NNAグローバルナビ アジア専門情報ブログ

【日本の税務】「国外財産調書制度」とは?

第290回

笹山さん:みらい先生、お久しぶりです。実は今年の10月をもって5年にわたるベトナム子会社への赴任が終了します。新型コロナウイルスの影響もあり、日本本社に戻れるか不安だったのですが、一定の要件を満たせば帰国が認められるようです。

みらい:随分と久しぶりですね、お元気でしたか?赴任されてからあっという間に5年もたったのですね。問題なく帰国できそうで何よりです。

笹山さん:はい、本当に良かったです。ところで今日は帰国に伴ってのご相談があって伺いました。赴任期間中にベトナムの証券会社を通じて株式を購入したのですが、この株式の配当金を受け取った場合の申告方法を教えていただけますか?

みらい:日本の証券会社の特定口座を利用している場合には申告の必要はないですが、海外の証券会社の口座を利用している場合、給与所得以外の所得の合計が20万円を超える場合には翌年の3月15日までに確定申告が必要です。海外で源泉徴収されているため日本での申告は不要、と誤解しやすいので注意してくださいね。ちなみに保有している株式の時価はどの位ですか?

笹山さん:日本円に換算すると5,000万円位になると思います。

みらい:それであれば確定申告と合わせて「国外財産調書」の提出が必要になるかもしれませんね。「国外財産調書」とは、その年の12月31日に合計5,000万円超の国外財産を保有している場合、令和4年分までは翌年の3月15日まで、令和5年分以後は翌年の6月30日までに所轄の税務署に提出が義務付けられている書類のことです。なお、提出が必要となる方は日本の居住者の方に限定されています。笹山さんは今までは非居住者でしたが帰国後は居住者となりますので、国外財産の価額次第により提出が必要になるかもしれませんね。

笹山さん:分かりました。ところで「国外財産調書」には何を記載すればよろしいのでしょうか?

みらい:国外財産の種類、数量、価額、所在等を記載する必要があります。価額は12月31日時点における時価または時価に準ずる見積価額と定められています。また、価額が外貨で表示されている財産は外国為替の売買相場によって円換算した後の金額をもって5,000万円を超えているかを判定することになります。また、この調書を提出する際には国外財産の区分ごとの合計額を記載した「国外財産調書合計表」の作成・添付が必要です。

笹山さん:なるほど、年末時点の時価を基に提出の有無を判断すれば良いのですね。よくわかりました。

みらい:それは良かったです。なお、国外財産に関する所得税や相続税の申告漏れが万が一生じた場合、調書を提出していれば過少申告加算税または無申告加算税が5%軽減されますが、未提出の場合には反対に5%加算されます。有価証券の銘柄を記載していない等の記載の不備を理由に加算された事例もあるのでご注意くださいね。さらに、正当な理由がなく提出しない場合には、1年以下の懲役または50万円以下の罰金に処せられる可能性もあります。

笹山さん:かなり厳しい罰則ですね。くれぐれも提出漏れがないように気を付けたいと思います。

本日はどうもありがとうございました。

object(WP_Post)#9816 (24) {
  ["ID"]=>
  int(6867)
  ["post_author"]=>
  string(1) "7"
  ["post_date"]=>
  string(19) "2022-10-07 14:45:23"
  ["post_date_gmt"]=>
  string(19) "2022-10-07 05:45:23"
  ["post_content"]=>
  string(4072) "第290回

笹山さん:みらい先生、お久しぶりです。実は今年の10月をもって5年にわたるベトナム子会社への赴任が終了します。新型コロナウイルスの影響もあり、日本本社に戻れるか不安だったのですが、一定の要件を満たせば帰国が認められるようです。

みらい:随分と久しぶりですね、お元気でしたか?赴任されてからあっという間に5年もたったのですね。問題なく帰国できそうで何よりです。

笹山さん:はい、本当に良かったです。ところで今日は帰国に伴ってのご相談があって伺いました。赴任期間中にベトナムの証券会社を通じて株式を購入したのですが、この株式の配当金を受け取った場合の申告方法を教えていただけますか?

みらい:日本の証券会社の特定口座を利用している場合には申告の必要はないですが、海外の証券会社の口座を利用している場合、給与所得以外の所得の合計が20万円を超える場合には翌年の3月15日までに確定申告が必要です。海外で源泉徴収されているため日本での申告は不要、と誤解しやすいので注意してくださいね。ちなみに保有している株式の時価はどの位ですか?

笹山さん:日本円に換算すると5,000万円位になると思います。

みらい:それであれば確定申告と合わせて「国外財産調書」の提出が必要になるかもしれませんね。「国外財産調書」とは、その年の12月31日に合計5,000万円超の国外財産を保有している場合、令和4年分までは翌年の3月15日まで、令和5年分以後は翌年の6月30日までに所轄の税務署に提出が義務付けられている書類のことです。なお、提出が必要となる方は日本の居住者の方に限定されています。笹山さんは今までは非居住者でしたが帰国後は居住者となりますので、国外財産の価額次第により提出が必要になるかもしれませんね。

笹山さん:分かりました。ところで「国外財産調書」には何を記載すればよろしいのでしょうか?

みらい:国外財産の種類、数量、価額、所在等を記載する必要があります。価額は12月31日時点における時価または時価に準ずる見積価額と定められています。また、価額が外貨で表示されている財産は外国為替の売買相場によって円換算した後の金額をもって5,000万円を超えているかを判定することになります。また、この調書を提出する際には国外財産の区分ごとの合計額を記載した「国外財産調書合計表」の作成・添付が必要です。

笹山さん:なるほど、年末時点の時価を基に提出の有無を判断すれば良いのですね。よくわかりました。

みらい:それは良かったです。なお、国外財産に関する所得税や相続税の申告漏れが万が一生じた場合、調書を提出していれば過少申告加算税または無申告加算税が5%軽減されますが、未提出の場合には反対に5%加算されます。有価証券の銘柄を記載していない等の記載の不備を理由に加算された事例もあるのでご注意くださいね。さらに、正当な理由がなく提出しない場合には、1年以下の懲役または50万円以下の罰金に処せられる可能性もあります。

笹山さん:かなり厳しい罰則ですね。くれぐれも提出漏れがないように気を付けたいと思います。

本日はどうもありがとうございました。"
  ["post_title"]=>
  string(60) "【日本の税務】「国外財産調書制度」とは?"
  ["post_excerpt"]=>
  string(0) ""
  ["post_status"]=>
  string(7) "publish"
  ["comment_status"]=>
  string(4) "open"
  ["ping_status"]=>
  string(4) "open"
  ["post_password"]=>
  string(0) ""
  ["post_name"]=>
  string(182) "%e3%80%90%e6%97%a5%e6%9c%ac%e3%81%ae%e7%a8%8e%e5%8b%99%e3%80%91%e3%80%8c%e5%9b%bd%e5%a4%96%e8%b2%a1%e7%94%a3%e8%aa%bf%e6%9b%b8%e5%88%b6%e5%ba%a6%e3%80%8d%e3%81%a8%e3%81%af%ef%bc%9f-2"
  ["to_ping"]=>
  string(0) ""
  ["pinged"]=>
  string(0) ""
  ["post_modified"]=>
  string(19) "2022-10-07 14:45:23"
  ["post_modified_gmt"]=>
  string(19) "2022-10-07 05:45:23"
  ["post_content_filtered"]=>
  string(0) ""
  ["post_parent"]=>
  int(0)
  ["guid"]=>
  string(33) "https://nnaglobalnavi.com/?p=6867"
  ["menu_order"]=>
  int(0)
  ["post_type"]=>
  string(4) "post"
  ["post_mime_type"]=>
  string(0) ""
  ["comment_count"]=>
  string(1) "0"
  ["filter"]=>
  string(3) "raw"
}
 みらいコンサルティンググループ
ミライ コンサルティング グループ みらいコンサルティンググループ
グローバルビジネスをもっと身近に

みらいコンサルティング(旧中央青山PwCコンサルティング)は、グループに監査法人、税理士法人、社会保険労務士法人、各種事業会社を持つ総勢約300名の総合コンサルティングファーム。国内には東京本社のほか10都市に支社を展開。海外には中国(北京・上海・深セン)、シンガポール、タイ(バンコク)、ベトナム(ホーチミン・ハノイ)、マレーシア(クアラルンプール)に子会社を設立、現地にて日系企業の海外展開におけるビジネスコンサルティングを提供している。

[本社]
〒104-0031
東京都中央区京橋2-2-1 京橋エドグラン19階
TEL:03-6281-9810(代)
HP: https://www.miraic.jp/

国・地域別
日本情報
内容別
ビジネス全般会計税務進出設立

コメントを書く

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

※がついている欄は必須項目です。

コメント※:

お名前:

CAPTCHA


このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください