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BYD、狙いは「暮らし」飲食店展開でブランド再定義

中国の電気自動車(EV)最大手の比亜迪(BYD)が、シンガポールでブランドの再定義を進めている。飲食店と交流スペースを併設したBYDのショールームを2年前に開設し、現在は計3軒を運営している。このほか、BYDブランドを冠した飲食店も2軒開業した。自動車だけでなく暮らしの一部を担うライフスタイルを訴求し、幅広い層の取り込みを狙う。【Nixon Tan】

飲食スペースを併設したBYDのショールーム。シンガポール中心部の複合施設「サンテック・シティー」に設置した=8日(NNA撮影)

シンガポール中心部のオフィス街タンジョンパガー。ガラス張りのファサードが印象的なレストラン「BYD by 1826」を昼時に訪れると、ほとんどの席が埋まっていた。
BYDは2023年、シンガポールのバーレストラン「1826」と提携し、飲食と交流スペース併設のショールームを開設。さらに、飲食店事業にも乗り出した。BYD by 1826のマーケティング責任者、ミシェル・ホー氏は「自動車ブランドの役割は単に人を運ぶだけではない。より大きく捉えたライフスタイルの一部であるべきだ」と話す。
併設型ショールームは、中心部の複合施設「サンテック・シティー」、東部プンゴールの商業施設「ウオーターウエーポイント」、中部のジョンシャン・パークの3カ所。飲食店は中心部のタンジョンパガーとボートキーの2カ所にある。
併設型ショールームでは、来訪者は試乗前に食事をしたり、仲間と会話を楽しんだりすることができる。プンゴールのウオーターウエー・ポイントは地域のコーヒー文化を打ち出し、ジョンシャン・パークは家族連れやペット同伴の人を意識した空間に仕立てている。
レストラン単独の店舗は、自動車ユーザー以外の層にもライフスタイルを提案する場所になっている。
ホー氏によると、BYDはこれらのショールームや店舗を「ライフスタイル・ハブ」に位置付け、食事の雰囲気を楽しみたい若者やペット愛好家、家族連れなどの取り込みを目指している。さらに、BYDの理念の一つである脱炭素を啓発する場所にしたいとの考えもある。
■テスラや現代自も「暮らし」提案
自動車メーカーがライフスタイルを提案する試みは、他の自動車ブランドも実践している。ショールーム以外の場所で消費者とのつながりを増やすことが狙いだ。
米EV大手テスラは今年7月、ロサンゼルスで24時間営業の「テスラ・ダイナー」を開業した。車両の充電中に食事や映画鑑賞が楽しめる空間になっている。
韓国・現代自動車も高価格帯ブランド「ジェネシス」をコンセプトに、ショールーム、レストラン、図書館、イベントスペースが一体となった「ジェネシス・ハウス」をニューヨークで運営する。
BYD by 1826のホー氏は「他社はレストランを副次的なものと捉えているようだが、われわれはライフスタイルをブランドDNAの核に位置付けている」と、競合との違いを強調する。
BYDは100以上の国・地域でEVを展開しているが、ライフスタイル・ハブの取り組みを進めているのはシンガポールのみだ。狭い国土の中で中華、マレー、インドと多様な文化が同居していることから、新しい試みを受け入れやすいと判断した。
併設型ショールームには課題もある。食品の衛生法を順守しながらバッテリー搭載のEV車両を展示する必要があるためだ。ホー氏は「換気、スペースの分離など適切なレイアウトを組んだ上で、スタッフも教育しなければならない」と明かす。

中心部のオフィス街タンジョンパガーにあるBYD by 1826のレストラン=8日(NNA撮影)

こうした課題を解決しながらBYD by 1826の店舗を5カ所に増やし、さらなる拡大も計画中だ。今年10~12月期には繁華街オーチャードの商業施設「ザ・センターポイント」と西部ジュロン・イーストの商業施設「IMM」にもBYD by 1826を出店する計画だ。ホー氏は「BYDの野望を表している事業だ」と力を込めた。
BYDは今年1月に月間販売台数でトヨタ自動車を抜き、以後シンガポールの新車市場で首位を走る。8月の販売台数は前年同月比87%増の961台と大幅増を記録した。

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BYDは2023年、シンガポールのバーレストラン「1826」と提携し、飲食と交流スペース併設のショールームを開設。さらに、飲食店事業にも乗り出した。BYD by 1826のマーケティング責任者、ミシェル・ホー氏は「自動車ブランドの役割は単に人を運ぶだけではない。より大きく捉えたライフスタイルの一部であるべきだ」と話す。
併設型ショールームは、中心部の複合施設「サンテック・シティー」、東部プンゴールの商業施設「ウオーターウエーポイント」、中部のジョンシャン・パークの3カ所。飲食店は中心部のタンジョンパガーとボートキーの2カ所にある。
併設型ショールームでは、来訪者は試乗前に食事をしたり、仲間と会話を楽しんだりすることができる。プンゴールのウオーターウエー・ポイントは地域のコーヒー文化を打ち出し、ジョンシャン・パークは家族連れやペット同伴の人を意識した空間に仕立てている。
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ホー氏によると、BYDはこれらのショールームや店舗を「ライフスタイル・ハブ」に位置付け、食事の雰囲気を楽しみたい若者やペット愛好家、家族連れなどの取り込みを目指している。さらに、BYDの理念の一つである脱炭素を啓発する場所にしたいとの考えもある。
■テスラや現代自も「暮らし」提案
自動車メーカーがライフスタイルを提案する試みは、他の自動車ブランドも実践している。ショールーム以外の場所で消費者とのつながりを増やすことが狙いだ。
米EV大手テスラは今年7月、ロサンゼルスで24時間営業の「テスラ・ダイナー」を開業した。車両の充電中に食事や映画鑑賞が楽しめる空間になっている。
韓国・現代自動車も高価格帯ブランド「ジェネシス」をコンセプトに、ショールーム、レストラン、図書館、イベントスペースが一体となった「ジェネシス・ハウス」をニューヨークで運営する。
BYD by 1826のホー氏は「他社はレストランを副次的なものと捉えているようだが、われわれはライフスタイルをブランドDNAの核に位置付けている」と、競合との違いを強調する。
BYDは100以上の国・地域でEVを展開しているが、ライフスタイル・ハブの取り組みを進めているのはシンガポールのみだ。狭い国土の中で中華、マレー、インドと多様な文化が同居していることから、新しい試みを受け入れやすいと判断した。
併設型ショールームには課題もある。食品の衛生法を順守しながらバッテリー搭載のEV車両を展示する必要があるためだ。ホー氏は「換気、スペースの分離など適切なレイアウトを組んだ上で、スタッフも教育しなければならない」と明かす。
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