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高いゴルフ料金、日本人悲鳴タイの1.6倍、供給不足に拍車

経済成長でゴルフ人気が高まっているベトナムで、コース料金の高止まりが続いている。「ゴルフ天国」とも言われるほど手ごろな価格でプレーできるタイと比べると、料金は6~7割高く首都ハノイや南部ホーチミン市から日帰りで行けるゴルフ場の選択肢も限られている。中間層のベトナム人ゴルファーの増加で週末は混雑しているコースも多く、円安で遊興費や交際費の天井が低くなった日本人駐在員からは悲鳴が上がっている。【坂部哲生】

休日のゴルフ場でティーショットを放つ日本の駐在員=5日、ホーチミン市

ハノイ周辺のダイライやロンビエンといった人気ゴルフ場の週末の料金は300万~400万ドン(約1万7,000~2万3,000円)。ソンベーなどホーチミン市周辺だと300万ドン台前後とやや割安だが、それでも日本並み、もしくはそれ以上の料金だ。
対してバンコク周辺はといえば、タイの駐在経験者の相場観は2,500~4,000バーツ(約1万1,000~1万8,000円)。明成商会の現地法人・明成ベトナムの社長で、タイでの駐在経験を持つ長谷川賢氏は「タイではチップもベトナムより安く、全体的にコース整備も進んでいる」と話す。
同じ印象はホーチミン市在住の韓国人ビジネスマンも抱く。「タイの方がコース数も多く、サービスも良くて安い」。
ベトナムの割高な料金の背景にあるのが、ゴルフ場の不足だ。ベトナム国家観光局(VNAT)によれば、2020年時点で国内には80カ所のゴルフ場があるが、日本人駐在員がよく利用するようなコースは南北ともせいぜい10カ所程度。対してバンコク周辺には約100カ所あるとされ競争は激しい。
経済成長を背景にゴルフを始めるベトナム人が増えていることもプレー代の高止まりの一因だ。ベトナムのゴルフ人口は23年時点で10万人を突破。世界銀行によれば、同年の1人当たり国内総生産(GDP)は4,300米ドル(約69万円)を超え、かつては富裕層の娯楽だったゴルフが「身近なステータス」として浸透している。週末のゴルフ場や練習場は地元客で混雑する一方だ。
■30年には200カ所に
それでも高まる人気を背景にゴルフ場の新規整備が加速している。VNATによると、18ホール規模のゴルフ場が25年までに80カ所以上、30年までに200カ所に達すると見込まれている。
VNATはゴルフ観光をリゾートやエンタメと結びつけた高付加価値型観光と位置づけ、ゴルファーの観光支出は一般観光客の2~3倍に上ると見積もる。22年に6億米ドルだったゴルフ観光による収益は、2025年には10億米ドルに達し、総観光収入の8~10%に膨らむと試算する。
英系不動産サービス大手サヴィルズ・ベトナムのリサーチ部門ディレクター、ザン・フイン氏はNNAに「現在の料金水準は依然としてタイなど近隣国より高いが、統合型リゾートの増加、空港・インフラ整備、柔軟な会員制度の導入などが進めば、今後は国内外のプレーヤーにとってアクセスしやすく、価格面でも競争力が増す余地がある」と指摘。将来的に、プレー料金を曜日や時間帯に応じて変えたり、平日や閑散期に割引を適用したりする取り組みが広がれば、より幅広い層が手頃にゴルフを楽しめるようになるという。
成熟市場でコストパフォーマンスに優れるタイと、観光振興と外資誘致の一環として高価格戦略を進めるベトナム。ホーチミン市に駐在する日本人ビジネスマンも「タイに比べてプレー代が高く、毎週のゴルフは現実的でない。気軽にラウンドできる環境が整ってほしい」と話す。
ゴルフ場は、オフィスを離れた打ち解けた雰囲気の中で信頼関係を築きやすい。ビジネスやネットワーキングの場としても利用されており、プレー中に商談を進める駐在員も多い。契約書を持参し、ゴルフ場で署名をしてもらう駐在員もいるという。
駐在員を含めた幅広い層が気軽に楽しめる価格帯のコースが今後どれだけ整備されるかが、同国ゴルフ産業の普及と定着の行方を左右しそうだ。

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同じ印象はホーチミン市在住の韓国人ビジネスマンも抱く。「タイの方がコース数も多く、サービスも良くて安い」。
ベトナムの割高な料金の背景にあるのが、ゴルフ場の不足だ。ベトナム国家観光局(VNAT)によれば、2020年時点で国内には80カ所のゴルフ場があるが、日本人駐在員がよく利用するようなコースは南北ともせいぜい10カ所程度。対してバンコク周辺には約100カ所あるとされ競争は激しい。
経済成長を背景にゴルフを始めるベトナム人が増えていることもプレー代の高止まりの一因だ。ベトナムのゴルフ人口は23年時点で10万人を突破。世界銀行によれば、同年の1人当たり国内総生産(GDP)は4,300米ドル(約69万円)を超え、かつては富裕層の娯楽だったゴルフが「身近なステータス」として浸透している。週末のゴルフ場や練習場は地元客で混雑する一方だ。
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それでも高まる人気を背景にゴルフ場の新規整備が加速している。VNATによると、18ホール規模のゴルフ場が25年までに80カ所以上、30年までに200カ所に達すると見込まれている。
VNATはゴルフ観光をリゾートやエンタメと結びつけた高付加価値型観光と位置づけ、ゴルファーの観光支出は一般観光客の2~3倍に上ると見積もる。22年に6億米ドルだったゴルフ観光による収益は、2025年には10億米ドルに達し、総観光収入の8~10%に膨らむと試算する。
英系不動産サービス大手サヴィルズ・ベトナムのリサーチ部門ディレクター、ザン・フイン氏はNNAに「現在の料金水準は依然としてタイなど近隣国より高いが、統合型リゾートの増加、空港・インフラ整備、柔軟な会員制度の導入などが進めば、今後は国内外のプレーヤーにとってアクセスしやすく、価格面でも競争力が増す余地がある」と指摘。将来的に、プレー料金を曜日や時間帯に応じて変えたり、平日や閑散期に割引を適用したりする取り組みが広がれば、より幅広い層が手頃にゴルフを楽しめるようになるという。
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