1. 概要
9月13日に全国人民代表大会において、定年年齢及び最低納付年限の段階的延長実施に関する決定案が可決され、2025年1月1日より施行されます。本レポートでは次の点について紹介していきます。
① 今回の変更点
1)段階的な延長
2)柔軟な退職制度
② 企業としての留意点
2. 本文
① 今回の変更点
1)段階的な延長
今回の変更点に関する詳細: 《全国人民代表大会常务委员会关于实施渐进式延迟法定退休年龄的决定》(原文)で確認できる。
*女性幹部:管理職に従事する女性
定年年齢は段階的に引き上げられる。
養老年金には最低納付年限(24年現在15年)があり、定年年齢を迎えた時点で納めた年数がこの年限を満たさないと受給できない。この場合①定年後も年限を満たすまで毎月納める或は②不足分を一括で納める、いずれかで受給資格を得ることが可能。
2)柔軟な退職制度
定年年齢は延長されたが、必ずしも一律的、強制的な施行ではない。
→従業員は定年の前倒し或は延長の選択が可能。
前倒し条件:①最低納付年限を満たす②3年を超す前倒しではない③元の法定定年年齢(60・55・50)を下回らない。
延長条件:①会社と従業員が延長に合意②3年を超す延長ではない。
例:60歳2ヶ月が定年年齢だが、前倒しして60歳で退職し受給→〇
60歳2ヶ月が定年年齢だが、前倒しして59歳で退職し受給→×
60歳2ヶ月が定年年齢だが、本人と企業で合意し、63歳2か月で退職→〇
② 企業としての留意点
今回の制度変更により2025年開始の段階で、男性(60~63)、女性幹部(55~58)、女性(50~53)の範囲内で、個人と企業に定年年齢の選択が委ねられている。この新しい制度に対して会社としての方針及び社内制度が明確に定められておらず、定年を迎えた従業員ごとに個別に対応したとする。その場合、その個別対応が事例となり、以降の従業員も同様の対応を求めてくることが予想される。
そこで、まず現在所属する従業員の情報を整理し、部署ごとに所属人員の定年延長が業務上必要か否かの確認をする。その現状に基づき会社としての定年の前倒し及び延長に対する全体の方針を文書化し、従業員に提示する。提示の形式は就業規則を改訂し、個々人の署名による合意を得るのが望ましい。また個別の労働契約書についても定年に前もって本人と協議し、書面による署名の形での合意を得るのが望ましい。
定年を迎えるにあたり企業が従業員と確認しなければならない点は主に三つである。
① 定年の前倒し或は延長を望むか
② 女性従業員の場合幹部か否か
③ 最低納付年限を定年時に満たすか否か
女性幹部に関しての社会保険局の管理は地域によってことなるが、その区分がシステム上に登記されていることがある。しかし、登記された区分を本人が認識しておらず(一般従業員と登録されたが本人は幹部と思っていた等)、定年年齢の取扱についてトラブルとなるケースも散見される。そのため事前に会社と本人で確認し、労働契約書上に区分についても明記されることが望ましい。
また、個々の事情により最低納付年限を満たさない従業員もいる。この場合、不足した月数を延長して納付するか一括で納付すれば受給資格を得る。最低納付年限を満たさない場合は、従業員がその年限を満たすまでの雇用延長を希望する場合もあるだろう。事前に会社としても社内に納付年限を満たさない従業員がいないか確認されたほうがよい。
このような問題は思わぬところで労働争議につながる可能性もある。社内の定年制度については、早めに整えられることをお勧めする。
(2024年11月作成)
※各地の運用状況が異なる場合があります。実際の状況につきましては各所在地にて再度ご確認ください。
※本レポートにつきましては、有料顧問顧客様のみに送付させていただいており、本メール受取人様限りとさせて頂きます。
※このレポートはNAC名南のお客様への情報提供サービスの一環であり、この情報のみで、人事・労務の判断、意思決定を行う事は避けてください。弊社はこの情報内容に基づく意思決定に対して一切の責任を負いません。
※レポートで触れている事実、解釈は全てレポート執筆時点のものになり、将来時点の事実、解釈を保証するものではありません。
※レポートにある主観的意見はあくまでも筆者個人の意見又は主観であり、所属する団体を代表するものではありません。
※本レポートについての知的財産権その他一切の権利は、NAC名南グループに帰属します。
※本レポートに掲載の内容の無断複製・転載を禁じます。
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① 今回の変更点
1)段階的な延長
2)柔軟な退職制度
② 企業としての留意点
2. 本文
① 今回の変更点
1)段階的な延長
今回の変更点に関する詳細: 《全国人民代表大会常务委员会关于实施渐进式延迟法定退休年龄的决定》(原文)で確認できる。
*女性幹部:管理職に従事する女性
定年年齢は段階的に引き上げられる。
養老年金には最低納付年限(24年現在15年)があり、定年年齢を迎えた時点で納めた年数がこの年限を満たさないと受給できない。この場合①定年後も年限を満たすまで毎月納める或は②不足分を一括で納める、いずれかで受給資格を得ることが可能。
2)柔軟な退職制度
定年年齢は延長されたが、必ずしも一律的、強制的な施行ではない。
→従業員は定年の前倒し或は延長の選択が可能。
前倒し条件:①最低納付年限を満たす②3年を超す前倒しではない③元の法定定年年齢(60・55・50)を下回らない。
延長条件:①会社と従業員が延長に合意②3年を超す延長ではない。
例:60歳2ヶ月が定年年齢だが、前倒しして60歳で退職し受給→〇
60歳2ヶ月が定年年齢だが、前倒しして59歳で退職し受給→×
60歳2ヶ月が定年年齢だが、本人と企業で合意し、63歳2か月で退職→〇
② 企業としての留意点
今回の制度変更により2025年開始の段階で、男性(60~63)、女性幹部(55~58)、女性(50~53)の範囲内で、個人と企業に定年年齢の選択が委ねられている。この新しい制度に対して会社としての方針及び社内制度が明確に定められておらず、定年を迎えた従業員ごとに個別に対応したとする。その場合、その個別対応が事例となり、以降の従業員も同様の対応を求めてくることが予想される。
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定年を迎えるにあたり企業が従業員と確認しなければならない点は主に三つである。
① 定年の前倒し或は延長を望むか
② 女性従業員の場合幹部か否か
③ 最低納付年限を定年時に満たすか否か
女性幹部に関しての社会保険局の管理は地域によってことなるが、その区分がシステム上に登記されていることがある。しかし、登記された区分を本人が認識しておらず(一般従業員と登録されたが本人は幹部と思っていた等)、定年年齢の取扱についてトラブルとなるケースも散見される。そのため事前に会社と本人で確認し、労働契約書上に区分についても明記されることが望ましい。
また、個々の事情により最低納付年限を満たさない従業員もいる。この場合、不足した月数を延長して納付するか一括で納付すれば受給資格を得る。最低納付年限を満たさない場合は、従業員がその年限を満たすまでの雇用延長を希望する場合もあるだろう。事前に会社としても社内に納付年限を満たさない従業員がいないか確認されたほうがよい。
このような問題は思わぬところで労働争議につながる可能性もある。社内の定年制度については、早めに整えられることをお勧めする。
(2024年11月作成)
※各地の運用状況が異なる場合があります。実際の状況につきましては各所在地にて再度ご確認ください。
※本レポートにつきましては、有料顧問顧客様のみに送付させていただいており、本メール受取人様限りとさせて頂きます。
※このレポートはNAC名南のお客様への情報提供サービスの一環であり、この情報のみで、人事・労務の判断、意思決定を行う事は避けてください。弊社はこの情報内容に基づく意思決定に対して一切の責任を負いません。
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