第325回
大内さん:みらい先生、こんにちは。令和7年9月から2年間、中国子会社に赴任することになりました。念願だった海外子会社での勤務が叶い、とても嬉しくて張り切っています。
みらい:それは良かったですね。おめでとうございます。
大内さん:ありがとうございます。ところで、今回の赴任にあたり、現在の勤務先である日本の親会社で出国時年末調整をしてもらいます。私はこの親会社からの給与以外に所得はなく、年間10万円超の医療費の支払いや住宅ローンなどもありませんが、この場合、私の日本での課税関係は出国時年末調整で完結して、確定申告は特に不要ということになりますか。
みらい:そうですね。出国時年末調整をしていれば、原則として確定申告は不要になります。ですが、今年は令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等の影響で、確定申告などの手続きをした方が有利になる場合があります。大内さんのように、令和7年分の給与の最後の支払いが11月30日以前になって年末調整を行う人の場合、確定申告などの手続きを行う方が有利になると考えられます。
大内さん:そうなのですか。詳しく説明していただけますか。
みらい:令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等が適用されるのは、令和7年12月1日以後に行われる年末調整です。一方で、令和7年分の最後の給与を11月30日以前に支払った場合の年末調整では、令和7年度の税制改正は適用されず、従前どおりの金額で年末調整が行われることになります。したがって、令和7年9月に出国する大内さんの場合には、税制改正前の金額で出国時年末調整が行われることになりますが、確定申告などの手続きをすることで、改正後の控除等の適用を受けることができます。
大内さん:今年は特別なのですね。具体的に、どのような手続きをすれば改正後の控除などが受けられるのでしょうか。
みらい:まず、出国時は会社で年末調整をしてもらい、令和7年12月1日以後に準確定申告書を提出するという手続きになります。ただし、国内に住所・居所を有しない間に準確定申告を提出する場合には、納税管理人を選任する必要があります。
大内さん:なるほど、よくわかりました。ところで、この手続きをすることで、大体いくらくらいの税額が有利になるのでしょうか。
みらい:所得によって変わりますが、一例として、年収700万円(収入は給与のみ)で合計所得金額520万円、所得控除を差し引いた後の課税される所得金額が360万円の人であれば、基礎控除額が48万円(改正前)から63万円(改正後)になりますので、基礎控除だけについて言えば、控除増加額15万円×所得税率20%で3万円有利になると考えられます。また、新たに創設された特定親族特別控除や、扶養親族等の所得要件の改正によって、これまで扶養控除等の対象とならなかったご家族の方についても控除等ができるようになる場合もあります。ただし、控除が増えて所得が変われば、それに応じて税率も変更になる可能性がありますので、試算する際は注意が必要です。
大内さん:よく分かりました。どうもありがとうございました。
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大内さん:みらい先生、こんにちは。令和7年9月から2年間、中国子会社に赴任することになりました。念願だった海外子会社での勤務が叶い、とても嬉しくて張り切っています。
みらい:それは良かったですね。おめでとうございます。
大内さん:ありがとうございます。ところで、今回の赴任にあたり、現在の勤務先である日本の親会社で出国時年末調整をしてもらいます。私はこの親会社からの給与以外に所得はなく、年間10万円超の医療費の支払いや住宅ローンなどもありませんが、この場合、私の日本での課税関係は出国時年末調整で完結して、確定申告は特に不要ということになりますか。
みらい:そうですね。出国時年末調整をしていれば、原則として確定申告は不要になります。ですが、今年は令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等の影響で、確定申告などの手続きをした方が有利になる場合があります。大内さんのように、令和7年分の給与の最後の支払いが11月30日以前になって年末調整を行う人の場合、確定申告などの手続きを行う方が有利になると考えられます。
大内さん:そうなのですか。詳しく説明していただけますか。
みらい:令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等が適用されるのは、令和7年12月1日以後に行われる年末調整です。一方で、令和7年分の最後の給与を11月30日以前に支払った場合の年末調整では、令和7年度の税制改正は適用されず、従前どおりの金額で年末調整が行われることになります。したがって、令和7年9月に出国する大内さんの場合には、税制改正前の金額で出国時年末調整が行われることになりますが、確定申告などの手続きをすることで、改正後の控除等の適用を受けることができます。
大内さん:今年は特別なのですね。具体的に、どのような手続きをすれば改正後の控除などが受けられるのでしょうか。
みらい:まず、出国時は会社で年末調整をしてもらい、令和7年12月1日以後に準確定申告書を提出するという手続きになります。ただし、国内に住所・居所を有しない間に準確定申告を提出する場合には、納税管理人を選任する必要があります。
大内さん:なるほど、よくわかりました。ところで、この手続きをすることで、大体いくらくらいの税額が有利になるのでしょうか。
みらい:所得によって変わりますが、一例として、年収700万円(収入は給与のみ)で合計所得金額520万円、所得控除を差し引いた後の課税される所得金額が360万円の人であれば、基礎控除額が48万円(改正前)から63万円(改正後)になりますので、基礎控除だけについて言えば、控除増加額15万円×所得税率20%で3万円有利になると考えられます。また、新たに創設された特定親族特別控除や、扶養親族等の所得要件の改正によって、これまで扶養控除等の対象とならなかったご家族の方についても控除等ができるようになる場合もあります。ただし、控除が増えて所得が変われば、それに応じて税率も変更になる可能性がありますので、試算する際は注意が必要です。
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