三菱地所ベトナムは9日、北部ハイフォン市で大型物流施設の竣工(しゅんこう)式を開催した。8月に南部タイニン省(旧ロンアン省)で完成した物件に続き、ベトナムでの物流施設は同社にとって2カ所目。ハイフォン港から米国などに向けて輸出される日用品や電子機器などの貨物の利用を見込む。加賀本崇至社長は「機能性、安全性、快適性、環境配慮の要素を十分に兼ね備えた施設だ」と強調し、ハイフォン周辺で拡大する物流需要を取り込みたいと意欲を語った。
完成した「ロジクロス・ハイフォン」=9日、ハイフォン市
完成した「ロジクロス・ハイフォン」は、ディンブー・カットハイ経済区にあり、ナムディンブー港まで車で5分、ラックフエン深水港までは25分の距離にある。
敷地面積は約15万1,000平方メートル、延べ床面積は8万8,000平方メートルで、タイニン省の「ロジクロス・ナムトゥアン」よりも3~4割大きい。三菱地所が日本で展開するロジクロスブランドの物流施設と比べても最大級だ。
施設は2棟からなり、高床式バースを採用。最小4,400平方メートルからの貸し出しが可能だ。日本のロジクロスでは2階建て以上が多いが、ハイフォンの施設は天井の高さ10.5メートルの平屋建てとし、荷物を高く積むことが多いベトナムの物流習慣に合わせた。
天井と内壁には断熱材を採用し、施設内での夏の作業環境に配慮するとともに省エネ性能を向上させた。担当者によれば、内壁にまで断熱材を取り入れる倉庫はベトナムでは珍しい。
着工直前の2024年9月にハイフォン市を直撃した台風11号(国際名:ヤギ)で多くの家屋や工場が被害を受けたことを踏まえて、ガラスや建材、シャッターの耐風圧性能を当初の予定から強固な設計に変更した。今年9~10月に台風が相次ぎ北部に上陸したが、無傷だったという。設計・施工はフジタベトナムが手がけた。
人感センサー付き発光ダイオード(LED)照明などを取り入れており、建築物向け環境認証「EDGE」も取得した。
■「トランプ関税の影響は限定的」

三菱地所ベトナムはハイフォンとナムトゥアンの施設に合わせて約135億円を投じた。
ハイフォン周辺ではチャイナプラスワンの流れを受けて製造業が集積しつつあり、輸出貨物などの倉庫需要の取り込みを図る。高い保管品質を求める中国や台湾、欧州系企業などと誘致交渉を進めている。物流を一括で受託するサード・パーティー・ロジスティクス(3PL)業者が商談全体の4分の3を占めており、米アップルのサプライヤーからの引き合いもあるという。
ナムトゥアンは最大消費地のホーチミン市に近く、電子商取引(EC)の荷物などを扱う物流業者などに営業を掛けている。現時点での引き合いは地場企業と中国系企業が合わせて7割で、業種別ではメーカーやEC業者が3分の2を占める。
どちらも2年程度かけてフル稼働を目指しており、加賀本氏は「数千~数万平方メートルまで幅広く引き合いが来ている」と手応えを語った。
ハイフォンでは北米向けの輸出貨物を主要なターゲットとしている。米国の相互関税について「懸念していたが、足元のテナント誘致に大きな影響は出ていない」とした。関税率が20%に落ち着いたことで見込みテナントの間での先行きに対する不透明感が後退したためだが、40%の関税が課されるベトナムを経由した「積み替え」品を取り扱っている可能性がある一部の企業には慎重姿勢が見られるという。
■北部でさらなる投資検討
三菱地所ベトナムは19年設立。分譲住宅やオフィス、物流施設など幅広く手がけ、ベトナムでの投資資産残高は約6億米ドル(約916億円)に積み上がっている。
国内物流施設の1号物件があるナムトゥアン工業団地では、第2期の倉庫を建設する土地を確保している。加賀本氏は「北部も物流需要は拡大していく」として、首都ハノイ市とハイフォン市を結ぶエリアで新たな物流施設への投資に意欲を見せた。
三菱地所ベトナムの加賀本社長はテナントの誘致活動は順調に進んでいると強調した=9日、ハイフォン市
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天井と内壁には断熱材を採用し、施設内での夏の作業環境に配慮するとともに省エネ性能を向上させた。担当者によれば、内壁にまで断熱材を取り入れる倉庫はベトナムでは珍しい。
着工直前の2024年9月にハイフォン市を直撃した台風11号(国際名:ヤギ)で多くの家屋や工場が被害を受けたことを踏まえて、ガラスや建材、シャッターの耐風圧性能を当初の予定から強固な設計に変更した。今年9~10月に台風が相次ぎ北部に上陸したが、無傷だったという。設計・施工はフジタベトナムが手がけた。
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■「トランプ関税の影響は限定的」

三菱地所ベトナムはハイフォンとナムトゥアンの施設に合わせて約135億円を投じた。
ハイフォン周辺ではチャイナプラスワンの流れを受けて製造業が集積しつつあり、輸出貨物などの倉庫需要の取り込みを図る。高い保管品質を求める中国や台湾、欧州系企業などと誘致交渉を進めている。物流を一括で受託するサード・パーティー・ロジスティクス(3PL)業者が商談全体の4分の3を占めており、米アップルのサプライヤーからの引き合いもあるという。
ナムトゥアンは最大消費地のホーチミン市に近く、電子商取引(EC)の荷物などを扱う物流業者などに営業を掛けている。現時点での引き合いは地場企業と中国系企業が合わせて7割で、業種別ではメーカーやEC業者が3分の2を占める。
どちらも2年程度かけてフル稼働を目指しており、加賀本氏は「数千~数万平方メートルまで幅広く引き合いが来ている」と手応えを語った。
ハイフォンでは北米向けの輸出貨物を主要なターゲットとしている。米国の相互関税について「懸念していたが、足元のテナント誘致に大きな影響は出ていない」とした。関税率が20%に落ち着いたことで見込みテナントの間での先行きに対する不透明感が後退したためだが、40%の関税が課されるベトナムを経由した「積み替え」品を取り扱っている可能性がある一部の企業には慎重姿勢が見られるという。
■北部でさらなる投資検討
三菱地所ベトナムは19年設立。分譲住宅やオフィス、物流施設など幅広く手がけ、ベトナムでの投資資産残高は約6億米ドル(約916億円)に積み上がっている。
国内物流施設の1号物件があるナムトゥアン工業団地では、第2期の倉庫を建設する土地を確保している。加賀本氏は「北部も物流需要は拡大していく」として、首都ハノイ市とハイフォン市を結ぶエリアで新たな物流施設への投資に意欲を見せた。
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