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テスラ、9年越しの関税交渉とインドの新EV政策

テスラ、9年越しの関税交渉とインドの新EV政策

電気自動車(EV)大手のテスラが、長きにわたるインド政府との「関税戦争」を終結させ、ついにインド市場への本格参入を果たすこととなりました。これは単なる一企業の進出に留まらず、インドのEV化時代を告げる歴史的な転換点となる可能性を秘めています。本記事では、今回の事例の経緯や今後の展望について解説します。

※本記事はGlobal JapanのYoutubeチャンネル「インド進出支援ちゃんねる」より内容を一部抜粋してご紹介します。詳細は是非、動画本編をご覧ください。

▶ 動画本編はこちら

【2025年7月の最新ニュース】インド政府が折れた!テスラが勝ち取った関税爆下げの裏側とは

インドにおける高関税の背景

これまでインドは、EV完成車に対して最大で110%という非常に高い輸入関税を課していました。この高関税の背後には、モディ政権が2014年から10年以上にわたり掲げてきた国家戦略「Make in India(メイク・イン・インディア)」政策があります。

「Make in India(メイク・イン・インディア)」政策とは?
「インドで製造し、インドで雇用を生み出す」ことを目指し、国内製造業の振興を強力に推進するもの。サービス業を中心に発展してきたインドは、全産業の付加価値に占める製造業の比率が20%未満と低く、慢性的な失業率の高さも指摘されてきました。そのため、インド政府は外国企業に対し、完成車の輸入に高関税を課すことで、「インド国内で生産しない限りは高値で販売せざるを得ない」という強いメッセージを送ってきたのです。

テスラの長きにわたる戦い

テスラは長年インド進出を望んでいましたが、インド政府が「インドで製造しない限りは高関税」という姿勢を崩さなかったため、9年にもわたる交渉は難航しました。

テスラの最高経営責任者であるイーロン・マスク氏は、2016年からインド市場への並々ならぬ執念を燃やし、2017年には自身のX(旧Twitter)で、関税が大きな障壁であること、そして現地生産開始までの一時的な関税減免をインド政府に要請している旨を投稿しています。

しかし、インド政府はテスラの要請に断固として応じず、関税引き下げ要求を繰り返し拒否し続けました。膠着状態が続く中でもテスラはコミットメントを示し続け、2021年1月にはカルナータカ州バンガロールにインド現地法人を設立。それでもインド政府の態度が変わることはありませんでした。

歴史的転換点と新EV政策

2023年に入ってから、テスラは「インドでの現地生産」を視野に入れた交渉にシフトチェンジします。そして、2023年6月20日にニューヨークで行われたモディ首相とイーロン・マスク氏の直接会談が、この長きにわたる戦いにおける大きな転換点となりました。

この会談の成果として、2024年3月15日、インド政府は待望の新しいEV政策を発表しました。この新政策の画期的な点は、これまで最大実効税率110%だった完成EV車の輸入関税が、特定の条件を満たせばわずか15%にまで劇的に削減されるというものです。

主な条件は以下2つです:

  • インド国内で最低5億ドル(約780億円)を投資し、3年以内にEVの現地生産を開始すること。
  • 現地で生産するEVの部品の少なくとも25%をインド国内から調達し、5年以内にはこの現地調達率を50%まで引き上げること。

インド政府がこの時点で大幅な譲歩に踏み切ったのは、EV産業が世界の潮流であり、インド経済の新たな成長エンジンになり得ると判断したためと見られています。

今回の一連の出来事は、単なる一自動車メーカーの市場参入に留まらず、充電インフラの拡充やバッテリー生産能力の強化など、EV普及に必要なインフラ領域へのさらなる投資を呼び込む可能性を秘めています。

今後のインドにおけるEV市場の可能性や、テスラが克服すべき課題については、動画本編で詳しく解説しています。是非ご覧ください。

▶ 動画本編はこちら

【2025年7月の最新ニュース】インド政府が折れた!テスラが勝ち取った関税爆下げの裏側とは

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※本記事はGlobal JapanのYoutubeチャンネル「インド進出支援ちゃんねる」より内容を一部抜粋してご紹介します。詳細は是非、動画本編をご覧ください。

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インドにおける高関税の背景

これまでインドは、EV完成車に対して最大で110%という非常に高い輸入関税を課していました。この高関税の背後には、モディ政権が2014年から10年以上にわたり掲げてきた国家戦略「Make in India(メイク・イン・インディア)」政策があります。 「Make in India(メイク・イン・インディア)」政策とは? 「インドで製造し、インドで雇用を生み出す」ことを目指し、国内製造業の振興を強力に推進するもの。サービス業を中心に発展してきたインドは、全産業の付加価値に占める製造業の比率が20%未満と低く、慢性的な失業率の高さも指摘されてきました。そのため、インド政府は外国企業に対し、完成車の輸入に高関税を課すことで、「インド国内で生産しない限りは高値で販売せざるを得ない」という強いメッセージを送ってきたのです。

テスラの長きにわたる戦い

テスラは長年インド進出を望んでいましたが、インド政府が「インドで製造しない限りは高関税」という姿勢を崩さなかったため、9年にもわたる交渉は難航しました。 テスラの最高経営責任者であるイーロン・マスク氏は、2016年からインド市場への並々ならぬ執念を燃やし、2017年には自身のX(旧Twitter)で、関税が大きな障壁であること、そして現地生産開始までの一時的な関税減免をインド政府に要請している旨を投稿しています。 しかし、インド政府はテスラの要請に断固として応じず、関税引き下げ要求を繰り返し拒否し続けました。膠着状態が続く中でもテスラはコミットメントを示し続け、2021年1月にはカルナータカ州バンガロールにインド現地法人を設立。それでもインド政府の態度が変わることはありませんでした。

歴史的転換点と新EV政策

2023年に入ってから、テスラは「インドでの現地生産」を視野に入れた交渉にシフトチェンジします。そして、2023年6月20日にニューヨークで行われたモディ首相とイーロン・マスク氏の直接会談が、この長きにわたる戦いにおける大きな転換点となりました。 この会談の成果として、2024年3月15日、インド政府は待望の新しいEV政策を発表しました。この新政策の画期的な点は、これまで最大実効税率110%だった完成EV車の輸入関税が、特定の条件を満たせばわずか15%にまで劇的に削減されるというものです。 主な条件は以下2つです:
  • インド国内で最低5億ドル(約780億円)を投資し、3年以内にEVの現地生産を開始すること。
  • 現地で生産するEVの部品の少なくとも25%をインド国内から調達し、5年以内にはこの現地調達率を50%まで引き上げること。
インド政府がこの時点で大幅な譲歩に踏み切ったのは、EV産業が世界の潮流であり、インド経済の新たな成長エンジンになり得ると判断したためと見られています。 今回の一連の出来事は、単なる一自動車メーカーの市場参入に留まらず、充電インフラの拡充やバッテリー生産能力の強化など、EV普及に必要なインフラ領域へのさらなる投資を呼び込む可能性を秘めています。 今後のインドにおけるEV市場の可能性や、テスラが克服すべき課題については、動画本編で詳しく解説しています。是非ご覧ください。 ▶ 動画本編はこちら

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 Global Japan AAP Consulting Private Limited
グローバルジャパンエーエーピーコンサルティングプライベートリミテッド Global Japan AAP Consulting Private Limited
インド進出とインド市場展開・運用を一気通貫でサポート

弊社はインド市場に特化したコンサルティング会社として、インド進出の初期検討から本格展開・運用までを一気通貫で支援しています。会計事務所を母体に持つ強みを活かし、会社設立、経理・人事労務・法務など、現地におけるバックオフィス業務やコンプライアンス対応について幅広くサポートしています。

また、現地法人を設立せずにインドで事業を試したい企業様に向けては、「インド・トライアル進出支援サービス」を提供しています。税務・労務管理などを代行させていただくことで、最小限のコスト・リスクで、インド人材を活用した開発・市場調査等をリモートで開始できます。
現地での実行支援は、弊社の関連会社であるINDIGITAL(現地法人:INDIGILAB Private Limited)が担い、EOR(Employer of Record)モデルを活用してインド人材の雇用や管理を代行しております。

チェンナイ事務所(本社) :No.77, Chamiers Road, R.A.Puram, Chennai, Tamil Nadu, 600028
バンガロール事務所 :#267, Grey Stone, Ground Floor, 6th Cross Road, 1st Stage, Indira Nagar, Bengaluru, Karnataka, 560 038
ハイデラバード事務所 :605/A, 5th Floor, Vasavi MPM Grand, Ameerpet, Yella Reddy Guda, Hyderabad, Telangana, 500073
スリシティ事務所 :Flat No 102, 1st floor, The Abode, Park Avenue Layout, Tada Mandal, Tada, Tirupathi District, Andhra Pradesh – 524401
デリー事務所 :COWRKS, Worldmark 1, Tower A , Aerocity Delhi 110037

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株式会社INDIGITAL(現地法人 INDIGILAB Private Limited)
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