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香港にある資産の日本人の相続手続き(Probate プロベイト)

・日本在住者ですが、香港の銀行(HSBC銀行・シティ銀行・恒生銀行)に口座があった。
・香港法人の株主が亡くなった。
・主人が駐在中に亡くなった。
日本の銀行口座や金融機関であれば、遺言書があれば遺言書に従い、遺言書が無ければ、相続人同士で遺産分割協議を行い、遺産分割協議書により金融機関からお金を引き出すことが可能です。その一方、香港では例え相続争いがなかったとしても、日本での遺産分割協議書(例え翻訳されていたとしても)は全く意味がなく、15万香港ドル以上の資産が香港にある場合は、必ず香港の裁判手続き(プロベイト)が必要となります。香港にある預貯金、不動産、法人等の資産は、必ず、裁判所の許可を受けなければ移動や譲渡することが一切できません。香港人が香港で亡くなった案件と異なり、香港に資産がある日本人が亡くなられた場合、国がまたがるため、法律と言葉の壁とギャップがあり非常に面倒な手続きとなります。
当事務所で承った印象的なケースは以下の通りです。

日本で弁護士にお願いしたが、らちがあかないので、香港まで飛んで来たケース

東京で弁護士に依頼したものの、銀行に問い合わせて必要そうな戸籍謄本などを翻訳し、公証まではしてくれたものも、その後放置され…。という感じの様でした。仕方なく香港まで飛んで来て銀行に問い合わせたところ、香港人弁護士を紹介されたのですが、その弁護士は日本語が分からないため日本語が分かるアンディ弁護士に回ってきました。子供がお亡くなりになり悲しんでいる間もなく、杖をつきながらご夫婦でいらっしゃいました。残念ながら、日本の弁護士に用意された書類は、香港の裁判所で認められるものではありませんでしたので、再度、すべての手続きがやり直しとなりました。

取締役および株主を務めていた方が亡くなられたケース

その手続きの複雑さからか2件の香港の法律事務所が投げ出し、3年近く相続手続きに時間がかかっていました。弊事務所は、会社側の弁護士として雇われたのですが、相続手続きがなかなか終わらないので、その間のビジネス運営にも支障をきたすレベルでした。
上記の様に、香港に資産がある方がお亡くなりになった場合は、たとえ日本在住の日本人であったとしても、香港にある資産分の相続手続きは香港の裁判所で行われることになります。裁判所でプロベイト(Probate)という手続きが必要であり、この手続きは、相続人か香港法の弁護士(ソリスター)しか認められていません。

プロベイト(Probate=検認裁判)とは?

日本の場合は、被相続人が亡くなった時点で、被相続人の財産が相続人全員の共有となり、相続人間の合意や遺言書の内容に基づき相続人全員の共同作業により相続財産の分配がなされます。一方、英国法の流れを受け継ぐ国々では、相続開始時点で資産が凍結隣、遺言執行人や遺産管理人が管理する形となります。遺言書の有効性の確認、相続人の確定などを遺産承弁署からの審問に答え疑問がなくなると、このプロベートが完了してようやく遺産を動かすことができます。
ちなみにプロベイトが原則必要となる主な国や地域は、英国、米国、シンガポール、オーストラリア、ニュージーランドなどです。

A 本拠地(ドミサイルDomicile)

相続手続きを始める前に、故人の本拠地(Domicile)がどこかを考える必要があります。香港のように英米法の国では複数の国籍を持つ人が多く、故人のドミサイルがどこかは、仕事、居住実態、家族など様々な要素から検討する必要があります。

なお、不動産については、財産の所在地の法律が適用されます。そのため日本人が香港に不動産を所有していた場合は、香港の相続法が適用となりますが、現金や株などの流動資産については、ドミサイルの相続法が適用されます。

B 遺言書の有無

法的に有効な遺言書があり亡くなった場合は、有遺言死亡者(Testate)、遺言なしに亡くなった場合は無遺言死亡者(Intestate)です。遺言の有無に関わらずプロベイトの手続きは必要となります。なお、遺言書がある方が、相続手続きが簡単に思われるかもしれませんが、そうとは言えません。寧ろ、香港法に則っていない形式での遺言書の場合は、寧ろ、遺言が有るからこそトラブルとなっているケースが多々有るようですので注意が必要です。

① 遺言がある場合
遺言がある場合には、相続手続きを行う執行者や相続を受け取ることが出来る受益者などすべて遺言に従うことになります。万が一遺言がいくつか存在する場合には、原則として最後に作成されたものが有効な遺言となります。
– きちんと執行者(Executor)を委任したかどうか。
– 死亡後に自分の資産を処分させたい意思や意図をはっきりさせたかどうか。
の2点を合理的な疑いがないほど明確である(beyond reasonable doubt)基準(イコール刑事と同様のレベル)まで裁判所に求められます。

遺言書の内容は、以下を考慮する必要があります
– きちんと執行者を委任したかどうか。
– 委任された執行者は遺言の義務を果たしてくれるかどうか。
– この遺言が最後のものかどうか。つまり、現在の遺言の中に、以前作成した遺言をはっきり取り消す条文があるかどうか。
– いつ作成したか。婚前か婚姻後か。法律によると婚姻という行動は自動的に婚前の遺言を無効にさせる。
– 自分の資産を死んだ後に矛盾がなく、意味不明な部分がないか。あった場合は、その意味不明な部分をはっきりさせないと裁判所からの許可が下りないリスクがある。
– 残余資産を全て処分する旨の条文があるかどうか。もしない場合は、一部は無遺言相続となるリスクがある。
死亡日が1995年11月3日以降の遺言は、必ず以下の法的格式が必要となります。
– 書面で結ぶこと
– 遺言者の立会署名
– 署名は必ず2名の立会が必要で、その立会人も署名する必要がある。

有効な遺言がある場合、その遺言で遺言執行人に指名された者が、裁判所に申請し、裁判所からの様々な審問や疑問に疑いのないレベルまで答えるとプロベイトの授与書(Grant Of Probate)が得られ香港内にある全ての相続資産を動かし、相続人に分配する責任を負います。
日本において、公正証書遺言や遺言書情報証明書などの形式で遺言書を残された方の案件も受任しています。日本法に従い作成された遺言書は香港でも有効です。しかしながら、日本の公正証書遺言などの遺言書は、香港で求められている上記の条件をまずは満たしていないため、もし、香港に資産をお持ちであれば、香港の資産分は、香港法の形式に従った形で遺言書を日本の遺言書とは別に作成されることをオススメします。これは非常に重要で貴重なアドバイスです。

② 遺言がない場合
遺言がない場合には、執行者や受益者は法律の定めに従って決定することになります。圧倒的に日本人で多いパターンは、遺言書がなくお亡くなりになるパターンです。ご主人がお亡くなりになった場合は、配偶者である妻が遺産管理人(Administrator)であり、且つ、受益者になります。
遺言がない場合には、以下の順番で遺産管理人となります。
a 配偶者或いは1971年までの間に内縁の妻または夫であった者(1971年までは内縁の妻または夫に対して法的な立場が認められていました。)
b 子供或いは内縁の妻または夫との間の子供(子供が先に亡くなっている場合にはその子供の子供、つまり孫)
c 親
d兄弟姉妹

遺言がない場合は、法律で定められた優先順位により遺産管理人が裁判所に申請し、裁判所からの様々な審問や疑問に疑いのないレベルまで答えると遺産管理上命令書(Letter of Administration)が得られ、香港内にある全ての相続資産を動かし、相続人に分配する責任を負います。
また、未成年の相続人がいる場合は、未成年者の利益保護のために遺産管理人が2名以上必要となります。

③ 遺産管理(遺言管理)
①・②のコンビネーション つまり、遺言があったものの、
– 遺言の中に誰が執行人(Executor)であるのかの記載がない
– 或いは、遺言で指定された執行人が管理する権利を放棄した
– 或いは、該当執行人が遺言人より先に亡くなった
– 執行人が生きているものの健康精神的に執行人としての義務を果たすことが不可能な状態などの場合です。

C 死亡地

香港、日本或いは他の外国でお亡くなりになったのか。により必要な書類は異なります。 ドミサイルを日本とした場合には、日本の法律も絡みます。私が依頼を受けた場合は、香港の裁判所で求められる内容と細かな形式に基づいた日本法の意見書を作成し、日本法の弁護士に内容を確認してもらい公証してもらいます。香港のプロベイト裁判所は、かなり形式に細かく、担当者によって毎回異なる質問や補正が求められたりします。香港にとって外国人である日本人の相続手続きに慣れていない弁護士だと度々やり直しさせられその度に公証費用が発生してもおかしくありません。 日本人で死亡地が日本や香港以外の場合は、全ての地域が異なるために更に相続手続きが難しくなります。

D 相続税

2006年2月11日以降の死亡であれば香港の相続税は必要ありません。もちろん日本居住者や日本の財産(*詳細は表を参照)は、日本で相続税が発生します 。 被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10ヶ月以内に申告納税が義務付けられており、遅れると延滞税や加算税まで上乗せして支払う必要があります。全世界に資産がある資産家の方は、相続税の計算のためにも各国の資産を確認する必要があります。 銀行や証券会社は、守秘義務のために、名義人以外の例え相続人からの問い合わせであってもなかなか答えてくれません。その場合は、香港の代理弁護士として香港の相続資産の調査や手続きに関してはお任せください。相続税に関しては、日本の税理士の中でも、海外相続の経験がある税理士に確認された方が良く、必要があればご紹介致します。
(国税庁HPにより抜粋)

上記の表中、居住無制限納税義務者または非居住無制限納税義務者の区分に該当する相続人が相続または遺贈により取得した財産については、国内財産および国外財産にかかわらず、すべて課税対象になります(ただし、上記の表の※1の区分に該当する相続人が、平成29年4月1日から令和4年3月31日までの間に非居住外国人(注5)から相続または遺贈により財産を取得した場合には、国内財産のみが課税対象となります。)。

居住無制限納税義務者または非居住無制限納税義務者の区分以外に該当する相続人が相続または遺贈により取得した財産については、国内財産のみが課税対象となります。

E 相続財産内容

故人が香港で所有していた預金、法人株式、証券、不動産など一切の資産は、死亡時点で何れも凍結され、香港裁判所でのプロベイト手続き完了後、遺産管理状命令書(Letter of administration)もしくは遺言の検認(Grant of probate) がなければ動かせません。こうした日本との違いを知らない日本人の相続人が、日本と同様に考えられ、遺産分割協議書を携えられて香港の銀行まで向かわれるケースがあるようです。しかしながら例え遺産分割協議書や戸籍謄本を翻訳していたとしてもこれらは認められず『香港法の弁護士を探して下さい。』と言われてしまうのが現状です。香港では、日本人に限らず必ずプロベイトの手続きを経たのちしか資産は動かせません。尚、亡くなられた後、法的な手続きを取らずに勝手に資産を移すと、罰金及び禁固刑もありえますのでご注意下さい。

こうして 相続人から当事務所にご依頼を頂きますと、香港にある資産と負債をまずは確定させます。事前に故人からどこに資産や負債があるか聞いていないと、そもそもどの金融機関にいくらあるのかがはっきりしないというケースも少なくありません。最近は、エコのために郵送が少なくなっていると尚更気が付かないケースもありそうです。相続人からの『○○にあるかも。』という不確かな情報を頼りに、1件1件確認していく必要があり、金融機関によっても必要な書類が異なるため手間と時間がかかります。

忘れがちですが、香港で働かれていた方の場合は、MPFや翌年分の予想税金分にも資産が貯まっています。もし銀行の金庫も保有されている場合は、弁護士立会の元、金庫を開きますので更に手間暇がかかります。この手間は、金庫 の安全性と引き換えですので仕方がないですね。

F 相続手続きにかかる時間

相続手続きは、相続争いがなく順調な場合でも、1年から1年半はかかってしまうことも珍しくありません。裁判所からの質問段階をクリアし、遺産管理状のドラフト命令が出て、ドラフトを提出してから命令書が発行されるまでに3ヶ月もかかることもままあるからです。ただし相続管理人が高齢の場合には、裁判所も考慮し特別に通常より早く処理してくれます。

G 香港に資産のある日本在住者の相続

今まで当事務所で請け負った案件で圧倒的に多いパターンは、日本人で日本在住者が遺言書なしで争いなくお亡くなりになるパターンです。日本人が中国やシンガポールでお亡くなりになった、或いは、被相続人が香港人で相続人が日本人などのケースも様々手がけた経験がありますので、まずはご相談下さい。 お亡くなりになった方が香港の〇〇銀行に資産があることは薄々分かるが、いくらの資産があるか分からず、弁護士費用をかけてまでプロベイトの手続きをするべきかお困りの方もいらっしゃいますが、香港の銀行へ資産の問い合わせを代行することは比較的費用をかけずにできます。まずは資産を確定させてからプロベイト手続きを行うかを決めてもよいでしょう。

遺産管理人が申し立てをする場合は、相続裁判所から、遺産管理人以外に香港にいる保証人を求められます。しかもその保証人は、各々香港に被相続人の財産以上の資産を有している必要があり、万が一遺産管理人が裁判所の規定する義務に違反する場合は、他の相続人が被る損害を賠償することを保証する必要があります。香港の弁護士に委任することで、この保証人や保険料(もちろん条件あり)が免除されます。

香港の相続手続き自体は、我々のような香港弁護士に依頼される場合は、通常は、香港にお越しにならずとも手続きを全て完了することが可能です。その後の各金融期間からの資産の移転や香港法人の株式譲渡などの手続きに関しても通常は、香港にお越しになることなく対応することができます。

なお、争いのない相続認証規則(香港法律第10A章の第3条および4)により、有料無料を問わず、相続人、あるいは、香港法の弁護士以外の者が、香港の相続業務を代行・サポートすることは禁じられておりますので依頼をする場合は、資格者(香港において登録更新している香港法弁護士)かどうかにお気をつけ下さい。

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当事務所で承った印象的なケースは以下の通りです。

日本で弁護士にお願いしたが、らちがあかないので、香港まで飛んで来たケース

東京で弁護士に依頼したものの、銀行に問い合わせて必要そうな戸籍謄本などを翻訳し、公証まではしてくれたものも、その後放置され…。という感じの様でした。仕方なく香港まで飛んで来て銀行に問い合わせたところ、香港人弁護士を紹介されたのですが、その弁護士は日本語が分からないため日本語が分かるアンディ弁護士に回ってきました。子供がお亡くなりになり悲しんでいる間もなく、杖をつきながらご夫婦でいらっしゃいました。残念ながら、日本の弁護士に用意された書類は、香港の裁判所で認められるものではありませんでしたので、再度、すべての手続きがやり直しとなりました。

取締役および株主を務めていた方が亡くなられたケース

その手続きの複雑さからか2件の香港の法律事務所が投げ出し、3年近く相続手続きに時間がかかっていました。弊事務所は、会社側の弁護士として雇われたのですが、相続手続きがなかなか終わらないので、その間のビジネス運営にも支障をきたすレベルでした。 上記の様に、香港に資産がある方がお亡くなりになった場合は、たとえ日本在住の日本人であったとしても、香港にある資産分の相続手続きは香港の裁判所で行われることになります。裁判所でプロベイト(Probate)という手続きが必要であり、この手続きは、相続人か香港法の弁護士(ソリスター)しか認められていません。

プロベイト(Probate=検認裁判)とは?

日本の場合は、被相続人が亡くなった時点で、被相続人の財産が相続人全員の共有となり、相続人間の合意や遺言書の内容に基づき相続人全員の共同作業により相続財産の分配がなされます。一方、英国法の流れを受け継ぐ国々では、相続開始時点で資産が凍結隣、遺言執行人や遺産管理人が管理する形となります。遺言書の有効性の確認、相続人の確定などを遺産承弁署からの審問に答え疑問がなくなると、このプロベートが完了してようやく遺産を動かすことができます。 ちなみにプロベイトが原則必要となる主な国や地域は、英国、米国、シンガポール、オーストラリア、ニュージーランドなどです。

A 本拠地(ドミサイルDomicile)

相続手続きを始める前に、故人の本拠地(Domicile)がどこかを考える必要があります。香港のように英米法の国では複数の国籍を持つ人が多く、故人のドミサイルがどこかは、仕事、居住実態、家族など様々な要素から検討する必要があります。 なお、不動産については、財産の所在地の法律が適用されます。そのため日本人が香港に不動産を所有していた場合は、香港の相続法が適用となりますが、現金や株などの流動資産については、ドミサイルの相続法が適用されます。

B 遺言書の有無

法的に有効な遺言書があり亡くなった場合は、有遺言死亡者(Testate)、遺言なしに亡くなった場合は無遺言死亡者(Intestate)です。遺言の有無に関わらずプロベイトの手続きは必要となります。なお、遺言書がある方が、相続手続きが簡単に思われるかもしれませんが、そうとは言えません。寧ろ、香港法に則っていない形式での遺言書の場合は、寧ろ、遺言が有るからこそトラブルとなっているケースが多々有るようですので注意が必要です。 ① 遺言がある場合 遺言がある場合には、相続手続きを行う執行者や相続を受け取ることが出来る受益者などすべて遺言に従うことになります。万が一遺言がいくつか存在する場合には、原則として最後に作成されたものが有効な遺言となります。 - きちんと執行者(Executor)を委任したかどうか。 - 死亡後に自分の資産を処分させたい意思や意図をはっきりさせたかどうか。 の2点を合理的な疑いがないほど明確である(beyond reasonable doubt)基準(イコール刑事と同様のレベル)まで裁判所に求められます。 遺言書の内容は、以下を考慮する必要があります - きちんと執行者を委任したかどうか。 - 委任された執行者は遺言の義務を果たしてくれるかどうか。 - この遺言が最後のものかどうか。つまり、現在の遺言の中に、以前作成した遺言をはっきり取り消す条文があるかどうか。 - いつ作成したか。婚前か婚姻後か。法律によると婚姻という行動は自動的に婚前の遺言を無効にさせる。 - 自分の資産を死んだ後に矛盾がなく、意味不明な部分がないか。あった場合は、その意味不明な部分をはっきりさせないと裁判所からの許可が下りないリスクがある。 - 残余資産を全て処分する旨の条文があるかどうか。もしない場合は、一部は無遺言相続となるリスクがある。 死亡日が1995年11月3日以降の遺言は、必ず以下の法的格式が必要となります。 - 書面で結ぶこと - 遺言者の立会署名 - 署名は必ず2名の立会が必要で、その立会人も署名する必要がある。 有効な遺言がある場合、その遺言で遺言執行人に指名された者が、裁判所に申請し、裁判所からの様々な審問や疑問に疑いのないレベルまで答えるとプロベイトの授与書(Grant Of Probate)が得られ香港内にある全ての相続資産を動かし、相続人に分配する責任を負います。 日本において、公正証書遺言や遺言書情報証明書などの形式で遺言書を残された方の案件も受任しています。日本法に従い作成された遺言書は香港でも有効です。しかしながら、日本の公正証書遺言などの遺言書は、香港で求められている上記の条件をまずは満たしていないため、もし、香港に資産をお持ちであれば、香港の資産分は、香港法の形式に従った形で遺言書を日本の遺言書とは別に作成されることをオススメします。これは非常に重要で貴重なアドバイスです。 ② 遺言がない場合 遺言がない場合には、執行者や受益者は法律の定めに従って決定することになります。圧倒的に日本人で多いパターンは、遺言書がなくお亡くなりになるパターンです。ご主人がお亡くなりになった場合は、配偶者である妻が遺産管理人(Administrator)であり、且つ、受益者になります。 遺言がない場合には、以下の順番で遺産管理人となります。 a 配偶者或いは1971年までの間に内縁の妻または夫であった者(1971年までは内縁の妻または夫に対して法的な立場が認められていました。) b 子供或いは内縁の妻または夫との間の子供(子供が先に亡くなっている場合にはその子供の子供、つまり孫) c 親 d兄弟姉妹 遺言がない場合は、法律で定められた優先順位により遺産管理人が裁判所に申請し、裁判所からの様々な審問や疑問に疑いのないレベルまで答えると遺産管理上命令書(Letter of Administration)が得られ、香港内にある全ての相続資産を動かし、相続人に分配する責任を負います。 また、未成年の相続人がいる場合は、未成年者の利益保護のために遺産管理人が2名以上必要となります。 ③ 遺産管理(遺言管理) ①・②のコンビネーション つまり、遺言があったものの、 - 遺言の中に誰が執行人(Executor)であるのかの記載がない - 或いは、遺言で指定された執行人が管理する権利を放棄した - 或いは、該当執行人が遺言人より先に亡くなった - 執行人が生きているものの健康精神的に執行人としての義務を果たすことが不可能な状態などの場合です。

C 死亡地

香港、日本或いは他の外国でお亡くなりになったのか。により必要な書類は異なります。 ドミサイルを日本とした場合には、日本の法律も絡みます。私が依頼を受けた場合は、香港の裁判所で求められる内容と細かな形式に基づいた日本法の意見書を作成し、日本法の弁護士に内容を確認してもらい公証してもらいます。香港のプロベイト裁判所は、かなり形式に細かく、担当者によって毎回異なる質問や補正が求められたりします。香港にとって外国人である日本人の相続手続きに慣れていない弁護士だと度々やり直しさせられその度に公証費用が発生してもおかしくありません。 日本人で死亡地が日本や香港以外の場合は、全ての地域が異なるために更に相続手続きが難しくなります。

D 相続税

2006年2月11日以降の死亡であれば香港の相続税は必要ありません。もちろん日本居住者や日本の財産(*詳細は表を参照)は、日本で相続税が発生します 。 被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10ヶ月以内に申告納税が義務付けられており、遅れると延滞税や加算税まで上乗せして支払う必要があります。全世界に資産がある資産家の方は、相続税の計算のためにも各国の資産を確認する必要があります。 銀行や証券会社は、守秘義務のために、名義人以外の例え相続人からの問い合わせであってもなかなか答えてくれません。その場合は、香港の代理弁護士として香港の相続資産の調査や手続きに関してはお任せください。相続税に関しては、日本の税理士の中でも、海外相続の経験がある税理士に確認された方が良く、必要があればご紹介致します。 (国税庁HPにより抜粋) 上記の表中、居住無制限納税義務者または非居住無制限納税義務者の区分に該当する相続人が相続または遺贈により取得した財産については、国内財産および国外財産にかかわらず、すべて課税対象になります(ただし、上記の表の※1の区分に該当する相続人が、平成29年4月1日から令和4年3月31日までの間に非居住外国人(注5)から相続または遺贈により財産を取得した場合には、国内財産のみが課税対象となります。)。 居住無制限納税義務者または非居住無制限納税義務者の区分以外に該当する相続人が相続または遺贈により取得した財産については、国内財産のみが課税対象となります。

E 相続財産内容

故人が香港で所有していた預金、法人株式、証券、不動産など一切の資産は、死亡時点で何れも凍結され、香港裁判所でのプロベイト手続き完了後、遺産管理状命令書(Letter of administration)もしくは遺言の検認(Grant of probate) がなければ動かせません。こうした日本との違いを知らない日本人の相続人が、日本と同様に考えられ、遺産分割協議書を携えられて香港の銀行まで向かわれるケースがあるようです。しかしながら例え遺産分割協議書や戸籍謄本を翻訳していたとしてもこれらは認められず『香港法の弁護士を探して下さい。』と言われてしまうのが現状です。香港では、日本人に限らず必ずプロベイトの手続きを経たのちしか資産は動かせません。尚、亡くなられた後、法的な手続きを取らずに勝手に資産を移すと、罰金及び禁固刑もありえますのでご注意下さい。 こうして 相続人から当事務所にご依頼を頂きますと、香港にある資産と負債をまずは確定させます。事前に故人からどこに資産や負債があるか聞いていないと、そもそもどの金融機関にいくらあるのかがはっきりしないというケースも少なくありません。最近は、エコのために郵送が少なくなっていると尚更気が付かないケースもありそうです。相続人からの『○○にあるかも。』という不確かな情報を頼りに、1件1件確認していく必要があり、金融機関によっても必要な書類が異なるため手間と時間がかかります。 忘れがちですが、香港で働かれていた方の場合は、MPFや翌年分の予想税金分にも資産が貯まっています。もし銀行の金庫も保有されている場合は、弁護士立会の元、金庫を開きますので更に手間暇がかかります。この手間は、金庫 の安全性と引き換えですので仕方がないですね。

F 相続手続きにかかる時間

相続手続きは、相続争いがなく順調な場合でも、1年から1年半はかかってしまうことも珍しくありません。裁判所からの質問段階をクリアし、遺産管理状のドラフト命令が出て、ドラフトを提出してから命令書が発行されるまでに3ヶ月もかかることもままあるからです。ただし相続管理人が高齢の場合には、裁判所も考慮し特別に通常より早く処理してくれます。

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今まで当事務所で請け負った案件で圧倒的に多いパターンは、日本人で日本在住者が遺言書なしで争いなくお亡くなりになるパターンです。日本人が中国やシンガポールでお亡くなりになった、或いは、被相続人が香港人で相続人が日本人などのケースも様々手がけた経験がありますので、まずはご相談下さい。 お亡くなりになった方が香港の〇〇銀行に資産があることは薄々分かるが、いくらの資産があるか分からず、弁護士費用をかけてまでプロベイトの手続きをするべきかお困りの方もいらっしゃいますが、香港の銀行へ資産の問い合わせを代行することは比較的費用をかけずにできます。まずは資産を確定させてからプロベイト手続きを行うかを決めてもよいでしょう。 遺産管理人が申し立てをする場合は、相続裁判所から、遺産管理人以外に香港にいる保証人を求められます。しかもその保証人は、各々香港に被相続人の財産以上の資産を有している必要があり、万が一遺産管理人が裁判所の規定する義務に違反する場合は、他の相続人が被る損害を賠償することを保証する必要があります。香港の弁護士に委任することで、この保証人や保険料(もちろん条件あり)が免除されます。 香港の相続手続き自体は、我々のような香港弁護士に依頼される場合は、通常は、香港にお越しにならずとも手続きを全て完了することが可能です。その後の各金融期間からの資産の移転や香港法人の株式譲渡などの手続きに関しても通常は、香港にお越しになることなく対応することができます。 なお、争いのない相続認証規則(香港法律第10A章の第3条および4)により、有料無料を問わず、相続人、あるいは、香港法の弁護士以外の者が、香港の相続業務を代行・サポートすることは禁じられておりますので依頼をする場合は、資格者(香港において登録更新している香港法弁護士)かどうかにお気をつけ下さい。" ["post_title"]=> string(80) "香港にある資産の日本人の相続手続き(Probate プロベイト)" ["post_excerpt"]=> string(0) "" ["post_status"]=> string(7) "publish" ["comment_status"]=> string(4) "open" ["ping_status"]=> string(4) "open" ["post_password"]=> string(0) "" ["post_name"]=> string(197) "%e9%a6%99%e6%b8%af%e3%81%ab%e3%81%82%e3%82%8b%e8%b3%87%e7%94%a3%e3%81%ae%e6%97%a5%e6%9c%ac%e4%ba%ba%e3%81%ae%e7%9b%b8%e7%b6%9a%e6%89%8b%e7%b6%9a%e3%81%8d%ef%bc%88probate-%e3%83%97%e3%83%ad%e3%83%99" ["to_ping"]=> string(0) "" ["pinged"]=> string(0) "" ["post_modified"]=> string(19) "2025-09-12 14:42:11" ["post_modified_gmt"]=> string(19) "2025-09-12 05:42:11" ["post_content_filtered"]=> string(0) "" ["post_parent"]=> int(0) ["guid"]=> string(34) "https://nnaglobalnavi.com/?p=28642" ["menu_order"]=> int(0) ["post_type"]=> string(4) "post" ["post_mime_type"]=> string(0) "" ["comment_count"]=> string(1) "0" ["filter"]=> string(3) "raw" }
 アンディ・チェン法律事務所
アンディ・チェン ホウリツジムショ アンディ・チェン法律事務所
香港•中国のビジネスを法務面からサポートします。

アンディ・チェン法律事務所は、香港を拠点にした法律事務所です。
アンディ弁護士は、香港法の弁護士、中国法弁護士(大湾区 GBA) および、英国・ウェールズ弁護士(Non Practice) 中国委託公証人 香港大学法律学科卒業、慶應義塾大学へ留学後、在香港日本国総領事館勤務の経験もあり元ジェトロ相談員。
主に日系企業や日本の弁護士向けに法的アドバイスを提供している。

HP: https://www.andysolicitor.com/

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ビジネス全般生活全般

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