インドネシアの複合企業アストラ・インターナショナルが10月31日に発表した2025年1~9月期決算は減収減益だった。主力の自動車事業の販売は市場低迷を受けて失速。各事業部門で黒字を確保したものの、国際的な石炭価格の下落が鉱業関連事業の利益を圧迫した。通年でも鉱業関連の不調を、他部門の堅調さで補う状況が続くと見込む。
売上高は前年同期比1.1%減の243兆6,100億ルピア(約2兆2,600億円)、純利益は5.3%減の24兆4,700億ルピアだった。
売上高を事業部門別で見ると、「自動車・モビリティー」が9.1%減の93兆3,500億ルピアとなり、全体を落ち込ませた。四輪では、新車市場全体が落ち込む中、「トヨタ」「ダイハツ」などアストラが手がけるブランドの1~9月の販売シェアが前年同期の56%から53%に下がった。
インドネシア自動車製造業者協会(ガイキンド)によると、同期間の卸売りベースの新車販売台数は11.3%減の56万1,819台。このうち販売シェア首位のトヨタ車は12.7%減の18万1,817台(シェアは0.5ポイント低下の32.4%)、ダイハツ車は24.3%減の9万5,307台(同2.9ポイント低下の17.0%)だった。近年は中国系ブランドが電気自動車(EV)などで攻勢に出る中、トヨタ車が堅調に推移する一方、ダイハツ車でシェア低下が見られるという。


傘下の二輪車最大手アストラ・ホンダ・モーター(AHM)の販売シェアは77%で安定的に推移した。インドネシア二輪車製造業者協会(AISI)によると、同国の1~9月の二輪車の販売台数は前年同期比0.7%減の483万6,891台だった。
「自動車・モビリティー」では新車販売への依存からの脱却を図っており、中古車事業「OLXmobbi」の販売台数は24%増の2万3,900台に伸びた。車両サービスを手がけるスラシ・オートラヤのリース車両数は2万6,500台となり、安定的に推移しているという。
■鉱業関連3割近くの減益
事業部門別の純利益は、「自動車・モビリティー」が8兆8,200億ルピアで部門別最大。前年同期から0.9%増えた。
「金融」部門の純利益は8.0%増の6兆7,300億ルピアと好調。このうち二輪向けフェデラル・インターナショナル・ファイナンスが5%増の3兆5,000億ルピアと大きく貢献し、このほか◇四輪向け=4%増の1兆8,000億ルピア◇損害保険アスランシ・アストラ・ブアナ=7%増の1兆2,000億ルピア◇重機向け=1%減の1,690億ルピア——などとなった。
「重機・鉱業・建設・エネルギー」の純利益は26.5%減の7兆400億ルピアで、事業部門別で唯一の大幅減益となった。アストラが59.5%出資する子会社ユナイテッド・トラクターズ(UT)の25年1~9月期決算は売上高が0.9%増の100兆4,700億ルピア、純利益が20.1%減の11兆6,100億ルピアで、同社の業績低迷が響いた。
UTはコマツ製重機の販売や石炭関連事業などを手がけており、減益の主因は石炭価格の低下だ。同社傘下のトゥア・トゥランガ・アグン(TTA)による1~9月の石炭販売量は増えたものの、価格低下が石炭部門の利益を圧迫した。
UTのコマツ製重機の販売台数は10%増の3,653台。ただ、月別では8月と9月の2カ月連続で前年同月を2桁下回った。

事業部門別の純利益は他、◇農園=33.7%増の8,500億ルピア◇インフラ=28.4%増の9,400億ルピア◇情報技術=19.8%増の1,400億ルピア◇不動産=1.2%増の1,600億ルピア——となった。アストラが79.7%出資する農園大手アストラ・アグロ・レスタリは、パーム原油(CPO)価格の上昇が追い風となって好調だった。
アストラは事業多角化を推進しており、9月には傘下企業を通じた倉庫開発メガ・マヌンガル・プロパティー(MMP)の株式83.67%の買収を完了させた。工業・物流インフラ需要の取り込みを進めていく方針だ。
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インドネシア自動車製造業者協会(ガイキンド)によると、同期間の卸売りベースの新車販売台数は11.3%減の56万1,819台。このうち販売シェア首位のトヨタ車は12.7%減の18万1,817台(シェアは0.5ポイント低下の32.4%)、ダイハツ車は24.3%減の9万5,307台(同2.9ポイント低下の17.0%)だった。近年は中国系ブランドが電気自動車(EV)などで攻勢に出る中、トヨタ車が堅調に推移する一方、ダイハツ車でシェア低下が見られるという。


傘下の二輪車最大手アストラ・ホンダ・モーター(AHM)の販売シェアは77%で安定的に推移した。インドネシア二輪車製造業者協会(AISI)によると、同国の1~9月の二輪車の販売台数は前年同期比0.7%減の483万6,891台だった。
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■鉱業関連3割近くの減益
事業部門別の純利益は、「自動車・モビリティー」が8兆8,200億ルピアで部門別最大。前年同期から0.9%増えた。
「金融」部門の純利益は8.0%増の6兆7,300億ルピアと好調。このうち二輪向けフェデラル・インターナショナル・ファイナンスが5%増の3兆5,000億ルピアと大きく貢献し、このほか◇四輪向け=4%増の1兆8,000億ルピア◇損害保険アスランシ・アストラ・ブアナ=7%増の1兆2,000億ルピア◇重機向け=1%減の1,690億ルピア——などとなった。
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