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日韓関係改善が輸出増に寄与年27億ドル規模、鉄鋼など恩恵

大韓商工会議所傘下の研究機関である持続成長イニシアチブ(SGI)が、日韓関係が5年前の水準に戻れば輸出は年間26億9,000万米ドル(約3,525億円)増えるとの見通しを示した。特に、鉄鋼や石油化学、家電、自動車部品などが恩恵を受けると分析した。元徴用工問題の進展や岸田文雄首相と尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領の首脳会談を機に、韓国では日韓関係改善による経済への好影響を期待する声が高まっている。

東京・銀座の老舗洋食店「煉瓦亭」で食事する岸田首相(右)と韓国の尹錫悦大統領=16日(内閣広報室提供)

SGIが2022年と日韓関係が悪化する前の2017~18年の対日輸出状況を比較・分析したところ、韓国の輸出全体に占める日本の比率は、17~18年の平均では4.9%だったが、22年は4.5%と0.4ポイント下落した。18年10月に出された日系企業への賠償を命じる元徴用訴訟の最高裁判所判決や、19年7月から日本が実施してきた半導体素材3品に対する輸出管理の厳格化措置が輸出に悪影響を与えたとみられる。
SGIはこのため、「日韓関係が17~18年の水準に改善されれば、韓国の対日輸出増大につながる」と指摘。年間26億9,000万米ドルの輸出拡大効果のほか、「国内の輸出増加率を0.43ポイント引き上げ、国内総生産(GDP)成長率も0.1ポイント上昇する可能性がある」との見方を示した。
韓国の23年の経済成長率を巡っては、国際通貨基金(IMF)が1月末、韓国のGDP伸び率見通しを昨年10月の2.0%から0.3ポイント下方修正して1.7%とした。経済協力開発機構(OECD)も今月17日、昨年11月の予想値(1.8%)から0.2ポイント引き下げて1.6%と見通している。下方修正が相次ぐ中、輸出増大につながる可能性が高い日韓関係の改善への期待感は大きい。
■輸出反騰のきっかけに
SGIはまた、韓国の主要輸出品13品目について対日輸出の状況と日韓関係の改善との関係性についても分析し、日本への輸出量が多い鉄鋼や石油製品、家電、自動車部品が関係改善の恩恵を受けやすいとの見方を明らかにした。
対日輸出に占める比率を17~18年平均と22年で比較した場合、最も下落幅が大きかったのは石油製品と自動車部品で同期間にそれぞれ1.8ポイント下がった。対日輸出の比率が最も大きい鉄鋼や家電もそれぞれ1.3ポイント下落したほか、無線通信が1.0ポイント下落、一般機械が0.6ポイント下落など、13品目の大部分がマイナスだった。
SGIは「韓日両国の関係悪化後に打撃が大きかった産業の輸出が関係悪化前の水準に戻れば、今年1~2月に前年同期比12.1%急落した輸出の反騰にも寄与するだろう」と予想する。
■対日投資拡大にも期待
輸出だけでなく、韓国企業の日本への投資が再び上向く可能性もある。韓国輸出入銀行によると、韓国企業の対日投資額は18年の13億2,000万米ドルから20年には16億4,000万米ドルと増加したが、21年は11億8,000万米ドル、昨年は9億9,000万米ドルまで減少している。新型コロナウイルス感染症の影響もあるが、日韓関係の冷え込みで対日投資を控える動きが韓国企業に広がったためとの見方が強い。
韓国企業が日本に設立した新規法人数の推移を見ると、日韓関係が悪化した19年を境に急減している。18年と19年は240社以上の新設があったが、20年以降はその半数以下に落ち込んでいる。
■半導体での協力強化も必要
このほど開催された日韓首脳会談で、日本政府は半導体素材3品目に対する輸出管理の厳格化措置の見直しに向けた手続きに着手した。措置が解除されれば、サムスン電子やSKハイニックスなど韓国の半導体メーカーが最先端の半導体生産に欠かせない素材を確保しやすくなるだけに、韓国側の期待は大きい。
SGIは「韓日関係の改善に会わせ、半導体メモリーという強みを持つ韓国と素材・設備分野で世界的な競争力を持つ日本の半導体分野での協業も強化していく必要がある」と助言する。
■「政治と経済の分離を」
このような分析をベースに、SGIはこれからの日韓関係について「政治と経済を分離して考え、日本との通商協力を強化していく必要がある」と結論付けている。
SGIのキム・チョング研究委員は「(日韓両国が)経済協力は政治的な問題とは独立して履行されなければならないという認識を共有すべきだ。企業の投資と技術協力が活発に行われるよう、政治的な不確実性も解消していくべきだ」と強調。「(それを支える方法として)15年に終了した通貨スワップの再開などを模索する必要がある」と付け加えた。

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SGIはこのため、「日韓関係が17~18年の水準に改善されれば、韓国の対日輸出増大につながる」と指摘。年間26億9,000万米ドルの輸出拡大効果のほか、「国内の輸出増加率を0.43ポイント引き上げ、国内総生産(GDP)成長率も0.1ポイント上昇する可能性がある」との見方を示した。
韓国の23年の経済成長率を巡っては、国際通貨基金(IMF)が1月末、韓国のGDP伸び率見通しを昨年10月の2.0%から0.3ポイント下方修正して1.7%とした。経済協力開発機構(OECD)も今月17日、昨年11月の予想値(1.8%)から0.2ポイント引き下げて1.6%と見通している。下方修正が相次ぐ中、輸出増大につながる可能性が高い日韓関係の改善への期待感は大きい。
■輸出反騰のきっかけに
SGIはまた、韓国の主要輸出品13品目について対日輸出の状況と日韓関係の改善との関係性についても分析し、日本への輸出量が多い鉄鋼や石油製品、家電、自動車部品が関係改善の恩恵を受けやすいとの見方を明らかにした。
対日輸出に占める比率を17~18年平均と22年で比較した場合、最も下落幅が大きかったのは石油製品と自動車部品で同期間にそれぞれ1.8ポイント下がった。対日輸出の比率が最も大きい鉄鋼や家電もそれぞれ1.3ポイント下落したほか、無線通信が1.0ポイント下落、一般機械が0.6ポイント下落など、13品目の大部分がマイナスだった。
SGIは「韓日両国の関係悪化後に打撃が大きかった産業の輸出が関係悪化前の水準に戻れば、今年1~2月に前年同期比12.1%急落した輸出の反騰にも寄与するだろう」と予想する。
■対日投資拡大にも期待
輸出だけでなく、韓国企業の日本への投資が再び上向く可能性もある。韓国輸出入銀行によると、韓国企業の対日投資額は18年の13億2,000万米ドルから20年には16億4,000万米ドルと増加したが、21年は11億8,000万米ドル、昨年は9億9,000万米ドルまで減少している。新型コロナウイルス感染症の影響もあるが、日韓関係の冷え込みで対日投資を控える動きが韓国企業に広がったためとの見方が強い。
韓国企業が日本に設立した新規法人数の推移を見ると、日韓関係が悪化した19年を境に急減している。18年と19年は240社以上の新設があったが、20年以降はその半数以下に落ち込んでいる。
■半導体での協力強化も必要
このほど開催された日韓首脳会談で、日本政府は半導体素材3品目に対する輸出管理の厳格化措置の見直しに向けた手続きに着手した。措置が解除されれば、サムスン電子やSKハイニックスなど韓国の半導体メーカーが最先端の半導体生産に欠かせない素材を確保しやすくなるだけに、韓国側の期待は大きい。
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