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「ベトナムの味」科学で解明タケショー、エースコックなどと

食品加工用の調味料や食品素材などを手がけるタケショー(新潟市)は、日本人とベトナム人の「味」の感じ方や表現、嗜好(しこう)の違いを比較し、両国の食文化における類似性や相違点を明らかにする共同研究を開始した。研究には、ベトナムの即席麺最大手エースコックベトナムに加え、東京大学や新潟大学、ベトナムのカントー大学が参画する。タケショーの田中利直社長はNNAのインタビューに応じ、「日本人とベトナム人の味覚の違いを学術的に説明できるようにすることで、日系食品メーカーのベトナム進出支援などにつなげたい」と述べた。

タケショーはベトナムで乾燥粉末調味料やライスパウダーなどを開発している(同社提供)

食品メーカーを主な顧客にするタケショーは、味や香り、食感といった要素を五感による評価と理化学機器による科学的分析の両面から捉える「おいしさを科学する」取り組みを推進している。味や香りといった要素を数値化し、人が食べた際にどう感じるかとの相関性を検証することで、味の再現性や商品の信頼性の向上を目指している。
日本人とベトナム人の味覚の違いに関する研究の着想のきっかけは、カントー大学の学生を受け入れたインターンシッププログラムだ。日本人学生とインターン生それぞれにオレンジジュースなどを飲んでもらったところ、日本とベトナムでは味の好みに明確な違いがあった。その違いを解明することで、食品の開発に役立つ知見を得られるのではないかと考えたという。
タケショーはこれまで、大学や研究機関、食品企業に対して、理化学機器や試薬の提供に加え、分析・評価の支援を行ってきた。今回の共同研究でも、これらの知見を生かし、日越両国における味覚の違いを科学的に解明することを目指す。研究には、タケショーの現地法人タケショーフードベトナムも参加する。
田中社長は、カントー大学の学生の協力も得ることで味覚研究に取り組む方針。「味の感じ方は文化に左右されるため、現地の感覚を取り入れた検証が不可欠」と語った。
■メコンデルタの食材を有効活用
今回の共同研究は、タケショーが2018年にカントー大学と結んだ包括的な連携の一環でもある。両者は19年から、メコンデルタ地域の農水産資源の活用に向けた共同研究を進めてきた。メコンデルタは気候変動や塩害の影響を受けやすく、豊富な農水産資源の持続可能な形での開発を目指す取り組みをカントー大学が主導しており、タケショーも研究に加わっている。
カントー大学との共同研究の成果としては、加工工場で不要になったエビの頭部など副産物を活用した乾燥粉末調味料や、ベトナム米を原料にした高粘度の機能性ライスパウダーの開発が挙げられる。これらは「MillGlobe(ミルグローブ)」という自社ブランドですでに商品化し、せんべいやふりかけ、パン生地などに使われている。田中社長は、「規格外の農産物をパウダーの原料として活用することで、農家にも喜ばれている」と語った。
今年2月、イオンベトナム、カントー大学とも、メコンデルタとベトナムの持続可能な発展に大きく貢献することを目的とする合意を交わした。地域素材の個性を生かした商品づくりと、現地の地場産業との共生を視野に入れ取り組んでいく。

タケショーの田中社長はベトナム人の味覚の解明に力を入れる(同社提供)

田中社長は「引き続きカントー大学との共同研究を通じてメコンデルタの農水産資源の高付加価値化に取り組むとともに、『おいしさを科学する』を商品開発の実務に落とし込むことで、地元食品会社の競争力強化に貢献していきたい」と力を込めた。

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日本人とベトナム人の味覚の違いに関する研究の着想のきっかけは、カントー大学の学生を受け入れたインターンシッププログラムだ。日本人学生とインターン生それぞれにオレンジジュースなどを飲んでもらったところ、日本とベトナムでは味の好みに明確な違いがあった。その違いを解明することで、食品の開発に役立つ知見を得られるのではないかと考えたという。
タケショーはこれまで、大学や研究機関、食品企業に対して、理化学機器や試薬の提供に加え、分析・評価の支援を行ってきた。今回の共同研究でも、これらの知見を生かし、日越両国における味覚の違いを科学的に解明することを目指す。研究には、タケショーの現地法人タケショーフードベトナムも参加する。
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■メコンデルタの食材を有効活用
今回の共同研究は、タケショーが2018年にカントー大学と結んだ包括的な連携の一環でもある。両者は19年から、メコンデルタ地域の農水産資源の活用に向けた共同研究を進めてきた。メコンデルタは気候変動や塩害の影響を受けやすく、豊富な農水産資源の持続可能な形での開発を目指す取り組みをカントー大学が主導しており、タケショーも研究に加わっている。
カントー大学との共同研究の成果としては、加工工場で不要になったエビの頭部など副産物を活用した乾燥粉末調味料や、ベトナム米を原料にした高粘度の機能性ライスパウダーの開発が挙げられる。これらは「MillGlobe(ミルグローブ)」という自社ブランドですでに商品化し、せんべいやふりかけ、パン生地などに使われている。田中社長は、「規格外の農産物をパウダーの原料として活用することで、農家にも喜ばれている」と語った。
今年2月、イオンベトナム、カントー大学とも、メコンデルタとベトナムの持続可能な発展に大きく貢献することを目的とする合意を交わした。地域素材の個性を生かした商品づくりと、現地の地場産業との共生を視野に入れ取り組んでいく。[caption id="attachment_27985" align="aligncenter" width="620"]タケショーの田中社長はベトナム人の味覚の解明に力を入れる(同社提供)[/caption]
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