コロナ禍で鳴りを潜めていたベトナムの日系コンビニエンスストアが攻めの姿勢に転じている。セブン—イレブンが4月に店舗数で100店を突破し、進出7年目で大台乗せを達成。先行するミニストップは今年度の店舗数を前年度末の164店舗から100店舗以上上積みし、「南部ホーチミン市の店舗数シェアで1位を獲得したい」と鼻息は荒い。ベトナムでは、ファミリーマートを加えた日系3社は、米系サークルKと韓国系GS25に大きく水を開けられている。巻き返しのカギは、好立地への迅速な展開と弁当など都市部中間層のニーズを捉えた商品開発だと専門家は指摘している。
4月9日にホーチミン市3区で開業したセブン—イレブン100号店の様子(セブン—イレブン・ベトナムのフェイスブックから)
■セブン、越事業会社をJV化
セブン—イレブンは4月9日、ホーチミン市3区のレバンシー通りに100店舗目を開業した。ベトナム進出が2017年と後発の同社は競合他社に店舗数で後れを取っていたが、ついに大台に乗った。昨年1月時点の79店から21店増加した。
23会計年度(23年3月~24年2月)の目標に掲げた115店には届かなかった。セブン&アイ・ホールディングスの広報担当者によると、同国でコンビニ運営権を持つセブンシステムベトナム(SSV)との出店場所の調査や出店基準の見直しに当初の想定よりも時間がかかったことが影響した。
26年度に275店、28年度に500店を展開する目標は維持する。同社は23年にSSVへの追加投融資を実行し、従来のマスターフランチャイジー契約からより高い収益が見込める共同事業体(JV)にするなど出店加速に向けた体制整備を進めている。
体制変更に伴い23年6月に最高執行責任者(COO)などの主要ポストに米国や日本法人から人材を派遣したことで、業績は改善傾向にある。直近の1店舗平均EBITDA(利払い・税引き・償却前利益)は22年から7倍以上に拡大した。23年末時点の店舗当たりの1日平均売り上げは1,004米ドル(約15万7,500円)と同業他社を1~3割上回るという。
セブンは既存進出国で「食のコンビニ」として、高品質な食品の展開に力を入れている。ベトナムでも「ほかのコンビニと比べて食べ物や飲み物の種類が豊富」(ホーチミン市在住の女性)と評価は高い。今後はバインミー(サンドイッチ類)やシューマイなどホットフード(温かい軽食)の自社開発などに注力し、同社が「ヒーローアイテム」と呼ぶ販売個数が1店舗当たり1日20~30点の売れ筋商品を増やしていく。高収益が見込める都市中心部への出店も強化する。
■ミニストップ、HCMシェア1位狙う
ミニストップの23年度末時点の店舗数は前年度末から26店増えて164店とした。増加店舗数は前年度の18店から加速したが、目標としていた200店舗体制には届かなった。23年度は12億円の増収だったが、営業損益は4億700万円の損失と、前年度から2億円余り赤字幅が拡大した。22年度は第4四半期に初の四半期黒字となったものの、23年度は赤字が続いた。
ホーチミン市を中心に積極的な先行投資をして店舗網を拡大した一方で、景気減速による消費低迷や付加価値税(VAT)減税措置の期限切れ時の価格調整の遅れなどが黒字化できなかった要因だったという。ミニストップの藤本明裕社長は4月の決算説明会で、「早いスパンで変化するベトナムの経済環境への対応が遅れた」と反省を口にした。
ミニストップの広報担当者によると、同社はホーチミン市で店舗数シェア首位を取ることを目標に掲げる。23年末時点で市内に200店前後を出店する米系サークルK、GS25に次ぐ3位だが、24年は首位を狙うという。
藤本社長は決算説明会で、「戦う部門や強みを生かしていく部門をはっきりとさせながら、価格対応、ファストフード商品の差別化を進める」と説明し、「ベトナム事業リバイバル」を宣言した。24年度はミニスーパーを含む競合店に対抗する価格競争力の強化や厳選した好立地への出店加速、業務プロセスの改善などとともに3桁の出店と黒字化を目指す。
同社はこれまでに中国や韓国から撤退しており、海外市場で唯一残るベトナムで攻勢をかける。
ファミリーマートは事業計画を公表していないが、日系市場調査Asia Plus(アジアプラス)によると24年3月時点での店舗数は160店で、前年同月から14店舗増加した。22年4月~23年3月では3店舗増にとどまったが、出店速度を加速しているもようだ。
■「弁当」の質向上を
アジアプラスによると、ベトナムの主要なコンビニで最大のシェアを握るのは、ミニスーパーに近いウィンマート・プラスを除くと、米系サークルKで3月時点での店舗数は前年同月比24店増の447店だった。次いでGS25が44店増の245店となった。3番手以降に、ミニストップ、ファミマ、セブンが続いている。GS25は5月23日、ホーチミン市に300号店をオープンした。
業界関係者は、日系コンビニが上位2社を追い抜くには、中間所得者層の拡大に伴って増えてきている「高くても良いものを購入したい」というニーズに応える必要があると指摘する。コンビニ各社はレジ横で販売するファストフードに力を入れている一方で、「弁当はどのコンビニも市場の成長に追い付いていない」と指摘。日系コンビニは、中身にこだわった質の高い弁当などの中食を充実させることで、売り上げをこれまで以上に伸ばすことができると説明した。
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23会計年度(23年3月~24年2月)の目標に掲げた115店には届かなかった。セブン&アイ・ホールディングスの広報担当者によると、同国でコンビニ運営権を持つセブンシステムベトナム(SSV)との出店場所の調査や出店基準の見直しに当初の想定よりも時間がかかったことが影響した。
26年度に275店、28年度に500店を展開する目標は維持する。同社は23年にSSVへの追加投融資を実行し、従来のマスターフランチャイジー契約からより高い収益が見込める共同事業体(JV)にするなど出店加速に向けた体制整備を進めている。
体制変更に伴い23年6月に最高執行責任者(COO)などの主要ポストに米国や日本法人から人材を派遣したことで、業績は改善傾向にある。直近の1店舗平均EBITDA(利払い・税引き・償却前利益)は22年から7倍以上に拡大した。23年末時点の店舗当たりの1日平均売り上げは1,004米ドル(約15万7,500円)と同業他社を1~3割上回るという。
セブンは既存進出国で「食のコンビニ」として、高品質な食品の展開に力を入れている。ベトナムでも「ほかのコンビニと比べて食べ物や飲み物の種類が豊富」(ホーチミン市在住の女性)と評価は高い。今後はバインミー(サンドイッチ類)やシューマイなどホットフード(温かい軽食)の自社開発などに注力し、同社が「ヒーローアイテム」と呼ぶ販売個数が1店舗当たり1日20~30点の売れ筋商品を増やしていく。高収益が見込める都市中心部への出店も強化する。
■ミニストップ、HCMシェア1位狙う
ミニストップの23年度末時点の店舗数は前年度末から26店増えて164店とした。増加店舗数は前年度の18店から加速したが、目標としていた200店舗体制には届かなった。23年度は12億円の増収だったが、営業損益は4億700万円の損失と、前年度から2億円余り赤字幅が拡大した。22年度は第4四半期に初の四半期黒字となったものの、23年度は赤字が続いた。
ホーチミン市を中心に積極的な先行投資をして店舗網を拡大した一方で、景気減速による消費低迷や付加価値税(VAT)減税措置の期限切れ時の価格調整の遅れなどが黒字化できなかった要因だったという。ミニストップの藤本明裕社長は4月の決算説明会で、「早いスパンで変化するベトナムの経済環境への対応が遅れた」と反省を口にした。
ミニストップの広報担当者によると、同社はホーチミン市で店舗数シェア首位を取ることを目標に掲げる。23年末時点で市内に200店前後を出店する米系サークルK、GS25に次ぐ3位だが、24年は首位を狙うという。
藤本社長は決算説明会で、「戦う部門や強みを生かしていく部門をはっきりとさせながら、価格対応、ファストフード商品の差別化を進める」と説明し、「ベトナム事業リバイバル」を宣言した。24年度はミニスーパーを含む競合店に対抗する価格競争力の強化や厳選した好立地への出店加速、業務プロセスの改善などとともに3桁の出店と黒字化を目指す。
同社はこれまでに中国や韓国から撤退しており、海外市場で唯一残るベトナムで攻勢をかける。
ファミリーマートは事業計画を公表していないが、日系市場調査Asia Plus(アジアプラス)によると24年3月時点での店舗数は160店で、前年同月から14店舗増加した。22年4月~23年3月では3店舗増にとどまったが、出店速度を加速しているもようだ。
■「弁当」の質向上を
アジアプラスによると、ベトナムの主要なコンビニで最大のシェアを握るのは、ミニスーパーに近いウィンマート・プラスを除くと、米系サークルKで3月時点での店舗数は前年同月比24店増の447店だった。次いでGS25が44店増の245店となった。3番手以降に、ミニストップ、ファミマ、セブンが続いている。GS25は5月23日、ホーチミン市に300号店をオープンした。
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