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有望展開先、比は8位に上昇JBIC調査、運輸ニーズも期待

国際協力銀行(JBIC)が今月発表した2025年度版の「わが国企業の海外事業展開に関する調査報告」によると、日系製造業における国・地域別の「中期的な有望事業展開先」で、フィリピンは前年度から1ランク上昇の8位だった。非製造業では横ばいの5位で、特に経済特区からの運輸ニーズに期待が高まっている。
製造業では、生産拠点を含めて海外現地法人を3社以上有する日系企業541社から回答を得た。フィリピンでは65社が生産の現地法人を1社以上保有していると答えた。
今後3年程度の「中期的な有望国・地域」では、インドが4年連続で1位となった。2位は米国、3位はベトナムで前年と入れ替わった。4位以下はインドネシア、中国、タイなどが続く。
前年度比1社減の24社がフィリピンと回答し、うち自動車が1社増の6社、一般機械が2社増の5社、電機・電子が3社減の4社などだった。
有望な理由では、「安価な労働力」と「現地マーケットの成長性」との回答がともに5割前後と多かった。現地マーケットについては、「人件費は確かに上昇しているが経済成長が続いているため拠点は維持する」「昨年度より好調で競合も少ない」(いずれも自動車)といった声があった。

フィリピンを有望と答えた企業の中で、同国への新規・追加投資を計画または検討している割合を示す「有計画率」は、前年度から10.9ポイント低下の29.1%だった。JBICは、昨年増加した新規投資の一巡などを背景に大きく下がったとみている。
事業課題では最多の40.9%が「労働コストの上昇」と答えたほか、「管理職人材の確保が困難」との回答も31.8%に上った。
「中期的に海外での事業展開を強化・拡大する」と答えた295社のうち、前年度比2.3ポイント上昇の13.2%がフィリピンを挙げた。
JBICマニラ駐在員事務所で首席駐在員を務める佐川弘氏は、「フィリピンは他の東南アジアの国々ほど中国企業との厳しい競争にさらされていない」とメリットを指摘する一方、製造業の裾野が広がっていない状況は事業進出や拡大のネックだと述べた。
米トランプ政権の関税政策を巡っては、「40%の関税を課すという中国からの『迂回(うかい)輸出』がどう定義されるか、そして半導体輸入に100%の関税を課す方針がどう展開するか、という2つのファクターに注目している」と話した。
■非製造業は横ばいの5位
非製造業では、海外現地法人を3社以上有する日系企業192社から回答を得た。業種別では卸売り53社や建設27社、運輸24社、電力・ガス15社など。フィリピンでは34社が現地法人を有すると答えた。
中期的な有望事業展開先では、1位と2位は製造業と同様にインドと米国だった。3位はインドネシア、4位はベトナムと続く。
フィリピンは前年度から横ばいの5位で、7社増の21社が有望と答えた。有望な理由では「現地マーケットの成長性」や「安価な労働力」が上位に挙がった。
特に運輸業からの得票が多く、「島しょ国で英語圏であることに加え、税制面で優遇が受けられる」「国内の輸送網は不十分で事業にも伸びしろがあることから、今後の成長が期待できる」(いずれも運輸)との声が出た。「地場企業ではなく日系企業・外国企業が競争相手」(同)との意見もあった。
JBICの佐川氏は、運輸業界から新規進出の検討企業が出てきていると明かしたほか、鉄道や電力などインフラ業界でも進出を検討するケースが多くなっていると話した。

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■非製造業は横ばいの5位
非製造業では、海外現地法人を3社以上有する日系企業192社から回答を得た。業種別では卸売り53社や建設27社、運輸24社、電力・ガス15社など。フィリピンでは34社が現地法人を有すると答えた。
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特に運輸業からの得票が多く、「島しょ国で英語圏であることに加え、税制面で優遇が受けられる」「国内の輸送網は不十分で事業にも伸びしろがあることから、今後の成長が期待できる」(いずれも運輸)との声が出た。「地場企業ではなく日系企業・外国企業が競争相手」(同)との意見もあった。
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