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SCの販売が客足に比例せず今年上期、消費に慎重な層拡大

中国のショッピングセンター(SC)業界で、客足が増える中でも販売額が伸び悩む現状が浮き彫りになっている。業界団体の調査によると、今年上半期(1~6月)に来場者数が増えたSCは全体の9割に迫ったが、増収を記録したSCは7割止まり。景気が思った以上に上向かない中、消費者の平均消費額が減っている上、“ウインドーショッピング”にとどめて消費をしない層も一定数いると考えられる。
中国チェーンストア業界団体の中国連鎖経営協会(CCFA)が7月、会員のSC運営企業を対象に、今年上半期の運営状況に関する調査を実施した。調査企業数は不明。
今年上半期の来場者数を尋ねる設問では、約89%が「前年同期から増加」したと答えた。このうち「5~10%の増加」が最大比率の34.3%で、「20%以上」は20.0%、「10~15%」は12.9%となり、全体として客足が好調に推移した。減少した約9%のSCも全て10%未満の減少率だった。
客足が伸びる一方、販売額に反映されない状況も生まれた。上半期に増収となったSCは全体の約73%。うち「5~10%の増収」は31.4%、「5%未満の増収」は17.1%となり、2項目が過半を占めた。減収の比率は24%を超え、「10~15%の減収」は5.7%で、「20%以上の減収」も1.4%あった。
客単価も不振で、「客単価が低下した」と答えたSCは過半の54%。来場者のうち実際に商品などを購入した人の比率を指す購買率は、「低下」(37.1%)が「上昇」(32.9%)を上回った。
足元の景気と今後の経済見通しがともに目立って改善せず、財布のひもを締める市民が増えている現状を反映した。各地で猛暑が続く中、快適に涼みながら“娯楽”としてウインドーショッピングを楽しむ層が増えているとも考えられる。
「SCは安定した客足が期待できるものの、小売り・サービス業者は入居を検討するSCが実際に消費されているかどうかなどを見極めてから出店を決定する必要がある」との識者の声もある。
■空室率下落も圧力拡大
SCの空室率は、「上昇」が27%、「下落」が39%。市場全体では下落傾向を示し、店舗入居に関する問い合わせがほぼ半数のSCで増えている一方で、「入居ブランドの淘汰(とうた)が加速し、入居を決めるまでのブランド側の時間が以前よりも長くなっている」と問題点を指摘。SC運営会社に対する圧力が強まっていると分析した。
ただ、協会は賃料収入が大幅に増えているSCも多く、従来の店舗賃料だけでなく、空いている通路や中庭などを活用した販促イベントの開催やポップアップストア(期間限定店)の誘致強化が背景にあると説明した。
運営コストは約半数のSCが減少したと回答。コスト削減に向けた対策が奏功した形だ。
■「平日買い物せず」
CCFAと同様の傾向を示す調査結果もある。
商業不動産サイトの贏商網が全国208カ所のSCを対象に調べた調査報告によると、調査対象となったSCの今年上半期の来場者数は1日当たり平均で2万6,700人となり、前年同期から14.1%増加。来場者数は過去最高の水準を記録した。ただ伸び率は前年同期(約23%)から鈍化した。
四半期ベースでは、第1四半期(1~3月)は前年同期比12.6%増の2万5,900人、第2四半期(4~6月)は15.8%増の2万7,500人だった。気温が上がるにつれ、来場者数が増えた。
上半期の来場者のうち、1級都市(沿海部4大都市)に位置するSCは1日当たり平均3万6,000人。グレード別では、超高級SCが6割以上伸びて3万7,000人、高級SCは約5割増の4万1,000人の規模だった。
一方、贏商網は来場者の伸びが販売に反映されていないことを強調した。SC側は6月時点で、上半期の販売額が3~5%の伸びになると予測していることを紹介し、「消費者が休日に外出して買い物をする傾向が強まっており、平日の消費意欲が減退している」と指摘。ただ休日の客足が伸びても消費への効果は限定的だとの見方を示した。

中国のSC業界は、客足が増える中でも販売額にそのまま反映されていない現状が浮き彫りとなった。景気が思った以上に上向かない中、消費に慎重な市民が増えていると考えられる=上海市

■情緒価値に商機
下半期(7~12月)の見通しを楽観するSCが多い。
CCFAの調査では、下半期の来場者数が増加するとの見方は8割を占め、販売が増えると見通したのは約69%だった。協会は販売減少の見方が10%にとどまったことを踏まえ、下半期の市況を楽観視するSCが多いと分析した。
贏商網は、「情緒価値(商品、サービスを購入・使用した際に感じる満足感や高揚感)」に重きを置く消費者が増える中、複合的な機能を持つSCだけが実店舗で唯一「情緒消費」を満たすことのできる存在だとも指摘。アニメや漫画といった「二次元」コンテンツを中心とするSCは、上半期の1日当たり平均の来場者数が6万5,000人を超え、業界平均の2倍以上になったと説明した。

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中国チェーンストア業界団体の中国連鎖経営協会(CCFA)が7月、会員のSC運営企業を対象に、今年上半期の運営状況に関する調査を実施した。調査企業数は不明。
今年上半期の来場者数を尋ねる設問では、約89%が「前年同期から増加」したと答えた。このうち「5~10%の増加」が最大比率の34.3%で、「20%以上」は20.0%、「10~15%」は12.9%となり、全体として客足が好調に推移した。減少した約9%のSCも全て10%未満の減少率だった。
客足が伸びる一方、販売額に反映されない状況も生まれた。上半期に増収となったSCは全体の約73%。うち「5~10%の増収」は31.4%、「5%未満の増収」は17.1%となり、2項目が過半を占めた。減収の比率は24%を超え、「10~15%の減収」は5.7%で、「20%以上の減収」も1.4%あった。
客単価も不振で、「客単価が低下した」と答えたSCは過半の54%。来場者のうち実際に商品などを購入した人の比率を指す購買率は、「低下」(37.1%)が「上昇」(32.9%)を上回った。
足元の景気と今後の経済見通しがともに目立って改善せず、財布のひもを締める市民が増えている現状を反映した。各地で猛暑が続く中、快適に涼みながら“娯楽”としてウインドーショッピングを楽しむ層が増えているとも考えられる。
「SCは安定した客足が期待できるものの、小売り・サービス業者は入居を検討するSCが実際に消費されているかどうかなどを見極めてから出店を決定する必要がある」との識者の声もある。
■空室率下落も圧力拡大
SCの空室率は、「上昇」が27%、「下落」が39%。市場全体では下落傾向を示し、店舗入居に関する問い合わせがほぼ半数のSCで増えている一方で、「入居ブランドの淘汰(とうた)が加速し、入居を決めるまでのブランド側の時間が以前よりも長くなっている」と問題点を指摘。SC運営会社に対する圧力が強まっていると分析した。
ただ、協会は賃料収入が大幅に増えているSCも多く、従来の店舗賃料だけでなく、空いている通路や中庭などを活用した販促イベントの開催やポップアップストア(期間限定店)の誘致強化が背景にあると説明した。
運営コストは約半数のSCが減少したと回答。コスト削減に向けた対策が奏功した形だ。
■「平日買い物せず」
CCFAと同様の傾向を示す調査結果もある。
商業不動産サイトの贏商網が全国208カ所のSCを対象に調べた調査報告によると、調査対象となったSCの今年上半期の来場者数は1日当たり平均で2万6,700人となり、前年同期から14.1%増加。来場者数は過去最高の水準を記録した。ただ伸び率は前年同期(約23%)から鈍化した。
四半期ベースでは、第1四半期(1~3月)は前年同期比12.6%増の2万5,900人、第2四半期(4~6月)は15.8%増の2万7,500人だった。気温が上がるにつれ、来場者数が増えた。
上半期の来場者のうち、1級都市(沿海部4大都市)に位置するSCは1日当たり平均3万6,000人。グレード別では、超高級SCが6割以上伸びて3万7,000人、高級SCは約5割増の4万1,000人の規模だった。
一方、贏商網は来場者の伸びが販売に反映されていないことを強調した。SC側は6月時点で、上半期の販売額が3~5%の伸びになると予測していることを紹介し、「消費者が休日に外出して買い物をする傾向が強まっており、平日の消費意欲が減退している」と指摘。ただ休日の客足が伸びても消費への効果は限定的だとの見方を示した。
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