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革新・技術通じて国の成長推進施政方針演説、企業のAI導入支援

シンガポールのローレンス・ウォン首相は17日夜に実施した施政方針演説(ナショナルデー・ラリー)で、同国は今「新しい章」に進んでいく時だと言明。米相互関税など世界情勢の先行きが不透明な中、国が成長を続けるにはイノベーションとテクノロジーの振興が重要だと強調した。中小企業を含む企業全体で人工知能(AI)を導入できるよう支援するなどして、生産性向上や海外からの質の高い投資の誘致を目指す。来年にも超高齢社会を迎えると見込まれる中、高齢者が健康寿命を延ばせるよう支援することを強調した。

シンガポールのローレンス・ウォン首相は施政方針演説(ナショナルデー・ラリー)で、米相互関税など世界情勢の先行きが不透明な中、国が成長を続けるにはイノベーションとテクノロジーの振興が重要だと強調した=シンガポール中心部(NNA撮影)

ウォン首相は施政方針演説で、「現在の世代が結束し、これまで国の基礎を築いてくれた世代から引き継いでシンガポールを『新しい章』に進めていく時だと」話した上で、「経済」「若者」「高齢者」「シンガポール人の将来のプラン」「シンガポールの精神」の5つについて政策を説明した。
経済については「世界は現在、乱気流に直面しているが、シンガポールは傍観者でいてはいけない。自分たちの運命は自分たちで決める」とした上で米トランプ政権の相互完全について言及。「シンガポールは世界一律の基本関税の最低税率10%に据え置かれたが、米国はいつ基本税率を引き上げるか分からず安心することはできない。一部の業種が高い関税の影響を受けるかもしれない。今分かっているのは、世界がさらなる貿易障壁に直面し、シンガポールのように小さく開かれた経済を持つ国は圧迫感を感じるということだ」と述べた。
また「国際情勢などの外部環境の急速な変化は一時的なものではなく、世界経済がさらに複雑化するおそれがあり、シンガポールは新たな未来のブループリント(青写真)を提示する必要性がある」と指摘。ガン・キムヨン副首相兼貿易産業相が部会長を務め、国内企業や労働者などへの支援策を検討する「シンガポール経済回復(レジリエンス)タスクフォース(作業部会、SERT)」が今後のシンガポール経済の戦略的な政策を見直し、経済の安定性、企業への支援を推進していくことも強調した。
さらに国が取り組むべき最優先事項としてイノベーションとテクノロジーの振興を挙げ、国内で生産性を向上させ、生活の質を高めるためにこれらが必要だとの見解を示した。
イノベーションについては、AIドリブンの時代の大きな可能性についても言及。現在使われているAIは潜在的な能力の氷山の一角であり、経済活動の中で生産性アップや新たな価値の創造にAIを活用することが本当の「ゲームチェンジャー」になるとし、大企業を含む全ての企業がAIの恩恵を受けられるとして、政府が今後、中小企業向けを中心としたAI導入支援策を強化する意向を示した。
また「一昔前のコンピューターやインターネットのように、今後はAIがわれわれの時代のテクノロジーを定義する」と述べ、AI活用を強化することでシンガポールが海外からより質の高い投資を誘致し、より良い職の創出につながると強調した。
AIが既存の職種を奪う恐れがあるとの懸念が出ている点については、「すぐに最先端技術を身につけてほしいと言っているわけではない。労組や労働者とも連携しながら業務・職種の見直し、労働者の技能向上を支援していく」と説明。国民の就職を支援する政策を強化する一環として、コミュニティー開発協議会(CDC)が地域レベルで中小企業を中心とした求人情報を提供する新たなジョブマッチング・サービスを導入する計画も明らかにした。
また労働者の技能向上支援の一環として、政府のキャリア向上支援策「スキルズ・フューチャー」の研修で助成金の支給対象となるコースを拡大したり、研修内容を拡充したりする。
シンガポールで進行している高齢化社会にも言及。ウォン首相によると、1965年の独立から50年となる2015年には人口全体に占める65歳以上の割合は約13%だったが、独立後60年の今年は約20%、26年には21%を超えシンガポールは超高齢社会に突入する。今後10年では25%となる見込みだ。国民の寿命が延びる中、高齢者が健康寿命を延ばせるよう政府が最新技術も活用しながら全面的に支援したいと話した。
シンガポールでは昨年5月、20年ぶりに首相が交代し、ウォン氏がリー・シェンロン前首相から首相職を引き継いだ。ウォン氏が施政方針演説を行うのは今回が2回目、今年5月に行われ与党・人民行動党(PAP)が圧勝した総選挙後では初となる。
今年のナショナルデー・ラリーは、昨年と同様に中部アンモキオの技術教育研究所(ITE)で行われた。

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経済については「世界は現在、乱気流に直面しているが、シンガポールは傍観者でいてはいけない。自分たちの運命は自分たちで決める」とした上で米トランプ政権の相互完全について言及。「シンガポールは世界一律の基本関税の最低税率10%に据え置かれたが、米国はいつ基本税率を引き上げるか分からず安心することはできない。一部の業種が高い関税の影響を受けるかもしれない。今分かっているのは、世界がさらなる貿易障壁に直面し、シンガポールのように小さく開かれた経済を持つ国は圧迫感を感じるということだ」と述べた。
また「国際情勢などの外部環境の急速な変化は一時的なものではなく、世界経済がさらに複雑化するおそれがあり、シンガポールは新たな未来のブループリント(青写真)を提示する必要性がある」と指摘。ガン・キムヨン副首相兼貿易産業相が部会長を務め、国内企業や労働者などへの支援策を検討する「シンガポール経済回復(レジリエンス)タスクフォース(作業部会、SERT)」が今後のシンガポール経済の戦略的な政策を見直し、経済の安定性、企業への支援を推進していくことも強調した。
さらに国が取り組むべき最優先事項としてイノベーションとテクノロジーの振興を挙げ、国内で生産性を向上させ、生活の質を高めるためにこれらが必要だとの見解を示した。
イノベーションについては、AIドリブンの時代の大きな可能性についても言及。現在使われているAIは潜在的な能力の氷山の一角であり、経済活動の中で生産性アップや新たな価値の創造にAIを活用することが本当の「ゲームチェンジャー」になるとし、大企業を含む全ての企業がAIの恩恵を受けられるとして、政府が今後、中小企業向けを中心としたAI導入支援策を強化する意向を示した。
また「一昔前のコンピューターやインターネットのように、今後はAIがわれわれの時代のテクノロジーを定義する」と述べ、AI活用を強化することでシンガポールが海外からより質の高い投資を誘致し、より良い職の創出につながると強調した。
AIが既存の職種を奪う恐れがあるとの懸念が出ている点については、「すぐに最先端技術を身につけてほしいと言っているわけではない。労組や労働者とも連携しながら業務・職種の見直し、労働者の技能向上を支援していく」と説明。国民の就職を支援する政策を強化する一環として、コミュニティー開発協議会(CDC)が地域レベルで中小企業を中心とした求人情報を提供する新たなジョブマッチング・サービスを導入する計画も明らかにした。
また労働者の技能向上支援の一環として、政府のキャリア向上支援策「スキルズ・フューチャー」の研修で助成金の支給対象となるコースを拡大したり、研修内容を拡充したりする。
シンガポールで進行している高齢化社会にも言及。ウォン首相によると、1965年の独立から50年となる2015年には人口全体に占める65歳以上の割合は約13%だったが、独立後60年の今年は約20%、26年には21%を超えシンガポールは超高齢社会に突入する。今後10年では25%となる見込みだ。国民の寿命が延びる中、高齢者が健康寿命を延ばせるよう政府が最新技術も活用しながら全面的に支援したいと話した。
シンガポールでは昨年5月、20年ぶりに首相が交代し、ウォン氏がリー・シェンロン前首相から首相職を引き継いだ。ウォン氏が施政方針演説を行うのは今回が2回目、今年5月に行われ与党・人民行動党(PAP)が圧勝した総選挙後では初となる。
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