富士フイルムホールディングスの後藤禎一社長は3日、訪問先のベトナム南部ホーチミン市でNNAとの単独インタビューに応じ、同市内で開設した健診センター「NURA(ニューラ)」について「ベトナムで2030年度までに10拠点に拡大したい」と意気込みを語った。NURAの開設はベトナムでは首都ハノイに続いて2カ所目。人工知能(AI)を活用したがん検診のほか、生活習慣病の検査サービスも提供しており、富士フイルムはNURAの拡大を通じ、ベトナムでの健診文化の定着を目指す。(聞き手=坂部哲生)
「健診文化の定着に貢献したい」と話す後藤社長=3日、ホーチミン市
NURAでは、同社のコンピューター断層撮影装置(CT)やマンモグラフィー(乳房X線撮影)などの医療機器と、医師の診断を支援するAI技術を活用する。
ハノイ市の拠点は24年7月の開設以来、1年3カ月間で約1万8,500人が健診を受けたという。料金は860万ドン(約5万円)から。
後藤社長は「120分で検査説明が完結し、画像データをモニターで確認しながら、医師からコンサルティングを受けられる点が好評」とし、「日本へ渡航せず国内で高水準の健診を受けられることが、中間層・富裕層に支持されている」と述べた。
ハノイでの成果を踏まえ、ホーチミン市では「タオディエンパール」に2拠点目を開設。30年度までにハノイ市とホーチミン市などの大都市や全国の中核都市を中心に、「10拠点体制を目指す」としている。
■世界で年度内に16拠点
NURAは21年にインドで開所し、現在は、NURAやNURAのノウハウを取り入れた健診センターは、インドのほか、モンゴル、ベトナム、アラブ首長国連邦(UAE)に拡大。さらに南アフリカ、タイ、フィリピン、マレーシアでも展開を進めており、25年度中に世界16拠点体制を整える見通し。30年度をめどに世界で100拠点に拡大する方針だ。
後藤社長は「最初の1拠点目が最も難しい。ベトナムではハノイの拠点で得たノウハウや政府との信頼関係を基に、今後はスピード感を持って拡大したい」と話す。
進出ペースを速めるため、ベトナムではフランチャイズ(FC)方式に似た仕組みを取っている。ホーチミン市のNURAは、ハノイ市と同様に救急クリニック「T—マツオカ・メディカルセンター」を経営しているベトナム・ジャパン・ヘルステクノロジー(VJH)が運営する。ベトナム以外では直営方式も採用する。
■医療機器事業への波及効果も
NURAは現地でのショールーム的役割も担う。後藤社長は「自ら健診に訪れる医師も多く、機器導入などの商談が進んでいる」と話す。
また、現場のニーズを新製品開発へフィードバックする狙いもある。「医療は国境を越えて広がりにくい分野。国ごとに疾病構造や制度が異なるため、現地での学びや気付きが次の開発に生きる」と述べた。
後藤社長はNURAの拡大について「健診を文化として根付かせること」が最大の目的とする。「健診の普及が社会的貢献になると同時に、医療機器やAI、人材、病因のケータリングなど周辺分野の市場拡大にもつながる」とし、経済効率性と社会的貢献を両立するモデル事業として位置づけている。
NURAに設置されたCT=3日、ホーチミン市
■「チェキ」が人気
医療以外では、イメージング事業を今後の柱の1つと位置づける。ベトナムではインスタントカメラ「インスタックス(日本名:チェキ)」が人気を集めており、「ベトナム人は写真が好きで、記録ではなく表現として撮影する層が増えている」と語り、ミラーレスカメラなどの販売強化に意欲を示した。
また、富士フイルムビジネスイノベーション(BI、旧富士ゼロックス)が北部ハイフォン市に構える複合機・プリンター工場では依然として堅調な紙需要に支えられている。後藤社長は「デジタルトランスフォーメーション(DX)に合わせたアプリやソフトウエア開発も進めていく」とした。
■ベトナムは「重要市場」
後藤社長は1990年代にベトナム駐在を経験。「当時7,000万人だった人口が1億人を超えた。中間層の拡大でマーケットとしての魅力は大きく高まっている」と述べた。「東南アジアの中でも今後の成長余地が大きい。生産拠点としても、米中関係の影響で多くの企業がシフトしており、ベトナムはますます重要な拠点になる」と期待を示した。
NURAのホーチミン拠点の開所式典の様子=3日、ホーチミン市
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後藤社長は「120分で検査説明が完結し、画像データをモニターで確認しながら、医師からコンサルティングを受けられる点が好評」とし、「日本へ渡航せず国内で高水準の健診を受けられることが、中間層・富裕層に支持されている」と述べた。
ハノイでの成果を踏まえ、ホーチミン市では「タオディエンパール」に2拠点目を開設。30年度までにハノイ市とホーチミン市などの大都市や全国の中核都市を中心に、「10拠点体制を目指す」としている。
■世界で年度内に16拠点
NURAは21年にインドで開所し、現在は、NURAやNURAのノウハウを取り入れた健診センターは、インドのほか、モンゴル、ベトナム、アラブ首長国連邦(UAE)に拡大。さらに南アフリカ、タイ、フィリピン、マレーシアでも展開を進めており、25年度中に世界16拠点体制を整える見通し。30年度をめどに世界で100拠点に拡大する方針だ。
後藤社長は「最初の1拠点目が最も難しい。ベトナムではハノイの拠点で得たノウハウや政府との信頼関係を基に、今後はスピード感を持って拡大したい」と話す。
進出ペースを速めるため、ベトナムではフランチャイズ(FC)方式に似た仕組みを取っている。ホーチミン市のNURAは、ハノイ市と同様に救急クリニック「T—マツオカ・メディカルセンター」を経営しているベトナム・ジャパン・ヘルステクノロジー(VJH)が運営する。ベトナム以外では直営方式も採用する。
■医療機器事業への波及効果も
NURAは現地でのショールーム的役割も担う。後藤社長は「自ら健診に訪れる医師も多く、機器導入などの商談が進んでいる」と話す。
また、現場のニーズを新製品開発へフィードバックする狙いもある。「医療は国境を越えて広がりにくい分野。国ごとに疾病構造や制度が異なるため、現地での学びや気付きが次の開発に生きる」と述べた。
後藤社長はNURAの拡大について「健診を文化として根付かせること」が最大の目的とする。「健診の普及が社会的貢献になると同時に、医療機器やAI、人材、病因のケータリングなど周辺分野の市場拡大にもつながる」とし、経済効率性と社会的貢献を両立するモデル事業として位置づけている。
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■「チェキ」が人気
医療以外では、イメージング事業を今後の柱の1つと位置づける。ベトナムではインスタントカメラ「インスタックス(日本名:チェキ)」が人気を集めており、「ベトナム人は写真が好きで、記録ではなく表現として撮影する層が増えている」と語り、ミラーレスカメラなどの販売強化に意欲を示した。
また、富士フイルムビジネスイノベーション(BI、旧富士ゼロックス)が北部ハイフォン市に構える複合機・プリンター工場では依然として堅調な紙需要に支えられている。後藤社長は「デジタルトランスフォーメーション(DX)に合わせたアプリやソフトウエア開発も進めていく」とした。
■ベトナムは「重要市場」
後藤社長は1990年代にベトナム駐在を経験。「当時7,000万人だった人口が1億人を超えた。中間層の拡大でマーケットとしての魅力は大きく高まっている」と述べた。「東南アジアの中でも今後の成長余地が大きい。生産拠点としても、米中関係の影響で多くの企業がシフトしており、ベトナムはますます重要な拠点になる」と期待を示した。
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