを上回っている。

■来年にはハラル対応義務
インドネシアは来年10月中旬、化粧品や食品などのハラル認証取得を本格的に義務化。輸入販売で一部のブランドに影響が出る可能性がある。
インドネシア中央統計局によると、同国の昨年の化粧品輸入額は前年から微増の7億3,700万米ドルだった。このうち化粧品や日焼け止めなどを含む「美容用、メイク用または肌の手入れ用の調整品」が4億8,700万米ドルで最も多く、「香水類およびオーデコロン類」が1億3,400万米ドルで続く。
現地の競争激化も懸念だ。パーソナルケア大手では昨年、ユニリーバ、マンダムの現地法人の業績がそれぞれ落ち込んだ。美容・パーソナルケア商品市場は欧米系が支配的で、日本、韓国系、地場系なども拡販を図る。「美容を気にするインドネシア人女性は年々増えている」(30代女性)中、需要の取り込み商戦が火花を散らしている。


[資料]インドネシアの女性人口の見通し(7月15日付)
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ワルダの販売員は「20歳以上の全女性がターゲット層だが、10代の人気も高い」と話す。ジャカルタのインドネシア人女性の多くはよく使っているブランドとしてワルダを挙げる。「国産の安心感」「手頃な値段」などが理由だという。
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エミナはXビューティーで、消費者が気軽に商品を試せる販促活動を展開。商品を食事に見立てた「立食」形式の展示ブースにおけるサンプルの提供や大幅値引きなどを行った。
同イベントを訪れた高校生のインタンさん(17)は「メークオーバーなど国内ブランドの商品が欲しい」と話した。彼女は高校に入学した後にメーキャップを覚え、友人のほぼ全員が何らかの化粧品を使っているという。
世界最大のイスラム教徒人口を抱えるインドネシア市場には、隣国の大手ブランドも注目する。「マレーシアのハラルブランド首位」をうたう「サフィ(Safi)」(インド系ウィプロ・ウンザ・ホールディングスが所有)の販売員は「10代前半から大人まで、購入者層のバランスが取れている」と語った。アンチエイジング商品の需要が特に大きいとの見方を示した。
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■市場開拓進む1兆円市場
インドネシア経済の拡大に伴い日用消費財(FMCG)も成長してきた。ただ、英市場調査会社カンターによると、同国の美容商品市場は昨年までの5年間、FMCG市場全体を超える高成長を続けてきた。美容に興味を持ち出す年齢の若年化やオンラインを含む多様な販路開拓などが成長エンジンという。
同社は、インドネシアで美容商品に対する「社会階層を超えた願望の包容」が起こっているとも指摘した。美容商品市場をけん引する上位中間層の割合は5割程度にとどまり、各所得層で需要が高まっている状況だという。
ドイツの調査会社スタティスタによると、インドネシアの美容・パーソナルケア商品市場は今年、97億4,000万米ドル(約1兆4,000億円)となる見通し。向こう5年の年平均成長率は4.33%と見込んでいる。分野別では、パーソナルケア商品が41億米ドルで最大。
国連の2025年世界人口推計(中位推計)によると、5歳階級別でみたインドネシアの今年の女性人口で最も多いのは10代前半。今後10年ごとの見通しでも、同世代が最大の割合を維持していく。

各商品の販路拡大に向けては、美容商品に力を入れるドラッグストアチェーン「ガーディアン」「ワトソンズ」などが店舗数の拡充を続けている。両チェーン店の店舗数は昨年時点で計500店超。インターネット販売と合わせた「オムニチャンネル」活用も進んでいる。
ワトソンズを運営するドゥタ・インティダヤの24年決算は、売上高が前年比33%増の2兆610億ルピア(約180億円)。4年連続の増収で、増収率は実店舗の増加ペースを上回っている。

■来年にはハラル対応義務
インドネシアは来年10月中旬、化粧品や食品などのハラル認証取得を本格的に義務化。輸入販売で一部のブランドに影響が出る可能性がある。
インドネシア中央統計局によると、同国の昨年の化粧品輸入額は前年から微増の7億3,700万米ドルだった。このうち化粧品や日焼け止めなどを含む「美容用、メイク用または肌の手入れ用の調整品」が4億8,700万米ドルで最も多く、「香水類およびオーデコロン類」が1億3,400万米ドルで続く。
現地の競争激化も懸念だ。パーソナルケア大手では昨年、ユニリーバ、マンダムの現地法人の業績がそれぞれ落ち込んだ。美容・パーソナルケア商品市場は欧米系が支配的で、日本、韓国系、地場系なども拡販を図る。「美容を気にするインドネシア人女性は年々増えている」(30代女性)中、需要の取り込み商戦が火花を散らしている。


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