総合商社の兼松と環境スタートアップのグリーンカーボン(東京都千代田区)は16日、フィリピンのミンダナオ島ブキドノン州で、水田由来のメタン排出削減に関する技術検証を開始したと発表した。日本とフィリピン両政府による温室効果ガス削減の取り組み「二国間クレジット制度(JCM)」に基づくカーボンクレジット(排出権)の組成を目指す。2026年の本格的な事業化を見込んでいる。
フィリピンでは温室効果ガス排出量の約25%を農業分野が占める(グリーンカーボン提供)
ブキドノン州マララグで、約100ヘクタールの水田を対象に技術実証を開始した。数日おきに注水と自然乾燥を繰り返す「間断かんがい(AWD)」を活用することで、温室効果ガスの一種である水田由来のメタンガスの排出量を削減する。
フィリピンの温室効果ガス排出量は約25%が農業分野由来で、そのうち約7割を水田からのメタン排出が占める。メタンは二酸化炭素(CO2)に比べて28倍の温室効果を持つ。間断かんがいを採用することで、従来比で約30%のメタンを削減できると考えられている。
兼松とグリーンカーボンは、26年の本格的な事業化を目指し、1年にわたって事業化検証を行う。創出したJCMクレジットは、温室効果ガスの排出削減ニーズの高い企業などへの販売を見込む。グリーンカーボンがクレジット創出、兼松が日本企業へのクレジット販売を担う。
両社は、ベトナムにおける水田メタン発生の抑制と環境配慮米の普及を目指した取り組みでも24年から協力している。
■出光や大阪ガスも参画
グリーンカーボンは、ブキドノン州のほかに、ルソン島の北イロコス州、イサベラ州、ヌエバビスカヤ州、タルラック州、ブラカン州、バタンガス州、ビサヤ地方のレイテ州、ボホール州などで間断かんがいによるメタンガス排出量の削減の実証を行っている。数年以内に全国のかんがい水田面積の半分強に相当する100万ヘクタール規模を展開し、今後10年間で合計約100万トンのカーボンクレジット創出を目指している。
これまでに出光興産や大阪ガス、東邦ガス、三菱UFJ信託銀行などがグリーンカーボンとの共同実証に参画。グリーンカーボンはまた、地域農家への技術導入支援や研修で、タルラック州農業局やタルラック州立大学、中部ルソン大学などとも提携している。
日本政府は、26年度から年間10万トン以上の温室効果ガスを排出している企業に対して、排出枠超過分の排出量削減を義務付ける。対象企業は、発電や製鉄、化学、運輸など300~400社に上る。
一方、日本国内のCO2の総排出量10億トンに対し、30年に日本国内で見込まれるクレジット創出量は100万トンにとどまる。日本のクレジット創出の絶対量が不足する中、フィリピンなどでのクレジット創出に期待が寄せられている。
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フィリピンの温室効果ガス排出量は約25%が農業分野由来で、そのうち約7割を水田からのメタン排出が占める。メタンは二酸化炭素(CO2)に比べて28倍の温室効果を持つ。間断かんがいを採用することで、従来比で約30%のメタンを削減できると考えられている。
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両社は、ベトナムにおける水田メタン発生の抑制と環境配慮米の普及を目指した取り組みでも24年から協力している。
■出光や大阪ガスも参画
グリーンカーボンは、ブキドノン州のほかに、ルソン島の北イロコス州、イサベラ州、ヌエバビスカヤ州、タルラック州、ブラカン州、バタンガス州、ビサヤ地方のレイテ州、ボホール州などで間断かんがいによるメタンガス排出量の削減の実証を行っている。数年以内に全国のかんがい水田面積の半分強に相当する100万ヘクタール規模を展開し、今後10年間で合計約100万トンのカーボンクレジット創出を目指している。
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日本政府は、26年度から年間10万トン以上の温室効果ガスを排出している企業に対して、排出枠超過分の排出量削減を義務付ける。対象企業は、発電や製鉄、化学、運輸など300~400社に上る。
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