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「ESGへの支援策拡充を」対応遅れ懸念、投資ファンド会長

ベトナムで50億米ドル(約7,780億円)規模のファンドを運用する英国系投資資金管理会社ドラゴン・キャピタルのドミニク・スクリブン会長はこのほど、NNAのインタビューで国内外からの投資誘致には地場企業に環境・社会・企業統治(ESG)対応を促す政策の導入が必要だと訴えた。同氏はベトナム企業のESGへの取り組みは「周辺各国と比べて遅れている」と指摘し、ESG対応を取らなければ持続可能な発展が困難になるリスクがあると懸念を表明した。

ベトナムESG投資カンファレンスでパネルディスカッションに登壇したドラゴン・キャピタルのドミニク・スクリブン会長(中央)=17日、ホーチミン市

スクリブン氏は南部ホーチミン市で5月16~17日に開催された「ベトナムESG投資カンファレンス2024」に合わせてNNAのインタビューに応じた。
同氏はベトナム企業のESG対応はタイやシンガポールなどと比べて遅れていると懸念を表明。異常気象で南部メコンデルタ地域の稲作に大規模な損害が生じ、観光業などに転向する稲作農家が増えていることなどを引き合いに「環境や社会への配慮がなければ事業を継続することができないリスクが浮き彫りになっている」と警鐘を鳴らした。
政府の取り組みについては2022年制定の政令6号(06/2022/ND—CP)が企業に罰則付きでESG対応を求めていることなどを挙げ、一定の理解を示した。政令6号は改正環境保護法の施行規則で、温室効果ガスの排出抑制に向けて排出権取引市場の創設などを定めている。
一方で、「(ESG対応の後押しには)魅力的なインセンティブも同時に必要」と指摘。ESG関連事業への投資を促す仕組み作りや、ESG対応が製品価値の向上や顧客・従業員からの評価につながることへの理解を広げるなど、より踏み込んだ政策を取ることを提唱した。
欧米日などからなる支援国がベトナムのエネルギー移行を支援する制度「公平なエネルギー移行パートナーシップ(JETP)」については、支援国が今後3~5年間で総額155億米ドルを拠出するとしているものの、無利子での融資枠は少ないとして、活用が限定的になる可能性があると懸念を示した。
ドミニク氏は英国出身。ドラゴン・キャピタルの共同創業者で1994年から同社を率い、ベトナム語が堪能。在ベトナムの外資金融を代表する経営者として知られる。
■「GXの資金調達は困難」
ESG投資カンファレンスには、ベトナムや欧州、米国、豪州などの各国企業・組織や政府の代表者ら600人以上が参加した。
冒頭あいさつに立った欧州連合(EU)のジュリアン・ゲリア駐ベトナム大使は「ベトナムが海外からの投資をさらに誘致するには、高い倫理基準に基づいて社会的責任を果たす必要がある」と強調。パネルディスカッションに登壇したベルギー系ディープシー工業団地のブルーノ・ジャスパート最高経営責任者(CEO)も「ESGへの対応はベトナムにチャイナプラスワンにとどまらない価値を生み出すことになる」と期待を示した。
ベトナム債券市場協会(VBMA)のドー・ゴック・クイン事務局長は、ESG対応のためのファイナンスについて講演し、「グリーントランスフォーメーション(GX)事業の資金調達は非常に難しい」と現状を説明した。
クイン氏は政府が持続可能な経済活動を判別する仕組み(グリーン・タクソノミー)を整備していないことや、GXのための資金調達に対する税金や金利、行政手続きなどに関する支援策が不透明なことを挙げ、「金融機関は慈善団体ではないため、政府による優遇策がなければ投資は促進されないだろう」と訴えた。
■ブランドイメージの向上期待
会計大手プライスウォーターハウスクーパース(PwC)が22年5~8月に経営者など234人を対象に実施した調査によると、既にESGへの取り組みを進めているベトナム企業は全体の44%と半数以下で、証券市場に上場・登録している企業については35%にとどまった。全体の36%は「2~4年以内の対応を計画している」、20%は「2~4年以内の対応は考えていない」と回答した。
ESGへの取り組みの原動力には、82%が「ブランドイメージ」、68%が「市場競争力」を挙げた。続いて「従業員のつなぎ留め」「ステークホルダーからの期待」「規制への対応」となった。一方で課題には、67%が「透明性のある規制の欠如」を挙げており、政府による明確な指導や支援策が必要とされているもようだ。

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一方で、「(ESG対応の後押しには)魅力的なインセンティブも同時に必要」と指摘。ESG関連事業への投資を促す仕組み作りや、ESG対応が製品価値の向上や顧客・従業員からの評価につながることへの理解を広げるなど、より踏み込んだ政策を取ることを提唱した。
欧米日などからなる支援国がベトナムのエネルギー移行を支援する制度「公平なエネルギー移行パートナーシップ(JETP)」については、支援国が今後3~5年間で総額155億米ドルを拠出するとしているものの、無利子での融資枠は少ないとして、活用が限定的になる可能性があると懸念を示した。
ドミニク氏は英国出身。ドラゴン・キャピタルの共同創業者で1994年から同社を率い、ベトナム語が堪能。在ベトナムの外資金融を代表する経営者として知られる。
■「GXの資金調達は困難」
ESG投資カンファレンスには、ベトナムや欧州、米国、豪州などの各国企業・組織や政府の代表者ら600人以上が参加した。
冒頭あいさつに立った欧州連合(EU)のジュリアン・ゲリア駐ベトナム大使は「ベトナムが海外からの投資をさらに誘致するには、高い倫理基準に基づいて社会的責任を果たす必要がある」と強調。パネルディスカッションに登壇したベルギー系ディープシー工業団地のブルーノ・ジャスパート最高経営責任者(CEO)も「ESGへの対応はベトナムにチャイナプラスワンにとどまらない価値を生み出すことになる」と期待を示した。
ベトナム債券市場協会(VBMA)のドー・ゴック・クイン事務局長は、ESG対応のためのファイナンスについて講演し、「グリーントランスフォーメーション(GX)事業の資金調達は非常に難しい」と現状を説明した。
クイン氏は政府が持続可能な経済活動を判別する仕組み(グリーン・タクソノミー)を整備していないことや、GXのための資金調達に対する税金や金利、行政手続きなどに関する支援策が不透明なことを挙げ、「金融機関は慈善団体ではないため、政府による優遇策がなければ投資は促進されないだろう」と訴えた。
■ブランドイメージの向上期待
会計大手プライスウォーターハウスクーパース(PwC)が22年5~8月に経営者など234人を対象に実施した調査によると、既にESGへの取り組みを進めているベトナム企業は全体の44%と半数以下で、証券市場に上場・登録している企業については35%にとどまった。全体の36%は「2~4年以内の対応を計画している」、20%は「2~4年以内の対応は考えていない」と回答した。
ESGへの取り組みの原動力には、82%が「ブランドイメージ」、68%が「市場競争力」を挙げた。続いて「従業員のつなぎ留め」「ステークホルダーからの期待」「規制への対応」となった。一方で課題には、67%が「透明性のある規制の欠如」を挙げており、政府による明確な指導や支援策が必要とされているもようだ。
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