弊社のスタッフに文書作成を依頼した際に、詳細な内容を教えた後、「できますか?」と尋ねたところ、「はい、できます。」と答えました。期日が来て、状況を確認したら、作成された文書は予定と異なる内容になっていました。その理由を尋ねたところ、「私はこのように理解したから、変更しました。」とのことでした。「なぜ、相談せずに、許可なく自己判断したのですか?」と聞くと、「この仕事は任せられたから、自分で判断できると思ったからです。」という答えがありました。
同じようような経験をされた方も多いのではないでしょうか。他にも多くのシチュエーションがあります。
• 仕事をお願いしたら、全く報告がない
• メールで外部とやりとりする際に、故意に上司へCCしない
• 報告がないので、今、何をやっているか周りは全くわからない
• 報告を求めたら、違うやり方でやっていることが発覚する
• なぜ違うやり方をしているか聞いたら、他のやり方のほうがよいと言う
等々。
相談することは個人の成長や問題解決に非常に有効です。問題や悩みが自分自身で解決できない時は、他の人からアドバイスを得ることができます。他の人には異なる視点や経験があり、自分にはないアプローチを教えてもらえることもあります。相談することで自分の考えや意見を明確化でき、意見に自信を持つこともできれば、他の人とのコミュニケーションを深めることもできます。少し勇気が必要ですが、上司に責任転嫁することもできるため、相談しないより相談する方が明らかに賢明です。しかし現実には、スタッフにこのことを教えても、頭では理解してくれてますが、実際はなかなか相談してくれないので困っています。
考察の結果、相談を避ける理由は以下のようになります。
①問題が認識されていない
自分が知らないことを知らないということは幸せな場合があります。スタッフに問題があるか聞いたところ、ほとんどの人が「問題はない」と答えていますが、これは無知の幸せといいますか、問題を認知していないことを示しているかもしれません(それは相談しづらいという理由にもなりうる)。問題を認知しない理由にはいろいろありますが、目標が明確でない、あるいは目標設定が不十分なこともあります。その為、チームのパフォーマンスを数値で確認し、平均値以上のコミットメントを求めることがよいとされています。
②問題が認識されていても、自分は解決する役割ではない、又は解決する必要がないと考えられている
例えば、日本人はゴミを見つけた時、自分が捨てた物でなくても片付けますが、ベトナム人は他人のことだと考えて放置します。これは学校、家庭、社会の仕組みも関係していて、国民性とも言えます。ベトナムの学校では勉強だけが重要視され、日本で行われるような掃除、給食の手伝い、運動会、部活などはありません。親がバイクで学校まで送ってくれ、給食は栄養士のおばあさんが担当し、勉強が終わったら塾に向かいます。家庭では家事はお母さんの仕事で、子供たちは勉強だけに集中すればよいと考えている家庭も多いため、何もできないまま社会人になるということもあります。職場では他人に興味を持たない、後輩に関心を示さないという環境があります。この無関心さが原因で、他人の課題を積極的に解決することができないと私は思います。
③いろいろな心理的な障壁の存在
相談することは、自分ができていないことを認め、他者のアドバイスを受け入れるプロセスです。これは、自分の殻を破り、他人を受け入れる勇気を必要とします。また、アドバイスに従う勇気も重要です。社会や家庭において相談する文化が根付いていないため、保護者や学校の先生は相談を受けた際、相手の意見をじっくり聞くよりも、すぐに否定的な意見を述べたり、自分たちが正しいと考える方法を押し付ける傾向があります。困っていることを打ち明けても、さらに否定されてしまうことで、相談しようという気持ちが薄れ、やがて自分を守るために相談を避ける習慣が身についてしまいます。社会に出て少しずつ自信を取り戻し、成長を重ねることで、相談することに前向きになれるものの、そのような自己回復のプロセスがなければ、心理的な障壁を乗り越えるのは容易ではありません。
④問題が認識されていて、解決するために相談したいが、なかなか相談するのが困難な状況である。
例えば、先に挙げた2点はスキルを磨く内部的なものである一方、相談しづらいという感覚は外部的と言えるかもしれません。人間は極めてアナログな生き物で、相談すべきと分かっていても相談しづらい雰囲気であれば、大半の人は相談を辞めてしまいます。私はビジネスオーナーであることもあり、優しい自分をいくら演じてもスタッフからは敬遠されがちです。そこで、例えば、子供と一緒に見たいテレビ番組について若者に人気のものをスタッフに聞いてみたり、若者に人気のスイーツ店やレストラン、ファッションの話題を取り入れることも一つの方法かもしれません。
スタッフに思考方法を教えるためには、まず現状と将来のビジョンのギャップを明確に理解させることが重要です。ベトナム社会では、気候的に生活しやすいため、将来を深く考えたり予測する習慣が根付いていないかもしれません。そのため、問題意識を高めるには、現状をしっかり認識し、将来のビジョンを具体的にイメージする力を養う必要があります。このイメージは、今すぐのことから近い未来、さらに遠い将来まで様々な時間軸に渡るもので、人生のイベントに関連づけながらスタッフと情報を共有し、理想の姿を描かせることが大切です。例えば、キャリアのこと、結婚、出産、子供の育成、子供の海外留学、老後など様々なことが考えられます。こうしたプロセスを繰り返すことで、スタッフの視野が広がり、問題を正確に捉える力がつき、結果として問題意識が高まるでしょう。
相談し合い助け合う文化を会社のDNAにするためには、日常的にお互いに興味を持ち、考えを共有することが重要です。例えば、社内の定例会議は内容が決まっているため、問題がなければ早く終わりがちで、マンネリ化することも多いでしょう。しかし、会議の後に少し時間をとり、スナックを食べながらコーラを飲んで、互いのちょっとした自慢できること、または、困っていることを共有する時間を設けるのは良い取り組みです。最初は不自然でぎこちないかもしれませんが、続けることで次第にチームワークや一体感が生まれ、楽しめるようになるはずです。相談ができない状況は、個人の問題ではなく企業文化の問題だと考えられるため、それを解決するために全員が協力し、会議後の相談時間を有効活用することが大切です。この取り組みは、会社の文化を根本的に変えるプロジェクトであり、全員で自分の殻を破り、一体感を持つことが必要だと説明すれば、理解されるはずです(もちろん、上記の問題分析をしっかりと行っていることが条件です。それがなければ、単なるどうでもよい雑談で終わってしまいます)。
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同じようような経験をされた方も多いのではないでしょうか。他にも多くのシチュエーションがあります。
• 仕事をお願いしたら、全く報告がない
• メールで外部とやりとりする際に、故意に上司へCCしない
• 報告がないので、今、何をやっているか周りは全くわからない
• 報告を求めたら、違うやり方でやっていることが発覚する
• なぜ違うやり方をしているか聞いたら、他のやり方のほうがよいと言う
等々。
相談することは個人の成長や問題解決に非常に有効です。問題や悩みが自分自身で解決できない時は、他の人からアドバイスを得ることができます。他の人には異なる視点や経験があり、自分にはないアプローチを教えてもらえることもあります。相談することで自分の考えや意見を明確化でき、意見に自信を持つこともできれば、他の人とのコミュニケーションを深めることもできます。少し勇気が必要ですが、上司に責任転嫁することもできるため、相談しないより相談する方が明らかに賢明です。しかし現実には、スタッフにこのことを教えても、頭では理解してくれてますが、実際はなかなか相談してくれないので困っています。
考察の結果、相談を避ける理由は以下のようになります。
①問題が認識されていない
自分が知らないことを知らないということは幸せな場合があります。スタッフに問題があるか聞いたところ、ほとんどの人が「問題はない」と答えていますが、これは無知の幸せといいますか、問題を認知していないことを示しているかもしれません(それは相談しづらいという理由にもなりうる)。問題を認知しない理由にはいろいろありますが、目標が明確でない、あるいは目標設定が不十分なこともあります。その為、チームのパフォーマンスを数値で確認し、平均値以上のコミットメントを求めることがよいとされています。
②問題が認識されていても、自分は解決する役割ではない、又は解決する必要がないと考えられている
例えば、日本人はゴミを見つけた時、自分が捨てた物でなくても片付けますが、ベトナム人は他人のことだと考えて放置します。これは学校、家庭、社会の仕組みも関係していて、国民性とも言えます。ベトナムの学校では勉強だけが重要視され、日本で行われるような掃除、給食の手伝い、運動会、部活などはありません。親がバイクで学校まで送ってくれ、給食は栄養士のおばあさんが担当し、勉強が終わったら塾に向かいます。家庭では家事はお母さんの仕事で、子供たちは勉強だけに集中すればよいと考えている家庭も多いため、何もできないまま社会人になるということもあります。職場では他人に興味を持たない、後輩に関心を示さないという環境があります。この無関心さが原因で、他人の課題を積極的に解決することができないと私は思います。
③いろいろな心理的な障壁の存在
相談することは、自分ができていないことを認め、他者のアドバイスを受け入れるプロセスです。これは、自分の殻を破り、他人を受け入れる勇気を必要とします。また、アドバイスに従う勇気も重要です。社会や家庭において相談する文化が根付いていないため、保護者や学校の先生は相談を受けた際、相手の意見をじっくり聞くよりも、すぐに否定的な意見を述べたり、自分たちが正しいと考える方法を押し付ける傾向があります。困っていることを打ち明けても、さらに否定されてしまうことで、相談しようという気持ちが薄れ、やがて自分を守るために相談を避ける習慣が身についてしまいます。社会に出て少しずつ自信を取り戻し、成長を重ねることで、相談することに前向きになれるものの、そのような自己回復のプロセスがなければ、心理的な障壁を乗り越えるのは容易ではありません。
④問題が認識されていて、解決するために相談したいが、なかなか相談するのが困難な状況である。
例えば、先に挙げた2点はスキルを磨く内部的なものである一方、相談しづらいという感覚は外部的と言えるかもしれません。人間は極めてアナログな生き物で、相談すべきと分かっていても相談しづらい雰囲気であれば、大半の人は相談を辞めてしまいます。私はビジネスオーナーであることもあり、優しい自分をいくら演じてもスタッフからは敬遠されがちです。そこで、例えば、子供と一緒に見たいテレビ番組について若者に人気のものをスタッフに聞いてみたり、若者に人気のスイーツ店やレストラン、ファッションの話題を取り入れることも一つの方法かもしれません。
スタッフに思考方法を教えるためには、まず現状と将来のビジョンのギャップを明確に理解させることが重要です。ベトナム社会では、気候的に生活しやすいため、将来を深く考えたり予測する習慣が根付いていないかもしれません。そのため、問題意識を高めるには、現状をしっかり認識し、将来のビジョンを具体的にイメージする力を養う必要があります。このイメージは、今すぐのことから近い未来、さらに遠い将来まで様々な時間軸に渡るもので、人生のイベントに関連づけながらスタッフと情報を共有し、理想の姿を描かせることが大切です。例えば、キャリアのこと、結婚、出産、子供の育成、子供の海外留学、老後など様々なことが考えられます。こうしたプロセスを繰り返すことで、スタッフの視野が広がり、問題を正確に捉える力がつき、結果として問題意識が高まるでしょう。
相談し合い助け合う文化を会社のDNAにするためには、日常的にお互いに興味を持ち、考えを共有することが重要です。例えば、社内の定例会議は内容が決まっているため、問題がなければ早く終わりがちで、マンネリ化することも多いでしょう。しかし、会議の後に少し時間をとり、スナックを食べながらコーラを飲んで、互いのちょっとした自慢できること、または、困っていることを共有する時間を設けるのは良い取り組みです。最初は不自然でぎこちないかもしれませんが、続けることで次第にチームワークや一体感が生まれ、楽しめるようになるはずです。相談ができない状況は、個人の問題ではなく企業文化の問題だと考えられるため、それを解決するために全員が協力し、会議後の相談時間を有効活用することが大切です。この取り組みは、会社の文化を根本的に変えるプロジェクトであり、全員で自分の殻を破り、一体感を持つことが必要だと説明すれば、理解されるはずです(もちろん、上記の問題分析をしっかりと行っていることが条件です。それがなければ、単なるどうでもよい雑談で終わってしまいます)。"
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