東南アジアで2年に1度開かれるスポーツの祭典「東南アジア競技大会(SEAゲームズ)2025」が9日、タイの首都バンコクで正式に開幕する。タイでの開催は18年ぶり。タイ政府は来年1月に続けて開幕する「東南アジア諸国連合(ASEAN)パラゲームズ」と合わせて52億8,500万バーツ(約257億円)の経済効果を狙い、開催に向けて4億5,600万バーツを投じた。観光業の回復が遅れる中、スポーツツーリズムの発信地として存在感を示したい考えだ。
「東南アジア競技大会(SEAゲームズ)2025」が9日、タイの首都バンコクで開幕する=11月、バンコク(NNA撮影)
「東南アジアのオリンピック」とも称されるSEAゲームズは、タイでは2007年以来18年ぶりの開催となる。バンコク首都圏、東部チョンブリ県を中心に20日まで実施される。当初は南部ソンクラー県も主要な開催地として予定されていたが、11月下旬に発生した洪水のためバンコクなどに会場を移した。
すでにいくつかの種目は競技が始まっており、9日にバンコクのラジャマンガラ国立競技場で開かれる開会式をもって正式に開幕する。1万席用意された開会式のチケットは国民向けの先行販売で即日完売したため、さらに1万席を追加した2次募集も実施された。
6月発表時点での登録選手は東南アジア諸国連合(ASEAN)の11カ国(東ティモール含む)から1万2,506人。タイからは最多の1,807人が出場を予定する。国境地帯でタイとの緊張状態が続くカンボジアは当初1,515人の選手を登録していたが、11月27日に「選手の安全保障」などを理由として21競技中8競技での出場辞退を発表した。
実施競技はオリンピックを上回る50で、ムエタイ(タイ式キックボクシング)やインドネシアの伝統武術「プンチャックシラット」、チェスやeスポーツも含まれる。種目数は574に上る。タイは半数近い241種目での金メダル獲得を目標に掲げている。
タイのアタコーン観光・スポーツ相は10月、SEAゲームズの開催を通じて「地域のスポーツ拠点としてのタイの能力を示す」と表明。タイ国政府観光庁(TAT)と連携し、開催地の安全性や利便性の向上、誘客に注力しているとした。
タイ政府はSEAゲームズ・パラゲームズの開催を通じ、周辺地域の観光活性化などを軸に52億8,500万バーツの経済効果を見込んでいる。大会開催自体の投資額は4億5,600万バーツ。さらに、両大会の開会式と閉会式、聖火リレーに1億6,600万バーツ、選手や運営スタッフらに関わる費用として2億6,000万バーツ、国際放送センターの設置と広報には3,000万バーツの予算を割り当てた。
■スポーツツーリズムを推進
観光・スポーツ省とTATは、25年の観光戦略としてスポーツツーリズムの推進を掲げている。今年2月には、「アメージング・タイランド・グランド・ツーリズム&スポーツ・イヤー2025」と称した施策を発表。大規模なスポーツイベントの開催を、外国人観光客の誘致につなげる方針を示した。
これに沿って、25年はSEAゲームズのほか、「アメージング・タイランド・マラソン」や世界最高峰の二輪車レース「ロードレース世界選手権(モトGP)」、国際バレーボール連盟(FIVB)の「バレーボール女子世界選手権」など、国際的なスポーツ大会が相次いで開催された。アメージング・タイランド・マラソンは毎年約3万人が参加し、モトGPは1大会当たりの観客が平均20万6,000人とされている。

国内外から数万人が訪れるこうした大会では、観客や参加者が利用する宿泊施設や飲食店、交通機関などでの支出が地域経済に貢献する。また、直接的な観光消費に加え、大会運営に伴う雇用創出効果も期待される。
タイでは足元で、外国人観光客数が10カ月連続で前年同月割れするなど、観光業の回復が見通せない状況が続いている。タイ政府は、国際的なスポーツ大会開催地としての地位を確立し、観光需要や地域経済の拡大につなげたい考えだ。
■味の素が栄養支援
SEAゲームズのスポンサーには、味の素やダイキン、スシローといった日系企業も名を連ねる。
公式ゴールドスポンサーである味の素はタイスポーツ庁(SAT)と連携し、タイ代表選手を栄養面から支援している。SAT内の宿舎に設置したタイ代表選手向けの栄養センター「味の素ビクトリー・キャンティーン」は230席の食堂と活動スペースを備え、総面積は912平方メートル。スポーツ栄養学に基づく「勝ち飯」プログラムの栄養食172種を、大会準備期間中1日300人の選手に提供する。
味の素がタイ代表選手向けに提供する「勝ち飯」プログラムの栄養食(タイ味の素提供)
さらに、アミノ酸サプリ「アミノバイタル」と関連製品は、代表選手向けの休憩・サポートエリア「タイハウス」と競技地を含めて約10万食を配布予定だ。
タイ味の素のピルンラット・コーポレートコミュニケーション部門長はNNAに対し、今回のスポンサーシップを通じて「科学的根拠に基づく栄養への理解を社会全体に広げる効果を期待している」と説明した。今大会後終了後も、ASEAN各国のグループ会社でアスリート支援事業を続けていく方針を示した。
味の素は17年よりアスリートの栄養支援を開始している。スポンサーとしてのSEAゲームズの支援では、19年のフィリピン、21~22年のベトナム、23年のカンボジア大会に続く4回目となった。
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6月発表時点での登録選手は東南アジア諸国連合(ASEAN)の11カ国(東ティモール含む)から1万2,506人。タイからは最多の1,807人が出場を予定する。国境地帯でタイとの緊張状態が続くカンボジアは当初1,515人の選手を登録していたが、11月27日に「選手の安全保障」などを理由として21競技中8競技での出場辞退を発表した。
実施競技はオリンピックを上回る50で、ムエタイ(タイ式キックボクシング)やインドネシアの伝統武術「プンチャックシラット」、チェスやeスポーツも含まれる。種目数は574に上る。タイは半数近い241種目での金メダル獲得を目標に掲げている。
タイのアタコーン観光・スポーツ相は10月、SEAゲームズの開催を通じて「地域のスポーツ拠点としてのタイの能力を示す」と表明。タイ国政府観光庁(TAT)と連携し、開催地の安全性や利便性の向上、誘客に注力しているとした。
タイ政府はSEAゲームズ・パラゲームズの開催を通じ、周辺地域の観光活性化などを軸に52億8,500万バーツの経済効果を見込んでいる。大会開催自体の投資額は4億5,600万バーツ。さらに、両大会の開会式と閉会式、聖火リレーに1億6,600万バーツ、選手や運営スタッフらに関わる費用として2億6,000万バーツ、国際放送センターの設置と広報には3,000万バーツの予算を割り当てた。
■スポーツツーリズムを推進
観光・スポーツ省とTATは、25年の観光戦略としてスポーツツーリズムの推進を掲げている。今年2月には、「アメージング・タイランド・グランド・ツーリズム&スポーツ・イヤー2025」と称した施策を発表。大規模なスポーツイベントの開催を、外国人観光客の誘致につなげる方針を示した。
これに沿って、25年はSEAゲームズのほか、「アメージング・タイランド・マラソン」や世界最高峰の二輪車レース「ロードレース世界選手権(モトGP)」、国際バレーボール連盟(FIVB)の「バレーボール女子世界選手権」など、国際的なスポーツ大会が相次いで開催された。アメージング・タイランド・マラソンは毎年約3万人が参加し、モトGPは1大会当たりの観客が平均20万6,000人とされている。

国内外から数万人が訪れるこうした大会では、観客や参加者が利用する宿泊施設や飲食店、交通機関などでの支出が地域経済に貢献する。また、直接的な観光消費に加え、大会運営に伴う雇用創出効果も期待される。
タイでは足元で、外国人観光客数が10カ月連続で前年同月割れするなど、観光業の回復が見通せない状況が続いている。タイ政府は、国際的なスポーツ大会開催地としての地位を確立し、観光需要や地域経済の拡大につなげたい考えだ。
■味の素が栄養支援
SEAゲームズのスポンサーには、味の素やダイキン、スシローといった日系企業も名を連ねる。
公式ゴールドスポンサーである味の素はタイスポーツ庁(SAT)と連携し、タイ代表選手を栄養面から支援している。SAT内の宿舎に設置したタイ代表選手向けの栄養センター「味の素ビクトリー・キャンティーン」は230席の食堂と活動スペースを備え、総面積は912平方メートル。スポーツ栄養学に基づく「勝ち飯」プログラムの栄養食172種を、大会準備期間中1日300人の選手に提供する。
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味の素がタイ代表選手向けに提供する「勝ち飯」プログラムの栄養食(タイ味の素提供)[/caption]
さらに、アミノ酸サプリ「アミノバイタル」と関連製品は、代表選手向けの休憩・サポートエリア「タイハウス」と競技地を含めて約10万食を配布予定だ。
タイ味の素のピルンラット・コーポレートコミュニケーション部門長はNNAに対し、今回のスポンサーシップを通じて「科学的根拠に基づく栄養への理解を社会全体に広げる効果を期待している」と説明した。今大会後終了後も、ASEAN各国のグループ会社でアスリート支援事業を続けていく方針を示した。
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