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《安全》カンボジアと国境で軍事衝突民間人含む12人死亡、激化に懸念

タイとカンボジアの国境地帯で24日、10件以上の軍事衝突が発生した。各地で交戦状態に陥り、タイ側では12人が死亡、31人が負傷した。死者の半数以上は子どもを含む民間人とされる。両国では今年5月の小規模な交戦を機に、国境を挟んで緊張状態が続いていた。先制攻撃を巡っては両軍ともに「相手側が仕掛けた」と主張しており、紛争の激化と長期化が強く懸念される。
タイ軍の発表によると、24日午前8時20分に東北部スリン県パノムドンラック郡タ・ムアン・トム寺院のタイ軍ムーパ基地から200メートルの地点でカンボジア軍が発砲。タイ軍も応戦し、国境地帯の緊張が一気に高まった。その後、東北部スリン、シーサケート、ウボンラチャタニ、ブリラム県の国境各地で武力衝突や砲撃が発生し、各地で民間人が避難を開始した。
緊迫する情勢を受け、タイ空軍は午前10時51分、F16戦闘機6機をウボンラチャタニ県チョンアンマーに展開。カンボジア領内の軍拠点2カ所を標的として空爆を実施した。タイ国防省は「空爆は計画に基づいて実施された」と説明した。
午前11時30分ごろには、シーサケート県カンタララック郡で給油所「PTTステーション」がロケット砲の直撃を受けた。現場に居合わせた少なくとも6人が死亡、10人が負傷した。民間人の甚大な被害に、タイ陸軍はカンボジアを糾弾。国家の主権と国民の安全を守るため、軍事的手段を行使する用意があると明言した。
24日は少なくとも10件の武力衝突が確認され、うち半数以上が午後3時時点で継続している。
職務停止中のペートンタン首相は「カンボジアが先に発砲した」と述べ、強い非難を表明。また、「政府や軍に対して反撃の遅れを指摘する声もあったが、流血の回避を最優先に考えてきた」とタイ政府としての姿勢を強調した。
プムタム首相代行も同様に、カンボジアの発砲を先制攻撃だと糾弾。「主権を決して失わない」と表明した。

プムタム首相代行(前列)は24日、カンボジアとの軍事衝突を受け、「主権を決して失わない」と表明した(政府提供)

一方、カンボジア外務省は声明で、同国軍による挑発行為のない状況下でタイ軍が国境付近のカンボジア拠点を計画的に攻撃したと主張している。
タイ国営クルンタイ銀行は24日午後、被害を受けた4県と東部サケオ、チャンタブリ、トラート県にある14支店の一時休業を発表。地域住民と顧客の安全確保を優先する予防的措置であると説明した。
■5月から続く緊張
両国間では5月28日にウボンラチャタニ県の国境地帯で交戦が発生し、カンボジア兵1人が死亡した事件を機に、急速に緊張が高まった。6月には両国の陸路国境が閉鎖。カンボジアはタイからの石油やガスなどの輸入を停止した。
今月16日と23日にはウボンラチャタニ県で国境パトロール中の兵士が対人地雷を踏み、負傷する事件が続いた。タイ側はカンボジア内戦時代の地雷が残存したものではなく、最近設置されたと判断し、対人地雷禁止条約(オタワ条約)締約国会議の議長国を務める日本に条約違反を報告する意向を表明していた。
地雷設置による兵士の負傷を受け、プムタム氏は23日、バンコク駐在のカンボジア大使に国外退去を求め、外交関係を格下げすると発表した。タイ軍はこれを受け、24日から国境検問所4カ所と国境地帯のタ・ムアン・トム寺院、タ・クワーイ寺院の閉鎖を命じた。
タイとカンボジアは国境地帯の帰属を巡り、過去にも対立が激化した時期がある。直近では2011年に交戦が発生し、タイ側で民間人を含めた死傷者が出ていた。

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午前11時30分ごろには、シーサケート県カンタララック郡で給油所「PTTステーション」がロケット砲の直撃を受けた。現場に居合わせた少なくとも6人が死亡、10人が負傷した。民間人の甚大な被害に、タイ陸軍はカンボジアを糾弾。国家の主権と国民の安全を守るため、軍事的手段を行使する用意があると明言した。
24日は少なくとも10件の武力衝突が確認され、うち半数以上が午後3時時点で継続している。
職務停止中のペートンタン首相は「カンボジアが先に発砲した」と述べ、強い非難を表明。また、「政府や軍に対して反撃の遅れを指摘する声もあったが、流血の回避を最優先に考えてきた」とタイ政府としての姿勢を強調した。
プムタム首相代行も同様に、カンボジアの発砲を先制攻撃だと糾弾。「主権を決して失わない」と表明した。
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■5月から続く緊張
両国間では5月28日にウボンラチャタニ県の国境地帯で交戦が発生し、カンボジア兵1人が死亡した事件を機に、急速に緊張が高まった。6月には両国の陸路国境が閉鎖。カンボジアはタイからの石油やガスなどの輸入を停止した。
今月16日と23日にはウボンラチャタニ県で国境パトロール中の兵士が対人地雷を踏み、負傷する事件が続いた。タイ側はカンボジア内戦時代の地雷が残存したものではなく、最近設置されたと判断し、対人地雷禁止条約(オタワ条約)締約国会議の議長国を務める日本に条約違反を報告する意向を表明していた。
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