中国経済は今、これまでほとんど経験のなかった景気停滞局面に入っています。
売上が伸び悩む環境は、どうしても外部要因の影響が大きく、コントロールは困難です。
しかし歴史を振り返ると、アメリカも日本も同じような局面を何度も経験し、そのたびに地道な内部改革を進めることで、不況を乗り越えてきました。
今回は「売上が伸びないとき、企業は内部で何を変えてきたのか」を、歴史的事例から見ていきましょう。
① 1980年代アメリカ
1980年代のアメリカは、財政赤字と貿易赤字という「双子の赤字」に苦しみ、企業業績も悪化していました。
そのような状況下で始まったのが、産学連携による成功企業の徹底研究です。
当時、世界市場で圧倒的優位に立っていたのは日本企業でした。
当初は「価格競争力の差は労働コストの違いによるもので仕方がない」という諦めムードがありましたが、その後、品質や生産効率といった価格以外の競争要因に注目が集まるようになります。
とりわけ自動車産業を中心に研究が進められ、その成果はやがてリーン生産方式の理論化につながりました。この方式は、製造工程のみならず企画・設計段階までを含め、全体のリードタイム短縮を重視するものです。
こうしてGMやボーイングといった大手企業が地道に導入を進め、不況下でもQCD(品質・コスト・納期)の底上げを図る取り組みが、後の産業復活の土台となりました。
② バブル崩壊後の日本
1990年代初頭、日本は不動産・金融バブルの崩壊によって内需が急速に冷え込み、企業は海外進出を加速させました。
一方で、国内の製造現場では「生産数が増えない中で利益を確保する」ための制度改革が進みます。
たとえばトヨタ自動車は、工場総費用をリアルタイムで把握するシステムを導入し、固定費も変動費として管理できるようにしました。
さらに、短期的な能率競争から脱却し、年間目標と改善計画の進捗を管理する仕組みへと移行しています。
また、TOTOではベルトコンベア方式からセル生産方式への転換により、大幅な生産性向上を実現しました。
このように、両社に共通していたのは、「作れば儲かる」という発想からの脱却と、減産下でも効率を落とさない仕組みづくりでした。
③ 今後の中国に必要なこと
今の中国は、人員投入と残業増で売上を押し上げるモデルが限界に近づいています。
求められるのは、魔法のような施策ではなく、損益分岐点を下げる地道な改善です。
具体的には:
• 現状の測定と数値化
• 生産量ではなく時間軸での基準設定
• 全体リードタイムの短縮
• 需要変動に合わせた投入リソース調整
好況時に機能していた出来高給やストックオプションも、今後は再考が必要です。
「どんな行動を評価するか」を見直し、不況だからこそ取り組める改善テーマに切り込むチャンスでもあります。
まとめ
景気停滞は避けられないサイクルですが、その中で何を積み上げられるかが企業の競争力を決めます。
外部環境に左右されず、内部の制度・仕組みを強化することこそ、次の成長への布石です。
中国の製造業でも、今こそ「地道な改善」の価値が試される時期かもしれません。
※本記事は、要約版となります。詳しくは、こちらをご覧くださいませ。
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1980年代のアメリカは、財政赤字と貿易赤字という「双子の赤字」に苦しみ、企業業績も悪化していました。
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② バブル崩壊後の日本
1990年代初頭、日本は不動産・金融バブルの崩壊によって内需が急速に冷え込み、企業は海外進出を加速させました。
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このように、両社に共通していたのは、「作れば儲かる」という発想からの脱却と、減産下でも効率を落とさない仕組みづくりでした。
③ 今後の中国に必要なこと
今の中国は、人員投入と残業増で売上を押し上げるモデルが限界に近づいています。
求められるのは、魔法のような施策ではなく、損益分岐点を下げる地道な改善です。
具体的には:
• 現状の測定と数値化
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まとめ
景気停滞は避けられないサイクルですが、その中で何を積み上げられるかが企業の競争力を決めます。
外部環境に左右されず、内部の制度・仕組みを強化することこそ、次の成長への布石です。
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