高速バス大手のWILLER(ウィラー、大阪市)がマレーシアで手がけるオンデマンド乗り合いバンサービス(DRT)「mobi(モビ)」は今月、首都クアラルンプール中心部や、日本人駐在員が多く暮らす北西部のモントキアラなどで運行を開始した。日本の経済産業省のグローバルサウス事業向け補助金を活用し、事業拡大を図る。【降旗愛子】
ウィラーの合弁が手がけるオンデマンド乗り合いバンサービス(DRT)「mobi(モビ)」は今月、クアラルンプール中心部などで運行開始した(NNA撮影)
今月に運行を開始したのは、クアラルンプール中心部の「ららぽーとブキビンタン」「KLセントラル」のほか、日本人が多い「モントキアラ」、首都圏スランゴール州の州都「シャアラム」の4路線。運賃は大人1人につき2~3リンギ(約70~100円)となる。
ららぽーとブキビンタン路線は、三井不動産が地場と合弁で手がける商業施設「三井ショッピングパーク・ららぽーとブキビンタン・シティーセンター(BBCC)」とのタイアップで、同施設を発着点とし、繁華街のブキビンタンなどの「ゴールデントライアングル」エリアや、観光地のチャイナタウンなど市内中心部を巡る。9月以降に、ららぽーとブキビンタンとモントキアラを結ぶシャトルバスの運行も開始する。
ららぽーとブキビンタン路線は三井ショッピングパーク・ららぽーとBBCCとのタイアップで運行する。開業から4年目を迎えたららぽーとBBCCは大規模改装の一環として、乗り合いバンや高速バス、空港シャトルが発着する交通ハブを開設した(NNA撮影)
ウィラーは昨年12月、「グローバルサウス未来志向型共創等事業費補助金(我が国企業によるインフラ海外展開促進調査:二次公募)」の間接補助事業者として採択された。マレーシアで社会問題となっている渋滞対策や低炭素化の推進に向けて、人工知能(AI)を活用したオンデマンド交通と、鉄道、路線バス、都市間バスを連携させた「MaaS(マース、ITを活用して多様な交通手段を一体的に提供するサービス)モデル」を実証する。
日本の安全運行管理デジタルトランスフォーメーション(DX)システムを導入し、安全における運行品質を向上させ、公共交通の分担率を上げることを目指すとしている。
■「交通空白」やマイカー依存解消
「mobi(モビ)」のアプリ操作画面。クアラルンプール中心部の「ららぽーとブキビンタン」線は、ららぽーとを基点に市内中心部の繁華街や観光地で乗り降りできる。運賃は1回3リンギ。
天候が不安定な熱帯であり、クルマ社会のマレーシアで、新たな交通手段として広がりつつあるのがアプリを利用した乗り合いバンサービスだ。路線バスとオンライン配車サービスの中間のような仕組みで、アプリ上で停車・降車ポイントを選び、バンを呼び出す。決まった停車場所でしか乗り降りできず、乗り合いとなるため多少時間はかかるものの、バスよりは運行状況が明確で、配車サービスより運賃を抑えられる。
乗り合いバンサービスの運行に当たり、鍵となるのは鉄道やバス高速輸送システム(BRT)などとの接続性だ。マレーシア政府系交通インフラ投資会社プラサラナ・マレーシアは、鉄道駅と周辺住宅地などを結ぶ「ラストマイル輸送」の強化に向けて、路線バスより小回りの利くDRTの拡大を進めている。モビも、同社から首都圏で複数路線の運行を請け負っている。
モントキアラ線は、日系飲食店の多いスリハタマス地区、「パブリカ・ショッピング・ギャラリー」のあるソラリスドゥタマス地区や、展示場「マレーシア国際貿易・展示センター(MITEC)」などにもアクセスできる。運賃は1回3リンギ。
一方、スランゴール州政府が独自に実施していたDRT事業は現在、正式導入に向けた入札を実施するとして運行停止中だ。
ウィラーの広報担当者は今後の事業展開について、グローバルサウス事業補助金の一環として、移動手段の確保が困難となる「交通空白」やマイカー依存、運行品質などの課題を解決することを目的に「実証内容にあったエリアの展開を予定している」と説明した。
ウィラーは2023年、シンガポールの子会社を通じて公共交通事業を中核事業の一つとするマレーシアのコングロマリット(複合企業)ナディコープ・ホールディングスと提携し、乗り合いバンサービスを開始した。
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ららぽーとブキビンタン路線は、三井不動産が地場と合弁で手がける商業施設「三井ショッピングパーク・ららぽーとブキビンタン・シティーセンター(BBCC)」とのタイアップで、同施設を発着点とし、繁華街のブキビンタンなどの「ゴールデントライアングル」エリアや、観光地のチャイナタウンなど市内中心部を巡る。9月以降に、ららぽーとブキビンタンとモントキアラを結ぶシャトルバスの運行も開始する。
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ららぽーとブキビンタン路線は三井ショッピングパーク・ららぽーとBBCCとのタイアップで運行する。開業から4年目を迎えたららぽーとBBCCは大規模改装の一環として、乗り合いバンや高速バス、空港シャトルが発着する交通ハブを開設した(NNA撮影)[/caption]
ウィラーは昨年12月、「グローバルサウス未来志向型共創等事業費補助金(我が国企業によるインフラ海外展開促進調査:二次公募)」の間接補助事業者として採択された。マレーシアで社会問題となっている渋滞対策や低炭素化の推進に向けて、人工知能(AI)を活用したオンデマンド交通と、鉄道、路線バス、都市間バスを連携させた「MaaS(マース、ITを活用して多様な交通手段を一体的に提供するサービス)モデル」を実証する。
日本の安全運行管理デジタルトランスフォーメーション(DX)システムを導入し、安全における運行品質を向上させ、公共交通の分担率を上げることを目指すとしている。
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「mobi(モビ)」のアプリ操作画面。クアラルンプール中心部の「ららぽーとブキビンタン」線は、ららぽーとを基点に市内中心部の繁華街や観光地で乗り降りできる。運賃は1回3リンギ。[/caption]
天候が不安定な熱帯であり、クルマ社会のマレーシアで、新たな交通手段として広がりつつあるのがアプリを利用した乗り合いバンサービスだ。路線バスとオンライン配車サービスの中間のような仕組みで、アプリ上で停車・降車ポイントを選び、バンを呼び出す。決まった停車場所でしか乗り降りできず、乗り合いとなるため多少時間はかかるものの、バスよりは運行状況が明確で、配車サービスより運賃を抑えられる。
乗り合いバンサービスの運行に当たり、鍵となるのは鉄道やバス高速輸送システム(BRT)などとの接続性だ。マレーシア政府系交通インフラ投資会社プラサラナ・マレーシアは、鉄道駅と周辺住宅地などを結ぶ「ラストマイル輸送」の強化に向けて、路線バスより小回りの利くDRTの拡大を進めている。モビも、同社から首都圏で複数路線の運行を請け負っている。[caption id="attachment_28139" align="aligncenter" width="620"]
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一方、スランゴール州政府が独自に実施していたDRT事業は現在、正式導入に向けた入札を実施するとして運行停止中だ。
ウィラーの広報担当者は今後の事業展開について、グローバルサウス事業補助金の一環として、移動手段の確保が困難となる「交通空白」やマイカー依存、運行品質などの課題を解決することを目的に「実証内容にあったエリアの展開を予定している」と説明した。
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