成立まで秒読み段階に入った労働組合法改正案に対し、韓国の経済団体や海外の商工会議所、企業など経済界から反対する声明が相次いで上がっている。在韓欧州商工会議所(ECCK)が「外資系企業の韓国撤退が進みかねない」と表明するなど、見直しを求める声が広がる。同改正案は違法なストライキにも免責事項を含むなど労働組合の権限を強化する内容が盛り込まれているが、圧倒的な議席数を持つ与党によって可決される公算が大きい。7月に成立した改正商法に続いて、経営環境のリスク要因になりそうだ。
韓国国会・環境労働委員会は29日、与党「共に民主党」など革新派議員の主導で労組法改正案を可決した。同法案は今後、国会に上程されるが、共に民主党は8月4日の国会本会議での可決・成立を目指す方針だ。
同改正案は通称「黄色い封筒法」と呼ばれる。2014年、双竜自動車(現KGモビリティー)の構造調整時に労働者が起こしたストライキに対し、同社は47億ウォン(約5億円)の損害賠償を労組に請求した。その際、ある市民が支援金を黄色い封筒に入れて送ったことに由来している。
骨子は、労働組合によるストや団体行動の権利強化にある。ストによって発生した損害に対して企業の賠償請求を制限するとともに、下請け業者の労働者も元請け業者と交渉することができるようにする内容などが含まれた。
労働組合のナショナルセンター(全国中央組織)の1つである全国民主労働組合総連盟(民主労総)など同法案を支持する側は、「過度な損害賠償訴訟で労組の活動が萎縮するのを防ぎ、下請けや派遣などの非正規労働者の権利は保護されるべきだ」と主張する。
■経済8団体が一斉に懸念表明
労組法改正案は24年8月、当時野党だった共に民主党によって国会本会議で可決されたが、尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領(当時)の拒否権発動によって廃案となった経緯がある。今回の改正案は、当時よりもさらに労組側の権利を拡大するものになっており、経営リスクの増大を懸念する経済界からは反対の声が続々と上がっている。
経済8団体(韓国経済人協会=旧全国経済人連合会、大韓商工会議所、韓国経営者総協会、韓国貿易協会、中小企業中央会、韓国中堅企業連合会、韓国上場会社協議会、コスダック協会)は29日、国会に対して同改正案の見直しを求める共同声明文を発表した。声明では「現在の厳しい経済状況にもかかわらず、労組法改正案が国会で急速に進められていることに対して深い憂慮を通り越し、心痛な心情を禁じ得ない」と強い懸念を示している。
8団体は韓国経済の0%台の成長が予想され、企業の平均営業利益率が5%前後にとどまる中で「7月初めに成立した改正商法に続いて、国会が企業活動を縛る規制法を相次いで打ち出すことになれば、企業に極度の混乱を招きかねない」と強調。難航する米国との関税交渉も挙げながら、「危機克服のために企業が全力を尽くせる環境を整えることに国会が率先して取り組むことを望む」と主張した。
■造船・自動車業に大きな打撃
韓国経営者総協会はまた、労組法の改正が韓国経済の屋台骨である自動車や造船に特に打撃を与えると懸念する。30日には、韓国自動車モビリティー産業協会と韓国造船海洋プラント協会、大韓建設協会などの団体と共同で同改正案に対する反対の立場を改めて示した。自動車や造船などの業種は下請けの比率が高く、労組法の改正が元請け業者の負担増加につながる恐れがあるためだ。
同協会の李東根(イ・ドングン)副会長は共同声明を通じ、「請負いという民法上の実態を否定し、契約の当事者ではない元請けを争議の対象とした改正案は、産業の競争力を低下させる」と指摘した。
自動車や造船などの製造業、建設業は最近、就業者数の減少が止まらない。韓国統計庁によると、今年上半期の製造業の就業者数は月平均8万6,000人、建設業は14万8,000人、それぞれ減った。就業者数全体が18万1,000人増えたのとは対照的だ。
■外資系団体も異例の声明
労組法改正案への反対は国内の経済団体だけにとどまらず、外資系団体からも上がっている。ECCKは28日に、在韓米国商工会議所(AMCHAM)は30日にそれぞれ、同改正案を懸念する立場表明文を発表した。
ECCKは、下請け労働者が契約相手ではなく元請け業者に対しても交渉権を持つことができるようにする内容に対し、「ストの頻発や元請けと下請け間の対立激化につながる」と憂慮を示した。
元請け業者が直接雇用していない下請け労働者に対する刑事責任の対象となり得る内容は「事業者を潜在的な犯罪者として扱うことになり、労働規制による法的リスクに敏感な外資系企業への影響は深刻」と指摘している。その上で「(外資系企業が)最終的に韓国市場からの撤退を選択する可能性もある」とした。
AMCHAMは韓国の経済8団体に強く賛同するとしながら、「団体交渉への参加を拒否した企業経営者の法的責任を拡大する内容」に懸念を表明。改正案が「韓国で事業を行う米国企業を含むグローバル企業にとって、運営上の負担を大幅に増大させる可能性がある」とも指摘した。
AMCHAMのジェームズ・キム会頭は、声明を通じて「規制の予測不可能性は韓国における外資系企業の最大の課題の1つ。改正案はその不確実性をさらに高め、結果的に韓国の国際競争力を損なう恐れがある」とコメントした。

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同改正案は通称「黄色い封筒法」と呼ばれる。2014年、双竜自動車(現KGモビリティー)の構造調整時に労働者が起こしたストライキに対し、同社は47億ウォン(約5億円)の損害賠償を労組に請求した。その際、ある市民が支援金を黄色い封筒に入れて送ったことに由来している。
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■経済8団体が一斉に懸念表明
労組法改正案は24年8月、当時野党だった共に民主党によって国会本会議で可決されたが、尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領(当時)の拒否権発動によって廃案となった経緯がある。今回の改正案は、当時よりもさらに労組側の権利を拡大するものになっており、経営リスクの増大を懸念する経済界からは反対の声が続々と上がっている。
経済8団体(韓国経済人協会=旧全国経済人連合会、大韓商工会議所、韓国経営者総協会、韓国貿易協会、中小企業中央会、韓国中堅企業連合会、韓国上場会社協議会、コスダック協会)は29日、国会に対して同改正案の見直しを求める共同声明文を発表した。声明では「現在の厳しい経済状況にもかかわらず、労組法改正案が国会で急速に進められていることに対して深い憂慮を通り越し、心痛な心情を禁じ得ない」と強い懸念を示している。
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■造船・自動車業に大きな打撃
韓国経営者総協会はまた、労組法の改正が韓国経済の屋台骨である自動車や造船に特に打撃を与えると懸念する。30日には、韓国自動車モビリティー産業協会と韓国造船海洋プラント協会、大韓建設協会などの団体と共同で同改正案に対する反対の立場を改めて示した。自動車や造船などの業種は下請けの比率が高く、労組法の改正が元請け業者の負担増加につながる恐れがあるためだ。
同協会の李東根(イ・ドングン)副会長は共同声明を通じ、「請負いという民法上の実態を否定し、契約の当事者ではない元請けを争議の対象とした改正案は、産業の競争力を低下させる」と指摘した。
自動車や造船などの製造業、建設業は最近、就業者数の減少が止まらない。韓国統計庁によると、今年上半期の製造業の就業者数は月平均8万6,000人、建設業は14万8,000人、それぞれ減った。就業者数全体が18万1,000人増えたのとは対照的だ。
■外資系団体も異例の声明
労組法改正案への反対は国内の経済団体だけにとどまらず、外資系団体からも上がっている。ECCKは28日に、在韓米国商工会議所(AMCHAM)は30日にそれぞれ、同改正案を懸念する立場表明文を発表した。
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AMCHAMは韓国の経済8団体に強く賛同するとしながら、「団体交渉への参加を拒否した企業経営者の法的責任を拡大する内容」に懸念を表明。改正案が「韓国で事業を行う米国企業を含むグローバル企業にとって、運営上の負担を大幅に増大させる可能性がある」とも指摘した。
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